八幕
振り向いた先には少女がいた。
身長は百六十位で人間の少女と同じ様な格好をしている。
しかし目を惹くのが黄金に輝く様な長い金髪と、血で作ったのかと思う様な赤い瞳である。
「ねぇ、一昨日から貴方達は私の遊び場で何をしているの?」
少女は暁良に友達の様な口調で語りかけてくる。
「ここ最近、この近辺では低級の妖怪達が数を増やしている」
「ふーん、それで何でここにきたの?」
「原因はこの山に住み着いた上位存在が出てきたからだと推測したからだ」
「もしかして、私がこの山で遊んでいたからかな?」
少女の言葉に暁良少々考える。
(本来ならここで戦闘が始まる所だが、この少女なら対話は問題無さそうだな)
そう考え少女と会話を試みようと思ったが、少女の名前すら知らない事に気づく。
「いや、山で遊ぶのは何も問題ないさ」
「そう、よかったわ」
「所で君の事は何て呼べばいい?」
「ん〜、茨城童子とか橋姫とか呼ばれてたかな呼びやすい方でいいよ」
名前を聞いて暁良は言葉を失った。
(はい、Aランク越え確実の相手だ、千年は生きてる鬼と戦ったら死ぬわ俺達!)
京都にある大江山の酒呑童子と茨城童子は有名過ぎる鬼である。
「そうか、それじゃ橋姫って呼んでもいいかな?」
どっちでも良いと相手は言うが許可を取って呼ぶ事にした。
「いいよ〜」
「それじゃ橋姫はどうしてここで遊んでるんだ?」
疑問に思った事を率直に聞いてみる。
「本当は探し物をしてるのだけど、探すだけじゃつまらないじゃない?だから探し物のついでにここに来る人間や妖怪で遊んでるのよ」
人間と妖怪"で"遊ぶと言う橋姫の顔はとても無垢で無邪気に残酷な顔をしていた。
「もしかして、俺たちとも
「もちろん!話しかけたのは何しに来たのか気になったからだよ?」
どうやら最初から戦いは避けられないようだった。
「それじゃそっちの疑問も解消したんだからこっちも
暁良はヤケ糞気味に提案してみる。
「そうだね、準備した事によって長く遊べるなら私は歓迎だわっ」
言ってみるもんだなと暁良はほくそ笑んだ。
「おい、いつまで動けない振りしてるんだ!未知瑠!」
「一応途中から動けて、隙を伺っていたのだけれどね……」
「そんな事はわかってるんだよ、ここでやるしか俺たちは生き残れない」
「えぇ、わかっているわ!」
二人は呪文を告げ霊装具現化させ、更に全力の身体強化を施す。
「準備は出来たかしら?」
橋姫が確認を取ってくる。
「あぁ何時でもいいぜ!」「何時でもいいわ!」
「それじゃ、
ここに生死を賭けた遊びが始まった。
「だりゃあぁぁぁぁ!」「はあぁぁぁ!」
全力で身体強化している暁良と未知瑠は目にも止まらぬ速さで橋姫に攻撃を仕掛けるも、その全てが躱されている。
「
暁良は片車輪を仕留めた五月雨一閃を使うが、斬撃の一手目から刀の持ち手を軽く蹴り上げられ不発に終わる。
橋姫は蹴り上げた勢いのまま後転して背後から攻撃をしようとしていた未知瑠にも重たい蹴りを放つが盾を使ってなんとか防ぐ。
「ぐっ!なんて重い一撃……」
たった一撃を防いだだけで、盾を持つ手は痺れる。
だが泣き言等言う暇もなく、次々と橋姫からは攻撃が繰り出される。
「
暁良は未知瑠と橋姫の間に入り攻撃を受け流す技を使う。
「はぁ!」
攻撃を受け流した隙を突いて未知瑠は暁良の背後から飛び出し、持ってる盾に霊気を流し込みながら橋姫の顔を殴りつける。
しかしその攻撃は無残にも空を切った。
だが、その攻撃の本当の狙いは橋姫の視界を盾で制限する為であった。
暁良と未知瑠の即興で作った連携で獲ったと思った次の瞬間、轟音と共に二人は吹き飛ばされる。
「ぐわぁーーー!」「きゃぁーーー!」
二人は吹き飛ばされた先から橋姫の方を見ると、砂埃で姿が全く見えないでいた。
しかし砂埃の中から声が聞こえてくる。
「あはは、面白いよ貴方達!私も少しだけ本気でやるね!」
だんだん砂埃が晴れていくと、そこには二本の角を生やした橋姫がクレーターの上に立っていた。
一体何が起きたのかと言うと、二人の連携により少しだけ焦った橋姫が力を解放して、"ただ地面を蹴った"のである。
「マジかよ……さっきは獲ったと思ったんだが」
「私も上手く行ったと思ったのだけどね」
「そりゃあんなふざけた力技で防がれるとは思わないだろ」
そんな会話をしてる間も橋姫はゆっくり歩いて近づいてきている。
「さてどうするかね」
二人は短時間の戦闘で既に満身創痍である。
元々全力の身体強化は長期戦には向かない程に霊気の消耗が激しいのである。
「どうもこうもやらないとやられちゃうでしょ……」
「……最終手段の前に聞くが携帯は無事か?因みに俺は壊れた」
「私も早い段階で壊れたわ」
「そうか、だったら最終手段だ」
「最終手段?」
「どちらかがアイツを足止めして、もう一人が社長を呼んでくる」
「それは……」
未知瑠はこの提案に逡巡する。
何故かと言うと橋姫の足止めをする方は確実に死ぬだろう事が予想できるからだ。
「俺が残る、お前は社長を呼んでこい」
暁良は提案を聞き逡巡した未知瑠を見て直ぐに自分がその役目を負う事にした。
「昨日の借りた貸しはこれで返済だぞ?」
「そんな、あれだけの事で命をかけるの!?」
「お前も高く付くって言ってたろ?時間もないんだから大人しく返済されておけ」
「くっ……」
もう何を言っても聞かないと悟り渋々納得した未知瑠は踵を返す。
「お願い、死なないで……」
そう言って未知瑠は走って行った。
「馬鹿、死なねーよ……おにぎりも食ったしな!」
暁良もそう言って橋姫の方に走って行った。
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