十四幕
今日から仕事が再開される。
橋姫が目を光らせてるこの辺は、極端に妖怪が少なくなったから、仕事があるとしたら別の場所に行く事になるだろう。
「面倒だ……何で仕事なんてしないといけないんだ?」
一部の仕事を楽しんでやってる人たちはともかく、暁良は基本的に、働きたく無い側の人間だ。
そんな事を思っていても、仕事に行かない訳にはいかないので職場に向かった。
社務所に入ると、受付には夏希ではなく、先日対応してくれた子がいたのである。
(あれ、夏希は今日仕事に来るって言ってた筈だか……風邪でもひいたか?)
一瞬頭に、夏希の能天気な顔が浮かぶと「それはないか……」と頭の中でかぶりを振って否定した。
一応、受付の子に夏希はどうした?と、確認したら「あはは、口止めされてますので」とか言われたので、これ以上聞かない事にする。
(あいつ、昨日は気になる事を何度か言ってたし……嫌な予感しかしない)
そうして社長がいる部屋に到着し、ノックをすると「入れ」と返ってきたので、一言言ってから入室した。
部屋に入ると暁良以外に三人居て、列になって待機していた。
その三人とは未知瑠と、さっきまで気にしていた夏希が居て、更にその隣りには青臭そうなイケメンの青年がこちらを睨みつつ立っている。
(何だ?何かあるのか?)
疑問に思った暁良に幻魔は「全員揃ったようじゃのぉ」と、言っているので、取り敢えず、未知瑠の隣に並んで姿勢を整えた。
疑問だらけの暁良であったが、直ぐに答えが聞けるだろうと幻魔の言葉を待つ。
「さて、暁良以外の三人には伝えてあるはずじゃが、暁良と鏑木にはそこの二人を鍛えてもらう」
(はっ?どう言う事?)
幻魔の言葉に思考フリーズした暁良。
「ほれ、それぞれ自己紹介せい」
その言葉を聞くとイケメンが前に出てきた。
「私の名前は
そう言った大河は良い笑顔で、未知瑠と夏希に視線を向けた後、暁良に視線を移す時には親の仇を見るかの様な顔になっている。
(なんだこのイケメン、鼻にパンチしてやろうか?何で初対面の俺にヘイト向けてくる……)
自分に敵意を向けられる理由に全く心当たりがない暁良。
(それにしても……)
暁良は大河と言う人物像を考えてみた。
身長は暁良と同じ位で、百八十前後あり、髪型はソフトモヒカン、背筋も伸びていて顔もイケメン、とにかく異性にモテそうだと評価した。
(轟鬼 大河か……ん?轟鬼って、もしかして社長の親族か?後で聞いてみるか)
その後、大河以外の三人は顔見知りな為、無難な自己紹介をしていた。
「自己紹介終わったようじゃの?」
それぞれの自己紹介が終わり、元の位置に戻ると、幻魔は言った。
「暁良の為に説明をすると、現在対魔教会では、後進育成と殉職率を減らす為に、チームを組ませて行動させ、殉職率下げようと考えておる」
全体の対魔師の数に対して、妖怪を狩る範囲が広すぎると言う問題が解決したのか?との疑問を暁良は考えた。
「教会は対魔師としての基準を下げた為、対魔師人員を想定数確保に成功した」
基準を下げたら殉職率が更に上がるのでは?と暁良は聞くと「取り敢えず話しを最後まで聞くのじゃ」と幻魔に言われ、未知瑠と夏希にクスクスと笑われ、大河に鼻で笑われた。
(ムカつく……)
暁良は大河の態度にイライラするが、上司である幻魔の前では、それを表に出さなかった。
ゴホンッと咳払いをする幻魔。
「基準を下げた代わりに、ベテランと言われる者達とチームを組ませる事によって、殉職率を下げる狙いじゃ」
成る程と理解した暁良である。
「何年かすれば、今新人と呼ばれている者も育成する側になるじゃろう」
幻魔は新人達の目を見て言った。
「新人対魔師達は守られながら己を高め、ベテラン対魔師は、自分達が何を守っているのか自覚するのじゃぞ?」
次に全員の目を見てから言った。
特に最後の言葉は暁良に言っている様な気がした……。
「さて、それじゃペアを発表する」
その言葉に反応する全員。
「四人一組じゃないのですか?曾爺様」
大河の言葉を聞いた暁良は、やっぱり親族か……と理解した。
幻魔は大河の言葉に「ここでは宮司様と言えと言ったじゃろ」と返していた。
「ベテラン二人を同じエリアに入れる程の余裕はまだ無いのじゃ」
先日の様な異常がある状態ならともかく、平時ならば無いなと暁良も未知瑠も理解をした。
「さて、それでは鏑木と轟鬼チームで、暁良と早瀬でチームじゃ」
暁良は大河と組まなくて良かったと思うと共に、夏希と組むのか……との心配もした。
幻魔はチーム分けの発表をすると「話しは以上じゃ、それぞれで親睦を深めるのじゃぞ?特に轟鬼!」と言われ何故か大河が暁良を睨む。
(一体、俺が何をしたってんだよ……)
幻魔の部屋から出た四人は歩きながら雑談をする。
大河は未知瑠や夏希には良い笑顔を振りまいて会話しているが、そこに暁良が入ると「あぁ、そですか」と無関心に反応する。
そのやり取りをした暁良は、まぁ自分のペア相手じゃないから、もういいか!と諦めた。
少し四人で親睦を深めたらそれぞれのペアになって動く事になった。
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