四十四幕

 突風吹き荒れる中、動きに制限されつつ暁良は舞う。


「五月雨一閃!」


 暁良の剣風が大天狗の頬を掠める、ダメージは無いが威嚇は出来た。

 暁良の攻撃に呼応するように一誠の糸が大天狗を掴みとる。


 大天狗は軽く身震いさせて糸を破壊した。


「五月雨一閃!」


 大河も暁良と同じ技で大天狗に攻撃をする。


 その間にも、夏希は急所と思われる眼などに矢を射掛けていった。


 大天狗は鬱陶しそうに夏希に攻撃を仕掛ける、しかしそれを拓と未知瑠が防御した。

 そして、それをフォローする様に姫乃が大天狗に猛撃していく。

 姫乃の攻撃はやはり無視出来ないのか片手間ではあるが大天狗は防いでいく。


「霧月!」


 大天狗クラス相手に不可視の刃等はあって無い様な物、それでもごく僅か、隙とも言えない時間を作る。


「はぁぁぁぁ!!!」


 姫乃の攻撃がまともに辺り、少しだけ下がる大天狗。

 そこに追撃をするように健が切り込む。

 一撃、二撃、三撃、健の連撃は止まらず加速する。

 一誠が糸の結界で大天狗の移動を制限するが、大天狗が足を踏み鳴らしただけで結界は破壊された。


「くらぇ!!」


 悠太が振るう棒が大天狗の足に絡み一瞬態勢を崩した。

 上空からは大天狗目掛けて千歌が降ってくる、その手には大鋏を持ち首を狙う為に!。

 それに気づいた大天狗は千歌を迎撃しようとする。

 暁良は千歌を攻撃させないように間に入る。


「「静流!」」


 暁良一人では捌ききれないと分かった大河は二人で千歌を守る為、一緒に受け流す。

 大天狗の首に千歌の鋏が入ろうとしたが大天狗は咄嗟に鋏を掴み千歌毎投げ飛ばす。

 そして、この動きは完全に隙となった。


「「「「ハァァァァ!!!」」」」


 千歌を除いた第三部隊全員の渾身の一撃が大天狗に当たる。


「ふむ、面白いな?以前より遊べる」


 全くダメージが無いなんて事は無いがまだ余裕がある大天狗。


 そして、大天狗は近くに居た暁良に殴りかかる。


「くっ!」


 暁良はヤバい!と思うが、大天狗の攻撃を渡辺津名が防いだ。


「成る程成る程、やはり歪な魂を持つその男は死なせたくないのか?」


 そう言いつつ、暁良に攻撃を繰り出していく大天狗、それを守る様に第一部隊は攻撃を防ぐ。

 その間も第三部隊が、大天狗に攻撃を加えるも多少動きを鈍らせる程度であった。


 だが、暁良と大河はどんどんと剣速を上げ始めていた。


「「風雷!!」」


 暁良と大河はこの時の為に、幾度も連携訓練をやった、そして訓練の成果は確実に出ている。


「「五月雨一閃!!」」


 阿吽の呼吸で同じ技を繰り出していく、その動きは訓練でやったどの時よりも洗練されていた。


「ぐぬぅ!やるな」


 暁良と大河の二人は、眼を真っ赤に染める程血走らせ、今までに無い程感覚が研ぎ澄まされていた。


 大天狗は他の攻撃を捌きつつ、この二人の完全な連携を受け、守りに重きを置いた。


「「青龍!!」」


 二人の攻撃は速度を上げていく。


「「白虎!!」」


 二人の攻撃は重さを増していく。


「「朱雀!!」」


 二人の攻撃は精度を増していく。


「「玄武!!」」


 二人の攻撃は誰にも止められない……。


「「奥義・四神爆砕ししんばくさい!!」」


 この力は不味いと一誠は全員に「下がれ!」と指示を出して下がらせた。


 それと同時に大天狗を中心とした小規模な霊気爆発が起こる。


「凄い攻撃……」


 その言葉は誰の物かはわからなかったが、第一部隊、第三部隊全員の想いだった。

 これは全員が大天狗をやれたと思っている、それは奥義を放った二人でも感じた手答えであった。


「やったな」


 暁良の言葉に大河も「やりましたね」と言ってお互いに拳を握り、軽くぶつけあう。


 しかし、それは悲劇の合図であった。


 ボロボロになった大天狗がいつの間にか距離を詰めている。


「「なっ!」」


 暁良と大河は連続技に始まり、大技、奥義で力を使い過ぎて動けなかった。

 そして、無防備な大河が殴られ吹き飛ばされる。


「とどろっ、ぐはっ!」


 暁良も吹き飛ばされた、その攻撃で暁良は意識を手放した。

 幸いに攻撃が当たる寸前に、碓井が大天狗を攻撃してくれた為、致命傷は逃れていたた。


「あらあら〜、何で第一の皆さんは動かないんですか?第三部隊の皆さんもしっかりですよぉ〜?」


 その言葉に残りの第一部隊は「余計な事を言うな」と誰にも聞こえない位に呟き、第三部隊は慌てて攻撃態勢を取った。


「大分弱ってるぞ!畳みかけるんだ!」


 一誠が全員を鼓舞してから戦闘が再開された。


「源君は第一部隊に任せて我々は一気に削るぞ!」


「「「応!!!」」」


 大天狗の身体はもうボロボロである、だがその顔は恍惚としていた。


「楽しいぞ人間!やはり戦いとは命を燃やしてこそ戦いである!お前達も最後まで絞り出せ!油断した瞬間にその首を撥ねる!」


 そんな事は言われなくても分かっていると言わんばかりに第三部隊は大天狗を削っていった。

 暫く攻防が続くと、大天狗はとうとう動きを止めた。


「もう諦めたのですか?」


 一誠の言葉に大天狗は今迄隠していた刀で一閃を返した。


「なっ!」


 一誠はすんでのところで回避できた。


「言っただろ油断するなと……まぁ、これで全て出し切ったのだがな……」


 そう言った後、大天狗の体は塵となり、風と共に消えていった。

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33歳、職業対魔師今日も頑張る! 鋼夜 @kouya1106

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