三十二幕

 翌日、暁良、橋姫、未知瑠、夏希達四人は社長室に来ていた。

 部屋には幻魔と大河もおり、昨日四人で話し合った事を報告する。


「俺……誘われてませんが?」


 大河はちょっとだけ泣きそうな顔になっており、幻魔はえっ、お前チームなのに誘われなかったの?な顔で曾孫を見ている。


「だって、お前いなかったじゃん」


 暁良がそう言うと。


「そうですよね、居なかったから、誘えなかっただけですよね!」


 大河はほっとした様にする。


「それでどうですか?社長」

「いぁ、今ここにいるんですから誘って下さい!」


 スルーして話しを続けようとする暁良に大河が慌てて突っ込む。


「うん?何だ行きたいのか?」


 暁良は大河に問いかけた。


「えっ、でもここの人員が減るのも不味いですし……どうするか……」


 大河は面倒臭い男であった。

 だが、暁良も面倒な男だ。


「そうか、それじゃここはお前に任せるから、後は宜しくな!」


 暁良はちょっとムカツいたから自分から誘わないと心に誓って動いてると。


「違いますよね!ここはもっと強く誘う場面ではないんですか?」


 大河がそんな事を言っている。


(クソ面倒だなこいつ、ってかこんなキャラだったか?夏希みたいな事言いやがるし)

「ん、でも行きたくないんだろ?」

「行きたいです!是非連れて行って下さい!」


 大河が折れた様だ。

 その光景を見ていた他の面々は苦笑していた。

 暁良もそれを見て「最初からそう言えよ」と呆れていた。


「そう言う訳で社長、この五人でいけませんか?橋姫も友好的と言うのは先日わかったと思いますよね?」

「ふむ、魔強導隊はかなりしんどいぞ?それでもいいのかの?いっそ死んだ方がましと思う様な事もあるぞ」


 幻魔は全員の覚悟を改めて問う。

 それに対して五人全員が答えた。


「「「「「問題ありません!」」」」」

「そうか、あいわかった、ここは何とかする、推薦状も書いてやるわい」


 幻魔がそう言うと全員が緊張を解いた顔をした。


「茨城童子よ、お主に戸籍を与える、討伐保留が出ている以上は問題ないじゃろうが、名前で無用な誤解を与える必要もないじゃろ、今後名乗る名前は何か希望があるか?」


 そう言うと、橋姫は先日名乗った名前を言った。


「ありがとう、それじゃ、茨城 姫乃でお願いしたいわ」


 以外と気に入っていたらしい。


「直ぐに手配しておこう、今後はそう名乗るのじゃぞ?他の者も気をつける様に」


 幻魔がそう言うと「わかりました!」と全員が反応を返した。


「魔強導隊には話を直ぐに通す、全員で直ぐに向かい規則等を聞いてくるが良い」


 その言葉を聞き、全員で返事をしてから部屋を出た。


「それじゃ早速向かうか、場所は東京だったよな?あの人がメチャクチャにいる都内」

「えぇ、なにが起こるかわからないし早速行きましょう」







 魔強導隊本部に到着した暁良達は外観を見て感想を呟いていた。


「何で、他は神社とかなのにここだけTHEビルなんだよ、世界観考えろよ」


 そのビルは、他のビルとは大きく切り離された場所に建っている。


「そしてこれよ」


 そう言って暁良が指を刺した先では、巫女や男巫が装束を来て働いているのが、外から見えるのだった。

 違和感しかないのである。

 みんなはそれを見て「そうだね」としか言えなかった……。


 その後はビルの中に入り、自分達の素性を話した後、幻魔からの通達が来ているか確認してもらうと別の部屋に案内された。


 別室に案内された後、少ししたらスーツを着た男が入ってきた。

 その姿を見て暁良は(世界観!統一しろよ!)と強く思うが、自分も普段からラフな格好で仕事をしているのだから、棚上げである。


「初めまして、私は対魔師強化教導隊、第三部隊指導隊長の来栖 一誠くるす いっせいです、以後お見知り置きを」


 そう言って全員と握手する為か、まず暁良の近くまでその手を差し出した。

 それを疑問を思う事なく握り返すが、暁良が思った事は「こいつ、碓井より強い」と思いつつ握手を終えた。

 他のみんなも握手して行くが、同じ事を考えていたのだろう……夏希と姫乃を除いて。

 姫乃と握手した時は、一誠が少し顔を顰めたのがわかったし、夏希はそもそも何も考えていなかった。


「それでは、挨拶も終わったし、説明を始めさせて貰おう」


 一誠は軽く咳払いをした後、説明を始めた。


「まず、何故私が君達の対応をしているのかと言うと、先日、私の十人から成る部隊で大討伐を行った、相手は大天狗だ」


 その言葉に姫乃は「とんでもないわね……」と小さく呟く。


「そしてその大天狗を討伐する際に五人殉職した、ここまで言えばわかると思うが、君達はその補充要員だ」


 魔強導隊が五人殉職したと聞いて、恐ろしい損耗率だと全員驚いた。


「そして言い忘れたが、その大天狗の討伐は失敗した、辛うじて追い返した感じだね」

「大天狗にどれくらいダメージを与えられたのですか?」


 未知瑠は一誠に尋ねる。


「そうだね、私がみるに10%程だね」

「たったのそれだけですか?」

「これでも敵の強さを考えれば与えた方だと思って欲しい」


 暁良はマジかと思った。


「そして、今後も大天狗は追いかけていくつもりだ」


 姫乃以外の四人は俯いてしまった。


「本当ならね、まだ霊装具現化も出来ない様なのを連れている君達を入れるつもりは無かったのだけども、それを踏まえても強い人材が来るって聞いてね……そうですよね茨城姫乃さん?」


 そう言って姫乃に笑顔を向ける一誠。

 どうやら姫乃の正体は知っている様だ。


「大天狗相手に私が何処まで出来るかわからないけど、やれるだけはやるわ?」


 その言葉に満足した一誠。


「えぇ、期待してます、此処で貴方達が存在感を示せば、上層部も姫乃さんに対しての悪感情も消えるでしょう」


 その言葉を聞いて、暁良は心の中で気合を入れ直した。


「さて、では今日から貴方達の仲間となる方達を紹介しますので着いてきてください」


 そう言って一誠は、暁良達をその仲間達がいる所に連れて行く為、みんなで部屋をでたのであった。

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