十三幕

 今日は映画を観に行く為、少し離れた大きな町に出た。


「何を観るかなー!」


 映画館のホールで今何をやってるか調べていると意外な人物を外で見かける。


「あいつ、何やってるんだ?」


 そこには最近全くみない夏希を見つけた。

 暫く様子を見ていると、あっちもこちらに気付いた様だ。


「あっ!」


 その言葉と共に全力でこちらに走ってきたのだ。


「おっっっひさしぶりです!」


 やはりテンションが高い。


「久しぶりだな、最近連絡無かったけど何かあったのか?」


 わかってて聞く暁良は中々酷い奴である。


「そうですよ!連絡しようとしても繋がらないですし!もしかしてイジメですか!?」

「あぁ、やっと気づいたか?」

「ひどっ!」

「ところでどうしてこんな所にいるんだ?」


 巫女の仕事を昨日はしていなかったから、てっきり今日は仕事をしている物だと思っていた。


「明日から私も任務なので息抜きですよ!」


 妙な言い回しをしてきた。


「何か意味深な言い方をするけど何かあるのか?」

「ふっふっふっ!それは明日のお楽しみなのです!」

「あ、大丈夫そういうの間に合ってるから」

「えぇっ!」


 結局ふざける二人であった。


「ヘイ!お兄さん!暇なら私と遊ばない?」

「どういうテンションだよ?」

「うん、源さん大怪我して入院してたし、久しぶりに会えたので、普通にテンション上がってます!」


 偶にドキリとする事を言ってくるので、反応に困る暁良なのである。


「まぁ、それじゃ俺は映画みるからこれで失礼するよ」

「そうですね、それじゃまた!ってちょっと待って!ここは私も一緒にって流れですよね?」

「んで、どれ観たいんだ?」

「あっ、それじゃこのバブリのチョチョロリターンズが観たいです」

 急に素の反応になる夏希、選んだ作品は大人気アニメの続編に決めたようだ。


「あぁ、CMみるとかなり人気みたいだなそれ」

「私と同じ名前の女の子、夏希ちゃんが妖怪チョチョロと繰り広げる爽快バトルアクションです!かなり楽しみ!」


 夏希の意識はもうチョチョロを観る事しかない様だ。


「そうか、それじゃチケットと飲み物買ってくるけど何飲む?」

「カルピスでお願いします!」

「はいよ、そのままそこで待っててくれぃ」


 夏希は「はいぃ〜」と言いながらトイレの方に歩いて行く。


(待ってろ言うてるのに……まぁ、いいか)


 そう心で呟いた後、チケット売り場に向かって歩いて行った。


「お待たせしました!」


 結局、暁良のが先に買って待ってたのであった。


「まぁ、色々言いたいがそろそろ始まるから急ぐぞ」

「はい!」


 部屋に入ると既に証明は薄暗く落とされており、先に座るお客さん達の前を申し訳なく進んで行く二人、チケットに印字された番号と照らし合わして座った。


「始まりますよ!」

「あぁ、携帯の電源落とせよ?」

「はい!」


 そうこうしている内に完全に証明は落ち、映画がはじまる。


 約二時間半程の映画だった。


「面白かったぁ!」

「そりゃよかった」


 映画館のホールに出てからも夏希は興奮しているのか話が続く。


「源さんはどうでした?」

「面白いと思うが、あんな可愛い感じのマスコットキャラが、アクションをする姿に違和感しかないんだが……」

「そこがいいんですよ!」


 そう言った夏希はケタケタ笑いながら映画の見所部分を振り返り、話そうとするので、黙らせてから近くのケーキ屋に連れて行く。


「ここでなら映画の内容語っていいぞ」

「あぁ、あはは……すいません、確かにあの場でネタバレは不味いですよね……」

「まぁ、意図を察してくれたならいいさ」


 その後、ケーキとコーヒーを注文してゆっくりと映画の話しで盛り上がった。

 暫く談笑し、ついでに新しい連絡先も教えてから店を出ると、外は夕方になっていた。


「まだ何かあるなら付き合うぞ?」


 暁良が夏希に聞くと「大丈夫です!」と言うので、ここで解散する事にした。


「それじゃまた明日社務所でな」

「源さんも明日からも御指導お願いします!」


 そう言って二人は別々の方向に歩き、帰路に着く。


 家に着いてメールを見ると夏希からメールが届いたので開いてみると。


「(今日はありがとうございました!)」

 と入っていたので、「(おう)」と返しておいた。


 その後、お酒を飲みつつテレビを観てると橋姫からメールが届いたので開く。


「(チョチョロ観たいから連れて行って〜)」


 チョチョロリターンズである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る