四十三幕
姫乃に色々な事を説明されたあの日から二日経過した朝、決戦の日がやってきた。
「大天狗が鞍馬山に出現、予定通り第一と第三部隊で共闘を張り、これを殲滅します」
一誠の言葉を聞き、暁良は静かに気合いを入れた。
「それでは各々準備出来次第すぐに向かいます、急いでくださいね」
「「「了解!!」」」
全員の声が重なり、それぞれが準備に走る。
「いよいよだね?」
姫乃が話しかけてきた。
「あぁ、予定通り行くぞ?」
暁良は先日の事もあり一応、確認の意を込めて伝えた。
「わかってるよ」
問題はない様だ。
「まぁ、心配すんなよ、いざとなったら逃げるから」
「うん、お願いね?」
「あぁ……」
そんな会話をした後は、専用の飛行機を使い現地まで向かう。
「飛行機まであるのか……」
暁良の呟きに一誠が応えてくれる。
「遠方の時に間に合わない、と言う事態にさせない為ですよ」
「そりゃそうですよね」
「鞍馬山の大天狗って事は鬼一法眼の可能性もあるんですか?」
鬼一法眼と言えば牛若丸に剣を教えた人物である。
つまり、大天狗は刀を使用する可能性もあるという事だ。
「そうですね、前回の時は刀は所持してませんでしたが、使ってくる可能性は大いにあります」
「それが有るか無いかで勝敗を分ける可能性もありますからね」
暁良の言葉に全員が静かに頷いた。
「そうですね、何が有るか分かりませんし油断は禁物です」
その後、全員は飛行機の中で今日の戦いの為に精神統一をしていた。
そして、現場に到着する。
現場には既に、第一部隊が待機していた。
「到着しましたか、私達は準備出来てます」
第一部隊は何時から現地入りしていたのかわからないが、既に戦闘態勢は万全らしい。
「すみません、待たせましたか」
一誠が謝罪を口にするも「いいよ、それよりも準備して」と促された。
「大天狗はもう此方に気付いてるよ、その上で余裕を見せている」
「その様ですね、今回は向こうもやる気の様ですか」
一誠が……、いや皆んなが大天狗を睨み付けている。
そして、大天狗も不敵な笑みを浮かべながら魔強導隊を見ている。
「ところで作戦はどうします?」
暁良が一誠と津名に問いかけた。
「第三部隊の人数多いし、人数で攻めて第一部隊が攻撃の援護でいいんじゃない?」
やっぱりか、と暁良は当たって欲しくない予想が当たった事に悲しみを少し受けた。
だが、予想はしていた為直ぐに切り替えられた。
(やはり第一は援護を主張してきた、つまり呪いを討ちたい勢力の可能性がグッと上がった)
「成る程、第一の援護が有るならば私達は攻撃に集中できます」
第一部隊の思惑を知らない一誠はその案で行く事に了承した。
(この作戦で行くなら、やる事は予定通りに俺が敵の的になる!それで第一を引き摺り出してやる!)
そんな考えをしつつ、姫乃の顔を見ると目が合ったので、お互いコクンと頷いた。
逢魔時まで刻一刻と時間が進んでいく。
人払いを済ませてある周りでは、獣の声が聞こえていた。
この獣の声も戦闘が始まれば一切が消える。
そして逢魔時になり、妖の時間が始まる。
「皆んな行くぞ!」
「「「「応!!」」」」
一誠が全員に号令を掛け、それに全員が応じ戦闘が始まる。
戦闘が始まり、渡辺津名は焦っていた、何故なら、自分の命を差し出すかの様に大天狗に切り込んで行く暁良の姿があるからだ。
姫乃の想像通り渡辺津名は呪いを受肉させたい勢力の一人である。
そして、呪いが受肉する前に暁良が死ぬのを絶対に避けたい第一部隊は、暁良の思惑で、守る為に積極的に動かされていた。
渡辺津名は暁良の動きを見て「これは、バレてますね……」と小さく呟く。
綱としては色々楽しくやりたい為、意図的に情報を姫乃に流したりしたが、こんな手段で対抗してくるとは思ってもいなかった。
「源君、先走り過ぎですよ!」
一誠が暁良に注意を促す。
「何を言ってるんですか!攻撃を緩めたら駄目です!第一が援護してるんですよ!大丈夫です!」
そう言って暁良は津名の方に視線を送る。
津名は少しだけイラっとした表情をするが、暁良を守る為に必死に動いた。
大天狗は無言のままこっちの攻撃を躱したりしている。
時折り、暁良の顔を見ていたりするが特に何かをする訳でもなかった。
そうしていると、
「ふむ、前回よりは戦力を整えてきた様だな」
大天狗は一人喋りだし、動き出す。
「先ずは前回のおさらいとしよう」
その言葉と共に腕を掲げ、そのまま振り下ろす。
たったそれだけで突風が暁良達を襲う。
「戦闘が始まってやる気が無いかと思ったのですが、やる気になったようですね!」
一誠は前回の事を思い出し、そんな事を言っていた。
突風が吹き荒れる中、大天狗は悠々と歩いて来る。
こちらは吹き荒れる突風で既に動きが制限されていた。
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