二十四幕

 どうしてこうなった?




 暁良は遊園地に来ていた、隣には橋姫がスティックキャンディを美味しそうに舐めている。


 今朝起きると橋姫から「(埋め合わせそろそろして!)」とメールが来たから、何すれば良い?と聞くと、遊園地行きたいとか言うから連れてきた、と言うよりかは拉致られた。


 暁良は今日は全力で休むつもりでいたのだったが、埋め合わせは必ずすると約束してる以上しょうがないと溜息を吐いて自分を納得させる。

 溜息を聞いた橋姫は「ごめんね?やっぱり別の日にする?」と言ってきた為「すまん、俺が悪い」と軽く笑った後全力で遊ぶ事にした。


「ねぇ!あれに乗ってみたい!」


 と指を刺した先には、メルヘンな乗り物メリーゴーランドだった。


「まじかー」

「乗るのいや?」


 可愛く上目遣いに言われた暁良は、(こいつわかっててやってるのか?)と思った。


「いやいいよ、今日はトコトン付き合うぜ」

「やったー!」


 二人は一日パスを受付の人に見せて乗り込んだ。

 乗り込んだ後、開始のベルが鳴り、メルヘンな乗り物に合うメルヘンなBGMが鳴り出した。


「私、前からこういうの乗ってみたかったんだよね〜」

「乗ればいいじゃねーか」


 そう言うと、哀しそうな笑顔で「独りじゃつまらないよ」と笑っていた。


「あぁ、悪いそうだったな」


(今日は余計な事ばっか言ってるな、俺……)


 心の中で被りを振った後。


「それじゃ次からも行きたい所があったら言えよ?付き合ってやるから」


 そう言うと夏希に負けない元気な笑顔で暁良に告げた。


「うん!約束だよ!」


 また約束が増えたなと暁良は軽く笑った。

 メリーゴーランドが終わった後はジェットコースターに並ぶ。


「これって相当早いんだよね?」

「まぁ、お前のが余裕で速いだろうけどな」


 そう言うと。


 「自分で走るのとはきっと違うよ〜」と言うから「そうだな」と笑った。

 そんなこんな待っていると暁良達に順番が回ってきた。


「たのしみ〜」

「ビビるなよ?」


 そう言って乗り込んで行く二人。

 発射のベルが鳴りコースターが動き出す。


「この坂を登っていく感じ堪らないね!」


 端姫がそう言う。


「俺も初めて乗るが中々来るものがあるな」


 そんなやり取りをしつつ、コースターが頂上に登り、機体が下に傾きそのまま速度を上げて降っていく。


 「キャァァァーーー!」


 と嬉しそうに叫ぶ橋姫。


 「ギャァァァーーー!」


 と苦しそうに叫ぶ暁良。


 コースターは何度も回転、あるいは上昇下降を繰り返して行き、ゴールへと着いた。


「楽しかったー!やっぱり自分で走るのとは全然違うね?」

「そうだな、自分で走るのとは違うな……」


 暁良は蒼白な顔で同意した。






「もう、そんなに怖かったの?」

「べ、別に怖くは無かったな!ちょっと想定外だっただけだ!」


 そう言ってベンチで少し休憩してると「ちょっと待ってて〜」と言って橋姫は何処かに行ってしまう。


(トイレかな?)


 失礼な事を考え、暫くすると両手に飲み物を持った橋姫が「お待たせ〜」と言って、飲み物を差し出してきた。


「あ、すまない、ありがとう」

「いいよ〜私に付き合わせちゃってるしね」


 飲み物を渡して橋姫は暁良の横に腰掛ける。


「少し休憩したら、次お化け屋敷行こうよ」

「それは俺やお前はビビらないだろ」

「うん、だけどどんなふうに妖怪とかを再現してるか気にならない?」

「まぁ、そうだな、それじゃ次はそれにするか」


 その後、お化け屋敷に行った二人はゲンナリした表情で出てきた。


「本物より見た目怖くね?」

「そうだね……」


 そう言った二人は少し遠い目をしていた。

 

 その後、暁良はトイレに行ってくると言って離れて行く。

 暫くすると暁良は返って来た為、今度はゴーカートに乗ろうとなったので向かう。






 その後も色んな乗り物に乗ってると、気がついたら夕方になっていたので、そろそろ出るかと橋姫に伝えると。


「最後あれに乗ろう?」


 そう言って指差したのは観覧車だった。


「それじゃ行くか」


 観覧車は結構並んでおり、乗れる頃には大分暗くなっていた。


 観覧車に乗り込んだ二人は窓の外を眺めてると「綺麗だね」と声が聞こえたから「そうだな……」と返す。


 その後、二人は無言で夜景を眺めている、無言ではあったがとても心地良い時間だった。







 遊園地の外に出ると完全に夜となっていた為、橋姫は「このあとどうする?」と言ってきたので「ちょっと行きたい所がある」そう言って橋姫と一緒に目的地に向かった。


 着いた場所はインターネットで結構評判なフレンチな店だった。


「えぇ!どうしたの?こんな所いきなり行って入れないよ?」


 やたらと詳しい鬼ガールである。


 そんな橋姫の言葉は無視して受付の人に話しをする。


「すいません、さっき電話で予約した源暁良ですけど、もう入っても大丈夫てすか?」

「源暁良様ですね、準備は出来ております、お連れのお客様もこちらにどうぞ」


 そう言って二人は席に案内された。


 案内されてる間も横では「ふぇ〜」とか言っていた。


 席に着き、電話で予約したコースをお願いする。


「よくこんな所にいきなり入れたね?」

「遊園地でトイレ行った時に予約した」

「えぇ〜こんな所、当日予約とか無理でしょ」

「まじ詳しいなお前!まぁ、ダメですか?って聞いたら、本当に偶々コースの予約していた客が来れなくなって、食材毎どうしようかと思ってた所らしいぜ」


 運がよかっただけの話しである。


「まぁ夏希じゃないがあれだ、サプライズだ」

「ありがとう!嬉しいよ!」


 その後コース料理が運ばれて来るが、マナーがわからない暁良は橋姫からレクチャーを受けており、橋姫に「西洋被れが!」って言ったら良い笑顔でチョップされていた。

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