二十幕
昨日、橋姫から得た情報をその日の内に幻魔に届けた。
橋姫にはこの件の事も含めて必ず埋め合わせすると言って飲み会をお開きにした。
(大分借りが溜まってきてるな、返済できるか心配だ……)
そんな心配をしている場所は我孫子山近辺にある、対魔教会所属神社の会議室の中だった。
そこに集まっているのは周辺エリアにいるベテラン対魔師十人とそれぞれのペア相手十人の総勢二十人が集まっている。
「ベテランがこんなに揃うのは鬼一口以来か?」
男はガハハ!と笑うと何故か暁良の肩をバンバンと叩いてきた。
(痛えよ筋肉ダルマ!筋肉切り売りすんぞ!)
このムキムキのガテン系対魔師
暁良はこの男と何度か共闘しているが、いつもこのノリには馴染めないでいた。
「お茶美味しいです〜、あっ源にも入れて上げますね〜」
頭の中に蝶々が飛んでそうな糸目の女は、
この人とも何度か大物狩りの時に一緒になっている。
その他にも組んだ事ある者はいるが、交流と言える物は花菱と碓井の二人位だった。
「皆んなに集まって貰ったのは上層部が集めた情報で、このエリアの我孫子山に、青鬼がいる事がわかったからだ」
情報を上層部が出した事にした暁良の計画は幻魔がアドバイスをしており、根回しもしてくれている。
「この青鬼は大江山四天王の熊童子だと言うのは皆も理解しているとは思う、そして大昔に青鬼含めた四天王は、討伐されている言うのも共通認識であると思う」
何人かの対魔師は暁良の話しを聞いて、軽く頷いているのがいる。
「だが、上層部の調査隊によると四天王は全て生き延びている事がわかった」
その言葉に事情を知らない対魔師全員がざわつき、事情を知ってる大河を除いた暁良がいるチームは静かに頷いた。
「今回は十二聖の一人、轟鬼幻魔殿が発起人となった為、その近くで動いている私が音頭を取っているが、今後のまとめ役は私や皆んなから信頼が厚い花菱に任せたいと思う」
やはり他人に丸投げする暁良である。
話しを突然振られた静香は「おれかっ?」と言いつつ、頭を掻きながら前に出てきた。
「今回まとめ役をやらせてもらう花菱だ!ここにいる奴は新人以外は俺の事を知ってるよな?細かい事は源に補佐してもらうが、基本的には俺の指示に従ってもらうからな!わかったか!?」
その言葉に周りから歓声が上がった。
(やっぱり、人を指揮させるなら花菱が一番だな、信頼も厚いし、俺が丸投げしたのはバレてたっぽいけど……)
打ち合わせを全体でして決まった事は、青鬼と戦うのはベテラン十人のみ新人は周りにいる餓鬼や低級妖怪の相手。
青鬼は橋姫と違って低級妖怪を配下として使ってるとの話しだから厄介だ。
それから大討伐メンバーは我孫子山に移動して、細かい準備をしつつ周りを見ると新人達十人は緊張でガチガチだった。
(まぁ、しょうがないよなこんな大物狩そうそう無いしな……さてどうするか)
そんな事を考えていると花菱が何か喋り出した。
「さて、逢魔時までに全員準備は済ませておけよ!子供じゃねーんだから忘れ物しましたとかは笑われるからな!俺も大討伐の時腕輪忘れた事あるけど、そんな事すんなよ?」
ガハハと笑う花菱に緊張が解れたのか新人達が笑っている。
(さすが、花菱を選んで正解だったな)
「さて、夏希と轟鬼わかってると思うが、お前達が最優先にする事は生き残る事だ、例え俺や未知瑠が死んだとしてもまずは生き残れ、この大討伐が終わった後は間違いなく一つ上の領域に届くはずだ」
「でも暁良さん、今回の敵って凄く強いんですよね……?」
いくら緊張が解れたとは言え、これから始まる戦いに不安は隠しきれないようだ。
「まぁ、色々言ったが俺や未知瑠、碓井もいるからお前達は自分達の事だけ考えてればいいさ」
「わかりました、気をつけて下さい」
「おぅ!」
夏希とのやり取りが終わった後、大河が暁良の方に近づき「死ぬなよ」と小さな声で言ってきた為、暁良も「当たり前だ」と軽く笑って返した。
「未知瑠は何か言わないのか?」
「私はいいわ、言いたい事は暁良がいったもの」
「そうか」
一通りやれるべき事をやった後、手に武器を持つと丁度日が暮れ逢魔時が訪れた。
逢魔時になった瞬間圧倒的強者の妖気が山全体を覆う様に張り巡らされる。
濃密な妖気を受けた対魔師二十人中十人つまり新人達は地面に蹲り吐瀉物を口から撒き散らしていた。
「あら、あらあら団体さんが来ましたよ〜」
碓井がそういうと大量の低級妖怪がこちらに向かって来てるのを確認した。
「新人さん達のお守りは任せてくださいな」
そう言うと碓井の姿が消え、それと同時に低級妖怪達が次々と爆ぜていく。
「ここは碓井に任せて青鬼まで一直線に向かう!新人達が問題なくなったら後から来いよ碓井!!」
花菱のその言葉に「は〜〜い」と碓井の言葉はドップラー効果を残し消えて行く。
「それじゃ行くぞ!!全員ついてこい!!」
「「「「応!!!」」」」
戦いはまだ始まったばかりだ……。
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