六幕

 目が覚めると太陽は真上に近い時刻となっていた。


「やっちまったなぁ〜」


 暁良はまだ目が覚めてない頭でどうするか思案する。

 ふと、スマホに目を向けると未知瑠と夏希から何度か着信が来ている事に気づいた。


「流石にかけるか」


 暁良が夏希に電話をかけると、直ぐにスマホ画面内の受話器が上がった。


「大丈夫ですかぁ〜〜!!」


 爆音と呼べる音量で夏希は喋りかけてくる。


「大丈夫じゃなくなったから切るわ」


 暁良そう言うとスマホを切って、直ぐに未知瑠に電話をかけた。

 何回か呼び出し音を鳴らした後に画面の受話器が上がる。


「もしもし、大丈夫なのかしら?」

「悪い、昨日帰ってから今迄ぶっ倒れてたみたいだわ」

「あら、謝らなくても別にいいのよ?早期に解決したい仕事ではあるけども倒れるレベルならゆっくり休んだ方がいいわ」


 未知瑠としても情報がない状態では大した事は出来ないと解っている為、強くは言ってこない。


「この埋め合わせは必ずするよ」

「ふふっ、高くつくわよ?」

「大丈夫、最近忙しいから懐には多少余裕があるぜ」

「そう、それじゃ今日はゆっくり休んで頂戴な」


 そう言って通話は切れる。

 通話が切れた後に大量のメールが来ている事に気づき、試しに一つ開いてみた。


「(何で電話切るんですかっー?)」


 そっとメールを閉じて大量に夏希から届いていたメールをゴミ箱に捨てて行く。

 酷いと思うかもしれないが、暁良と夏希はいつもこんな感じである。


「さて、今日はお休みになったしゆっくり寝るべ!」


 そう言って暁良はベッドの中へと再び入り込んでいく。


 未知瑠は暁良からの電話を切った後、幻魔に妖気を隠す存在の事や、その対処法を聞きに行く為に神社に向かった。

 

 社務所に着くと夏希がプリプリしながら仕事をしている。


「夏希ちゃん機嫌悪そうだけどどうしたの?」


 夏希に問いかけると、待ってましたとばかりに距離を詰めてくる。


「未知瑠さん聞いてください!私が心配してあげてるのに、源さんはいきなり電話切るんですよ!酷くないですかっ?しかもメールの返事もくれません!」

「そ、そうねそれは酷いわね」


 凄い剣幕で未知瑠に愚痴を溢してくる。


「ですよね!酷いですよね!源さんはもっと私に感謝するべきです!」


 それから夏希の一方的な愚痴を聞かされ、解放されたのはそこから30分程後の事であった。

 自由になった未知瑠は軽い目眩を覚えながらも幻魔の部屋へと向かう。

 扉の前に到着し、ノックをしようとドアに手をかけようとすると中から反応が返ってくる。


「入れ」

「……失礼します」


 中に入ると幻魔はいつものソファーで報告を待っているようだ。


「報告と助言を受けたく参りました」

「うむ、まずは報告から聞こう」


 幻魔の言葉を聞き、昨日報告と敵の特徴を伝え助言を乞う。


「妖気を消す物の助言などないが、しいて言うならこちらも霊気を出さないで近づけばいい」


 無茶な事を言われて焦る未知瑠。


「霊気を出さないと身体強化も霊装具現化も出来ませんよ」

「そんな事はわかってるわい、霊装具現化するのは本命が目の前に現れるまでまつと言う事じゃよ」

「しかし、霊気を使わないと人間である私達は妖怪との戦いでかなり不利です」

「対魔師で達人と呼ばれる者は霊気を使わなくてもある程度の自衛が出来るものよな、この際じゃから今回で多少なり学ぶとよい」


 幻魔は新しく戦闘スタイルを作れと言うが、未知瑠はそんな簡単に言われても困るといった感情を隠し切れないでいた。


「それと妖怪の心辺りとしては覚と言う可能性が考えられるじゃろう」


 覚は臆病者だが奇襲、暗殺、妖気霊気探知等が得意であり臆病者だからこその戦い方なのだろう。


「成る程、過去に戦った事はないのですがそう強くない相手と言う事はわかりました」


 対魔教会から貰った過去の妖怪資料内容を思い出しながら、未知瑠は幻魔に御礼を言い部屋を出て行った。

 今日やろうと思っていた事を一通り終わらせた未知瑠は幻魔から受けた助言をどうするか考えていた。


「霊気を使わない戦い方ですか……」


 そう考えていたが直ぐに身につくとは思っていない為、取り敢えずどうするか明日まで保留しようと考えが纏まった。

 考えが纏まったからか自分も今日は息抜きしようと思い、町に繰り出していく。


(そういえば、暁良の事は何も聞かれなかったな、まぁ夏希ちゃんがあれだけ騒いでたし倒れたのはわかってるか)


 そんな事を思っていたが、すぐにこの後どう息抜きをするかに思考を変えた。


 その頃、暁良何をしていたかと言うと……。


「スー……」


 瞑想をしていた、何故瞑想していたかと言うと、片車輪との戦闘で使った霊気の回復が遅いと感じた為である。

 完全に脱力をして、体内で霊気を循環させていき、霊気の通り道を作っていくのである。

 これは霊気の回復を行う作業であると共に霊気量を増やす訓練みたいな物だ。


「……さて、大分疲れも取れたし霊気も戻ってきたな」


 明日は問題無いだろうと思っている。


(昨日みたいな状況下だと霊気を使わない戦い方も覚えなきゃいけないか?)


 暁良は助言を受けた未知瑠同様にそんな事を考えているのであった。

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