二十一幕
青鬼はどれだけ戦力を整えたのか、低級妖怪の数が異常だった、暁良も最初こそ討伐数を数えていだが五十を越えた辺りから先は数えてない、何故なら目の前には数えるのが馬鹿らしくなるほどにいるのだから……。
現在は七人で青鬼の元に向かっている。
人数が減っているのは途中で二人を低級殲滅に向かわせたからだ。
(クソッ、最初から全て予定が狂ってる!どうする?既に青鬼とまともに戦う戦力を割っている!)
暁良は橋姫に青鬼と戦うにあたっての注意点を思いだす。
「まずは暁良や未知瑠と同程度の対魔師が最低八人で十人いれば余裕持って戦えるよ、でもね、数が減れば当然リスクも上がっていくから!」
「他には?」
「ベテラン以外が熊と戦ったらダメ、無駄に死ぬだけだから低級妖怪の相手させてね」
「でも一番良いのはベテランを十五人連れて行けば全ての問題に対応できると思うよ〜」
(やはり、ベテランを十五人集められなかたったのが痛い……橋姫程の実力者だ、青鬼に関しての戦力分析は正解の筈だろう)
暁良が頭の中で色々考えていると、花菱の叱咤の声が響く。
「もう少しで青鬼の所に着くぞ!全員気合い入れろや!!」
その声が響く中、暁良はせめて後続が問題を解決して追いつく事を期待するしかなかった。
場面は変わり、先程まで新人達は体験した事ない程の妖気に当てられて酔っていたが、段々と回復し、戦線に復帰していた。
そんな中、戦場には弓で低級妖怪を倒していく夏希の姿が目立っていた。
「えいっ!」と気の抜ける声が響く度に低級が一体、また一体と形を崩していく。
「貴方中々やるね〜、此処ももう貴方がいれば問題無さそうだから、私は味方の援護に行くねぇ〜」
そう言った碓井は、新人達の返事を聞かずに青鬼討伐に戻る。
「皆さん!私が数を減らしますので近づいてきた敵を最優先に狙って下さい!」
夏希の言葉に残りの新人達九人は、武器を持つ手に力を込めて「「「了解!」」」と答え、近づいてくる敵を倒していく。
大河は焦っていた、轟鬼家の人間として結果を残さないと、と思っていたが先程は無様に這いつくばり、吐瀉物を撒き散らす自分に苛立つ、自分が対抗心を燃やす暁良があの妖気に当てられても平然と討伐に向かって行く姿に強く焦りを覚えた。
「俺は轟鬼の人間だ!こんな低級如きに俺がやられるかよ!!」
言葉と共に持っていた刀に力を入れ直し突っ込んでいった。
「危ないよ轟鬼君!一人で突っ込んだらダメだよ!」
後方で夏希の声が聞こえるが一切無視し切り込む。
確かに大河は敵を倒しているが、既に味方とは距離が離れ孤立していた。
まだ微かに夏希の援護は届いているが、これ以上進めばその援護も途切れるだろう。
「これ以上は流石に不味いか……」
そう思い仲間がいる方に戻っていく、味方と合流したら知らない男に突然殴られた。
「お前!何やってんだよ!」
男が「お前が勝手に抜けたせいで崩壊しかかったんだぞ!」と文句を言ってきた。
「俺が抜けた位で崩れるなら対魔師なんて向かないのでは?」
「お前……この惨状を見て本気で言ってるのか?」
怒りか悲しみかわからない表情で、男は大河にそう言った。
そこで大河は周りを見回すと最初いた人数より人が少なかった。
「お前が急に抜けた穴から崩れて二人食われた、お前のせいでだ!」
男の言葉に大河は頭が真っ白になる。
自分なら皆を守れる、自分ならここにいる皆を救える、自分は轟鬼であり、それに恥じない努力をしてきたつもりだ。
だが結果は失敗した、夏希は悲しそうな顔をし、他の人間は大河を侮蔑の混じった顔を隠そうともせずこちらを見ていた。
「すまない……」
そこで初めて謝罪の言葉を口にした。
「お前は轟鬼で強いのかもしれないが、まだ碓井さんやベテランの様に一人で俺たちを守れるほど強くないだろ?」
「すまない……」
許して貰えるとは思わないが、謝罪を口にするしか大河は思いつかなかった……。
夏希達新人はこの後どうするか、生き残ったメンバーで話している。
「俺達新人は誰かさんの所為で八人しかいない、だからここでベテランを待つべきだと思う」
男が言うと夏希と大河を除いた六人が頷いた。
夏希はそれでも低級を狩に行くべきと主張をする。
「反対です!確かに人数が減ったのは痛いですが、私達が低級を相手にしないと、ベテランの方達は低級を相手にしながら青鬼と戦う事になります!」
説得をしているが六人は「う〜ん」と唸っており、大河に至っては聞いてはいるのだろうが反応が薄い。
「わかりました、皆さんはペアとなる先輩対魔師を殺したいのですね?私は嫌です!ここで青鬼が倒せないとなると、対魔教会は直ぐに次の大規模討伐を組む事になります!次はもっと酷い状況での戦いになるかと思います!」
夏希の説得が効いたのか「わかった、俺も先輩達は死なせたくない」と言って大河を殴った男が賛同してくれた、それを切っ掛けに一人、また一人と賛同し、結果全員で行く事になった。
夏希の予想は当たっていた。
「グハッハッハ!対魔師が弱くなっているとはわかっていたが、ここまで弱くなっていたか!頼光とその仲間はもっと楽しめたぞ!」
青鬼の傍には、頭のない対魔師の死体が一つ転がっており、その死体には低級妖怪が群がっている。
もう被害は出ていた。
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