二十六幕
「お前ラぁァぁーー!!」
二本の角を頭に生やし、激昂している茨城童子は三鬼に走り寄る。
「おやおや!これはこれは副首領じゃないですか!」
「カカカ、まさか副首領殿がこんな所におるとは奇遇ですな!」
「お久しぶりですね」
この三体の鬼は大江山四天王と呼ばれる酒呑童子と茨城童子の配下である。
喋った順番に虎熊童子、星熊童子、金熊童子と言われている。
本来なら再開を祝う所だが、今の茨城童子には心の余裕が無かった。
「お前ラ、暁良に何ヲしタ!!」
走り寄っていった茨城童子は三鬼の前で止まり、配下達に問い詰めるが三鬼は「暁良?」と言うような反応をする。
「ソノ人間の事ダ!」
そう言うと三鬼は一斉に笑い出す。
「これはこれは!首領殿の新しい器ですよ!あれだけ近くにいて御存知ない筈ないでしょ!」
虎熊童子は愉快そうに茨城童子を見て嗤う。
「カカカ、それともその男に恋慕の情でも抱いてたのですかな?」
星熊童子は愉快そうに茨城童子を見て嗤う。
「まぁ、副首領殿も雌だったって事でしょう」
金熊童子は愉快そうに茨城童子を見て嗤う。
三鬼は暁良と茨城童子の関係を知っていると茨城童子は理解した。
だが、茨城童子にはそんな事は知った事ではない。
「ワタシはソノ男に何ヲしタと聞イている」
早く答えを知らないと頭がどうにかなる。
茨城童子は今、とても不安定だ。
「これはこれは、反魂の術です、まだ生きてますよそれ」
それ、とは暁良の事を言ってるのだろうが、暁良がまだ生きてる事にホッとする茨城童子。
「ですがですが、それは生きてるだけですよ数日中に首領として復活を果たしますが!」
そう言いながら位牌をを見せてくる。
茨城童子は見せられた位牌を見た時に気づいた。
あの位牌には魂抜きで、取った暁良の魂があると。
そして暁良の体の中には酒呑童子の魂を感じた。
「何故何故、首領の復活ですよ?真っ先に貴方が手を貸してくれると思ったのですが!」
わかっているのに茨城童子の顔を見て嗤う。
「関係なイ、暁良ヲもどせ」
「「「お断りしまっす!」」」
そう言って三鬼はギャハハと相手を馬鹿にした不快な笑い方して茨城童子を攻撃してきた。
「ガァァァァ!」
咆哮を上げる茨城童子に三鬼は未だに不快な笑いを浮かべている。
茨城童子の剛拳が虎熊童子の腹にめり込む、致命傷と迄はいかないが、無事では済まない攻撃を食らった虎熊童子は、その拳は死んでも離さないといった感じで掴んだ。
腕にしがみついたまま、虎熊童子は噛み付いて来る。
「ッツ!!」
痛みに顔を顰めるがそうもしてられない。
虎熊童子に捕まれ自由に動けない右半身側に星熊童子が攻撃してくる。
自由に動けないが力技で躱す、しかし反動で、より不利な体勢になり、そこに金熊童子が攻撃を仕掛けた。
「がぁ!!」
完全に崩れた状態で金熊童子の攻撃をモロにお腹に受けてしまう。
茨城童子はお腹に強い痛みがあるが気にしてる余裕など無い。
腕にしがみ付いている虎熊童子を引き剥がそうとすると、星熊童子と金熊童子がヤラセないと攻撃をしてくる。
それに対応するとまた噛みつかれて腕に痛みが走る。
完全に不利な戦いだ。
一対一ならば確実に勝てる、一対二なら無傷とは行かないが勝てる、だが一対三なら?
それがこの結果である。
暫くそんな攻防を続けると茨城童子は負けた。
「おやおや、副首領もう終わりですか?」
「カカカ、こうなると思って常に三鬼でいて正解でしたな」
「そうですね」
茨城童子はダメージが大きく、まともに動けないでいた。
「お願い……します、暁良を返シて」
懇願するしか無かった、三鬼揃った状態では勝てないと悟り、角も消え、見た目通りの女の子の様にその姿は小さかった。
「成る程成る程、まだ言いますか」
「カカカ、いっそ殺して上げるのが優しさですかな?」
「しかし、首領が復活した時に副首領がいなかったら私たちは三鬼纏めて殺されますよ」
三鬼はどうするか話し合った結果。
「まぁまぁ、生かしてあげますよ」
「カカカ、首領のお気に入りだった事を幸運に思うのですな!」
「そうですね」
ギャハハと三鬼は嗤う
「さてさて、肉体も持っていきたい所ですが、ここまで大事にしてるのですから持って行こうとしたら死覚悟で来そうですね」
「カカカ、ならば今はいいですな!せいぜいその男を鑑賞して楽しむのですな!」
「そうですね」
そう言って三鬼は仮死状態の暁良と橋姫を置いて去っていった。
「うぅぅぁ……」
橋姫は泣いた、自分が負けた事にではなく、暁良を守れなかった事に。
橋姫は落ち着いてから未知瑠と夏希を呼び出し、酒呑童子の魂の事も含めて全てを話す事にした。
未知瑠と夏希の伝手で幻魔に連絡をし、暁良の体を保護して貰ってから社長室に集まった。
「ごめんなさい」
橋姫はまず最初に頭を下げて謝った。
「そして説明をさせて下さい」
そう言って周りを見回す。
そこには幻魔、未知瑠、夏希、大河がいた。
そして橋姫は今日あった事を話した。
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