十一幕
橋姫との約束をした日から三日立ち、今日は退院の日だ。
暁良は病院から出て玄関に向かうと、遠目にだが玄関の入り口では二人の女が火花を散らしていた。
「貴様はなんでここにいる!」
「何処にいても貴方に関係あるのかな?」
二人の内一人は未知瑠であり、もう一人は先日命のやり取りをした橋姫がいる。
見た目だけなら大衆の目を惹くほどの二人だが正直関わりたくない為スルーしようとするが。
「ねぇ、何で無視して行こうとしてるの?」
橋姫に早速見つかったと言う事は未知瑠にも当然気づかれる。
「なっ、何で声をかけてくれないんだ!」
それはあの様な状況、誰もが逃げたくなる。
逃げられないと悟った暁良が取った行動は。
「あ、二人共きてたの?もしかして迎えに来てくれたって奴?」
シラを切るのであった。
「そだよー、あの女から聞いたのだけどスマホ買いに行くんでしょ?」
橋姫が未知瑠を指刺し聞いてきた。
スマホが壊れて外部との連絡手段が無かった暁良には当然初耳である。
「いぁ、初耳なんだが?」
その言葉を聞いた橋姫はニヤァっと気持ち悪い笑みを浮かべて未知瑠に詰め寄る。
「ねぇねぇ、さっき暁良と約束でスマホを見に行くとか言ってたよね?ねぇ?」
未知瑠を煽る態度と言い方であった。
「ちがっ、まだ予定の段階だと言ったはずだ!」
「へぇ〜、その割には私を追い返そうと必死だったじゃん」
「それはそうでしょ!私達は貴方に殺されかけてるのよ!」
(そりゃそうだ)
言ってる事が正論だと思う暁良である。
これ以上放置すると、未知瑠が橋姫に攻撃を仕掛けかねないので、橋姫との先日のやり取りを近くのファミレスに入り説明した。
「そう、そんな事があったのね…….」
話を聞いた未知瑠は取り敢えずは納得した。
「橋姫ももう人間は殺さないって誓ってるしな」
「約束したからね〜」
橋姫はストローの入れ物に水を垂らす遊びをしながら、興味なさそうに返事する。
「私から聞きたいことがあるのだけれどいいかしら?」
未知瑠が橋姫の方を見て問いかけた。
「私達が最初に山に入った日あの場所にいたのかしら?」
「いたよ〜何かやる気満々で来てたね〜」
「何で急に妖気を消したの?そもそも最初に感じた妖気は貴方と戦った時よりはるかに弱かったわ」
「妖気を消した理由は、暁良達が何をしてるのか見る為、妖気を消して近くで見てたのよ?」
あの日近くにいたと聞いて、よく生きて帰ってこれたなと思う二人。
「そして妖気を抑えてた理由は……逆に聞くけど、貴方は普段から霊気全開垂れ流しで町をあるくの?」
「成る程、納得出来たわありがとう」
未知瑠の疑問は解消されたらしい。
「それじゃ暁良、遅くなったけどこれから携帯を買いに行かないかしら?お互いあの戦いで壊れてしまったからね」
橋姫にジト目を送りつつ暁良を誘う未知瑠。
そんな視線を受けても気にしない橋姫。
その姿を見て軽く溜息を吐いた暁良であった。
「んじゃ携帯ショップ行くか!」
「そうしましょう」「レッツゴー!」
三人はファミレスから出て町の携帯ショップに向かった。
携帯ショップに着くと三人は店内で散っていった。
「んー、携帯なんて通話とメールが出来れば何でもいいんだがな……」
そんな風に溢すと何処かに行ってた橋姫はカタログを手に持ち、色々な機能の説明をしてくれた。
(こいつ現代人の俺より現代人だな……)
どんどん妖怪のイメージが変わって行くのであった。
あの後、未知瑠とも合流してから橋姫のオススメの最新機種を暁良と未知瑠は購入した。
何故か橋姫も同じ機種に変えていたから理由を聞いてみると。
「二人より型が古いとかなんかヤダ」
何処までも現代っ子な鬼だった。
携帯ショップから出ると時刻午後四時過ぎである。
本来なら逢魔時だ!と言って刀片手に走り回る時間だが、今日は休みだ。
「ちょっと早いけど晩飯食いに行くか?」
そう尋ねると二人は元気よく。
「いきましょう」「行く〜〜!」
この後、暁良はさっさと帰れば良かったと後悔するのである。
何故かと言うと、どの店に入ろうかと二人に聞いたら。
「三人だしおつまみ食べながら喋れる居酒屋なんてどうかしら?」
未知瑠の提案に対して。
「そんな所よりオシャレなフレンチレストランのがいいよ!」
橋姫は映えを意識する鬼であった。
「暁良は居酒屋のがいいわよね?」「フレンチだよね!」
そんな二人に対して面倒になった暁良は。
「牛丼屋美味いしそこでいいよ!」
二人に殴られた。
その後、結局居酒屋に決まり、次に三人で来る時はフレンチな店って事で決まった。
勿論、牛丼屋は却下されたのである。
「「「かんぱいーー!」」」
三人で乾杯してビールを一気に呷る。
お通しもおつまみもアルコールによく合う物が出てきた。
暫く下らない雑談をして、お酒がある程度回って来た時、唐突に未知瑠が橋姫に質問する。
「そういえら、あの山貴方がいないのり妖怪が全く湧かなくなったらよ?橋の仕業?」
「鏑木はお酒そんなに強くないのね……それに昼間に纏めて質問しなさいよ」
「らって、一々どれがどれ、これがこれとか覚えてないらよ!うと思いらしてから聴いてるのらから」
暁良は黙ってその後景を見つつ、未知瑠はこんなにお酒に弱かったのかと下らない事を考えていた。
「そうね、答えから言うと私の仕業よ?」
「何をしたんだ?」
未知瑠の代わりに聞いた。
「普通に、あの周辺の妖怪達に笑顔で私の縄張りで好き勝手したら殺すね♩って言っただけだよ〜」
(こわっ!)
答えが聞けて満足か?的に未知瑠に視線を向けると熟睡していた。
未知瑠がダウンした為、未知瑠をタクシーに突っ込んでから解散する言葉となる。
別れ際に、橋姫は空を見上げ暁良にこう言ってきた。
「なんか久しぶりに美味しいお酒が飲めたよ!また来ようね!」
月光に照らされた金髪はとても美しく、血で作られた様な瞳は少し潤んでいるその笑顔は人間のそれと何も変わらなかった……。
「……、そうだな、また来よう」
次はフレンチを予約してやろうと考えていた。
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