十九幕
今日は仕事を休みとした、理由は単純に疲れたからだ。
余程忙しくならない限り、疲れたら何時でも休めるのが対魔師のいい所ではあるが、忙しい時は地獄であり、疲れが取れない状態で命のやり取りをするからである。
休みにする事をメールで夏希に伝えると、ちょっとツラ貸せや!的に今日は予定を埋められた。
身支度を済ませた暁良は待ち合わせ場所着く。
「俺のが先に着いたか」
そこにはまだ夏希が来ていなかったので待ち合わせの場所にあるベンチでスマホを開き時間を潰した。
スマホを見てると画面に影が射し、顔を上げると夏希がいた。
「暁良さん遅れてしまってごめんなさい!」
思わずゴクリと唾を飲み込んでしまった、何故なら、髪がポニーテールではなくて下ろしただけ物だったのだが、その姿が妙に可愛いと思ってしまったからだ。
「どうですか!いつもの夏希ちゃんと違って可愛いと思いませんでしたか!見惚れていいんですよ!」
非常に残念である。
そんな事を言わなければ、暁良も少しは褒めようとするのだが、その気持ちは春の風と共に飛んでいった。
「自分で言うと痛い娘だぞ?」
「えぇ!酷いです!せっかくお洒落してきたのに……」
「髪下ろしただけだろ……?」
そう言うと冷たい視線を暁良向けてくる。
「下ろしてますけど、それだけじゃないですよ!」
「まぁいいや、それで今日はそっちが連れ出したんだ、何かあんだろ?」
今日の予定は全部夏希に任せる気満々の暁良だ。
「はい!それじゃ行きましょ!私に着いてきて下さい!」
「うぃ〜」
後ろを着いて暫く歩いてると段々と町の空気が変わってくる。
周りには色々なアニメやゲームの看板が出ていたり、アイドルの事を熱く語っている人達がいたりする。
そんな光景が視界に入ってきた暁良は段々と嫌な予感がしてきたのだ。
(あぁ、これはまさか連れてかれるのか)
更に着いていくと突然夏希は止まった。
「到着!さぁ入りましょう!」
「一応聞いておくけど、ここは何のお店だ?」
「それはサプライズです!」
そう言ってはいるが、看板にはメイド喫茶の冥土と書かれている。
「サプライズじゃないだろ、思いっきり書いてあるわ!」
言わずにはいられない暁良。
「まぁ、ここが橋姫のいる所か?」
何処の店で働いてるか全く知らない暁良ではあるが、流れ的に全てを察している。
「はい!メールで教えて貰いました!」
「さようでございますか」
「それじゃ行ってみましょう!」
カランと店内に入るとメイドさんが何人か駆け寄ってきた。
「「「メイド喫茶!冥土にようこそ!お待ちしてましたご主人様!お嬢様!」」」
(帰りたい!)
何故なら出迎えてくれたメイドさんの中に物凄く見知った顔が氷のような目で見てるからだ。
「お席にご案内しますね♪ご主人様!」
橋姫が席に案内してくれる様だ、言葉はとてもメイド喫茶らしいが目付きがヤバい。
席に連れて行かれる間、他の客から「姫様に対応して貰えるなんて羨ましい!死ね!」とか「あぁ、あの視線で罵って欲しい!」とかって声が聞こえてきていた。
(あいつマジで人気凄いな)
席までつくと「こちらにどうぞ♪」と言って椅子を引いてくれたので座る。
同様に夏希にもそうしてくれているが、橋姫の目はやっぱり笑ってない。
「今日は何をお食べになりますか?ご主人様♪お嬢様♪」
「姫ちゃん!私イチゴパフェ!」
「かしこまりました♪ご主人様はお決まりですか?」
「ブレンドコーヒーでお願いします……」
思わず敬語になってしまう暁良。
「それでは少々お待ちくださいませ♪」
そう言って奥に消えて行った橋姫、少しすると暁良と夏希にグループメールが届いた。
「(来るの急過ぎじゃない?)」
橋姫からのメールだった。
「(邪魔して悪いな、いきなり夏希が連れてきたんだ」
「(姫ちゃん可愛いよ!ぐへへ!)」
「(夏希なんか怖い、次からはちゃんと来る時教えてね?)」
「(悪いな今度埋め合わせするわ)」
「(うん、ありがとう!折角来たのだしゆっくりしていってね?)」
その後、夏希がまた変なメールを送ってたが暁良も橋姫もスルーしていた。
橋姫は暁良達の所にはもうこなかったがちゃんと仕事している姿が店内で見られた。
「お前はサプライズとかそう言うのは相手みてやれよな?」
そう夏希に伝えると「はい、気をつけます!」と分かってるのか分かってないのか判らないテンションで返事をしていた。
それから暫くゆっくりしてると橋姫からこの後、皆んなでご飯食べようとメールがきた為、橋姫の仕事終わりに合わせてお店を出た。
店から少し離れた場所で待っていると、「やっほー、お待たせ」と橋姫がやってきた。
その姿は簡単な変装なのか直ぐに橋姫とわかる格好ではなかった。
「もう、次来る時はちゃんと言ってね?」
「悪いな、全部夏希のせいだから」
「暁良さん酷い!まぁ、でも姫ちゃんに迷惑かけたくないし気をつけるね!」
「誤解しないでね?私は別に来て欲しくない訳じゃないからね〜」
その後、橋姫のオススメの少しお洒落な個室がある飲み屋に連れて来てもらった。
飲み屋では、橋姫に全て任せると手慣れた感じで注文していく。
「「「乾杯!」」」
手元にお酒が届くと乾杯の合図で動き出す。
暫く雑談で盛り上がり、お腹も膨れてくると橋姫が唐突に切り出した。
「そういえば、我孫子山に熊童子が現れたわよ」
また、忙しくなりそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます