三十幕
我孫子山の対魔師達も優勢な状態で敵を追いつめていると、橋姫が凄まじい速度で戻ってきた。
「お待たせ!」
橋姫の登場に周りは勝利を確信したが橋姫の言葉を聞いて考えを改めた。
「
「何だと!」
戦いながら、その報告を聞く花菱。
それを聞いた肌鬼は笑った。
「カカカ、やっと気づいたか!そしてここにいると言う事は虎熊はやられたと言う事か、副首領」
その言葉に、周りは副首領?と反応した。
その反応を見た橋姫は「後で説明するわ」と言った。
「貴方達だけでも大丈夫そうだから、私は裏鬼門を閉じてくるわ?」
花菱はそれを聞いて「頼む」とお願いした。
「任せて」
そう言って橋姫は走り消えた。
裏鬼門がある場所には結界が貼られ、その中に位牌があった。
(これは、魂抜きの件といいあいつらだけで出来る事じゃない、誰かが裏で手を引いてる可能性が高い……しかも人間側で……)
そう考えたが、先にやる事をやろうと意識を切り替えた。
橋姫はC〜Bクラスの妖怪を屠りながら、結界も破壊していく。
結界は少々骨が折れるが問題ない。
(もう少しだから待っててね、暁良……)
「おらぁ!」「せいやっ!」
花菱が中心となって肌鬼を追い詰めていく。
「カカカ、このままではやられてしまうな!」
「もういい加減諦めてやられちまえよ!お前の後もつかえてるんだよ!こっちは!」
「えぇ!さっさとやられなさい!」
花菱と未知瑠が肌鬼に文句を言うが、肌鬼からしてみれば溜まったものでは無い。
ベテランによる数の暴力は肌鬼の命を確実に削っている。
「カカカ!こうなったら奥の手を使うしかないですな!」
その言葉に全員が身構えた。
直後、肌鬼は逃げた、全力で逃げた。
「「「な、なにーーー!」」」
まさか逃げるとは思わなかった面々は声を上げて見送る事しか出来なかった。
追いかけるにしても、全力で逃げに回られたら、追いつけるのは現状では橋姫位である。
「えっと……取り敢えず碓井の援護に向かうぞ!」
花菱にしては、締まらないのであった。
赤鬼は肌鬼が逃げた事を感じて、自分も逃げようとした。
「さて、星熊も逃げたみたいだし、私も逃げます」
その言葉に碓井は「逃すと思う〜?」と逃腰になった赤鬼に距離を詰めていく。
だが、肌鬼同様逃げに徹されると追い付けない。
「さて、それではさようなッ」
逃げようとした赤鬼の背後から二本の刀が生えていた。
「なん……だと?」
赤鬼は困惑しかなかった。
「やった!投げた刀が刺さりました!」
そう言ったのは未知瑠に質問をした若い女対魔師だった。
そして、大きな隙が出来た赤鬼の首を、碓井は即座に切り落としたのである。
全ての戦場て戦いが片付いた頃、橋姫も帰ってきた、その手には位牌を持って。
「さて、説明してくれるんだよな?」
全員が揃ってから花菱は橋姫に問いかけた。
(今回の件、間違いなく人間、しかも対魔師かそれに近い位置にいる者、だからこの場では話せない)
「ごめんなさい、この場で話せない事になってしまったわ」
そう言うと橋姫に視線が集まった。
「どう言う事だ?さっきは説明してくれると言っただろ」
「何度も言うよ、今は説明出来ないの」
橋姫と花菱は見つめ合う。
暫くすると深い溜息と共に花菱は視線を外した。
「わかった、それじゃ深い事は聞かない、只これだけは教えてくれ」
「何?」
「あんたの本当の名前と……俺達の敵か味方かを」
そう言った花菱の眼は、此れだけは譲らないと言う強い意志を感じた。
それを見た橋姫は誠意を見せる。
「大江山の茨城童子、未来の話しは判らないけど、今は味方であり、この先も味方でいたいわ」
名前を聞いて、副首領と言われた意味がわかった花菱達対魔師は驚く。
「確かに未来の事はわかんねーな、だけどアンタが俺達と一緒に敵と戦った!だから俺は戦友であるアンタを信じるぜ!」
そう言っていつもの通りガハハと花菱は笑った。
「それじゃ打ち上げやっぞ!今回も全員参加だいいな!茨城童子……いや姫乃も来るんだろ?」
花菱は橋姫を誘う。
「ごめんなさい、お誘いは嬉しいけど、この後はどうしても外せない用事があるの」
そう言って懐にしまってある位牌を服の上から撫でた。
「花菱さん、私も今日は姫乃に付いて行かないとなので断らせて頂きます」
「わたしも!今日はすいません!」
未知瑠と夏希もそう言って断った。
「俺は行ってもしょうがないから花菱先輩と飲んできます」
大河はどうやら花菱の方に行く様だ。
花菱はしょうがねぇなって風に、
「次の時は朝迄付き合えよ?それで許してやるからな!」
ガハハと笑って未知瑠達の肩を軽くバシバシと叩いてから、その他全員を連れて行ってしまった。
「さて、暁良を戻しにいきましょ?」
「行きましょう」
「いきましょー!」
三人は笑顔で自分達の拠点に戻って行った。
ここは対魔教会本部のある一室。
その部屋で話す二つの影があった。
「茨城童子を見てどうだ?」
「今は妹が見てますが、そうですね、言われてる程は強く無いと思いますよ?」
「成る程、流石は十二聖次期筆頭候補だな君達に監視を任せて正解だったよ、引き続き何かあったら頼むよ」
「はい、この私、
その顔は未知瑠に質問した若い女対魔師と同じ顔をしていた。
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