十八幕

 朝、スマホのアラームの音で目が覚める。

 昨日はあれから日付けが変わる位迄、三人で下らない話しをしていたから朝がとても辛い。

 顔を洗ってからラフな格好に着替えて、いつも通り家を出た。


(ふぁ〜、昨日はお酒飲んでないんだけどな……やっぱり妖怪討伐終わった日はそのまま帰る方がいいな!)


 そんな事を考えているといつの間にか職場に到着していた。

 

 細かい仕事は夏希に全部任せている為、特にやる事もないのだが、今日は未知瑠と打ち合わせをする間、時間を潰しに社務所の寛ぎスペースに向かう。

 寛ぎスペースには先客がいた。


「ちっ……」


 先客もとい大河が先にこちらに気づいた。


(露骨に舌打ちするなよ……仮にもお前の上司だぞ!)


 内心でそんな事を思いつつ、表に出さない様に大河に尋ねた。


「あぁ〜、未知瑠はいるか?」

「源……さんはここに鏑木先輩がいる様に見えるのですか?見えるのでしたら眼科に行く事を勧めます」


 嫌味を言われた暁良は、イラつきながらも軽い感じで尋ねる。


「聞きたいんだけど、俺はアンタに何かしたか?したなら謝るけど、よかったら教えてくれ」

「別にない」


 無い奴の反応じゃないだろう!と暁良は思いつつ「そうか……」とだけ言って会話が終わってしまった。


(あぁ〜、いっそきっちり上下関係叩き込むか?)


 思考が暗黒方面に向かう暁良だが、救いの女神がやっと現れる。


「お待たせしたわね、ここにいると受付で聞いて来たわ」

「おせーよ、昨日メールで送ったと思うけど少し時間いいか?話しを擦り合わせたい」

「えぇ勿論よ、それじゃ場所を移しましょうか」

「わかった」


 そう言って立ち上がると大河も立ち上がった。


「ん、お前は着いてくる必要ないぞ?」

「何故だ……ですか」

「そんな事もわかんないのか?これはお前と夏希の上司である俺たちが大事な打ち合わせをするんだぞ?」

「そこに私がいて何が問題なんですか?」


 暁良は内心帰りたいと思うが、色々言わなきゃ駄目だなって思ったのか行動する。


「問題しかない、今後の活動方針に意見を延べるられる程お前に経験も知識もないし、新人にはまだ聞かせられない情報もある、そんな中お前がいたらやりたい会議も出来ないだろ……そして何より、俺はお前をまだ信用していないし、お前も俺の事を信用してないだろ?」


 思った事をそのまま伝えた暁良に未知瑠がフォローを入れる。


「ま、まぁ言い方は少し問題だけど、暁良の言ってる事は間違いでは無いの、君にもまだ聞かせられない情報も出る、だから申し訳ないけど、轟鬼君は打ち合わせが終わるまで時間を潰してくれると助かるわ」


 未知瑠のフォローを聞いて、大河は体を振るわせた後、部屋から出て行ってしまった。

 大河が出て行って部屋が空いた為、このまま此処で会議を始めた二人。


「何なんだあいつは?」

「ごめんなさい、私の教育不足で…….」

「教育とか言う程、日数経ってないから未知瑠が気にする事じゃないだろ」


 未知瑠は「えぇ、そうね……」と申し訳無さそうにしている。


「んで、実際の所轟鬼はどうなんだ?戦力的な意味で」

「そうね、戦闘技術に関しては流石は轟鬼家って感じね、使っている武器は暁良と同じで刀よ」

「まぁ、社長の一族なら刀が武器だよな」


 まさかとは思い暁良は聞いてみる。


「一応聞くけど轟鬼は霊装具現化してるとああるか?」

「何をいってるの、いくら轟鬼家の人間でもそう簡単にできる事ではないわ」


 やはり夏希が規格外だったって事がわかった暁良は、そのまま夏希の霊装の事や初陣の事を説明すると「あの子、意外と凄いわね」とか言っている。

 その後もどういう風に成長させるかを二人で話しあった結果、もう少し実戦をやらせてから二人だけでCランク相当を相手させる事にした。

 因みにC相当は牛鬼、片車輪、鬼等が暁良と未知瑠が戦った中では該当する。

 橋姫なんかはAオーバーと言われる等級だったりするから論外だ。


 打ち合わせが終わるとお昼を軽く過ぎていたの。

 暁良が教育と称し、押しつた雑務をやってる夏希が社務所に来てた為、ご飯を食べに一緒に出かけた。


「暁良さん、ホント好きですよね……牛丼」


 来ていた場所は行きつけの牛丼屋。


「味良しコスパ良しで嫌いな奴のが少ないだろ?」

「ハァ〜、一応私は女の子ですよ?もっとお洒落な所とかに誘ってくださいよ!」


 ヤダヤダと言った表情を隠しもしない夏希は牛丼大盛りにたっぷりと紅生姜を乗っけて食べていた。


「女の子扱いして欲しいならもっと色々成長してから言え」


 そう言って、夏希の全身を見てから軽く溜息を吐く暁良。


「それ、私以外に言ったらセクハラで叩かれますよ?」


「お前しかいないから言ってるんだよ」

「状況が違えばトキメク言葉ですけど!暁良さんは基本私に酷いです!」

「まぁ、教育だと思って諦めろ」


 その言葉に「横暴だぁ!」と言ってる夏希を無視し残りのご飯を完食した。

 ご飯を食べ終わり、二人分の会計をした暁良は夏希をつれて今日の現場に向かった。


「夏希って、轟鬼が俺に対してあんな態度とる理由ってわかるか?」

「わからないですけど、何か暁良さんに対して対抗心見せてますよね!」

「あれは対抗心なのか?敵意にしか見えないが……」

「違うのですか?暁良さんの過去の戦闘資料とか見てる時ありましたから、てっきりそうなのかと思ってました!」


 対抗心と言われればそんな様な気もしてきた暁良、単純である。


 その後現場に着き、特に問題も無く討伐を終わらせ、その日も無事終わった。

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