第31話 おおう。

 スマホを見て気づいたのだが、亜美が余計なお世話をおいていっていた。


『今日から学校には唯音先輩と行くべし!』


 まあおそらく亜美は悠真と行きたいだけなんだろうけど…。


 なんかちょっと前まで亜美はそんなに悠真を意識してたことはなかったはず。


 昨日のデートでなんかあったのか?


 まあ詮索するのは野暮だし聞かないけれど。


 亜美から言われなくても唯音と行きたかったので唯音にお伺いを立てる。


 チャットのほうだと唯音は寝てて絶対に気付かないから電話をする。


 長い長いコールの後やっと出た。


『は~い。おはよ~。なぁに~?』


 まだ寝ぼけてるのかいつもよりもふわふわした声だ。


『おはよう唯音。あのさ、今日一緒に学校行かない?』


『一緒に学校……?……。行くっ!絶対行く!』


『おおう。急に元気になったな。』


 なんかすごい元気になった。


『ちょっと待ってて!急いで準備してピンポンするから!』


 いつものぽわぽわはいずこに?って感じですごい速さでまくし立てて切られた。


 大体準備終わってたので、動画でも見ながらコーヒーを飲んで優雅に待つ。


 ピーンポーン。


 チャイムが鳴った。


「はいはーい。ん?」


 ドアを開けるとそこには唯音がいたのだが…なんかいつもと雰囲気が違う。


 なんか少し色っぽいっていうか大人っぽいっていうか…。


「ゆ…唯音?」


 俺の問いかけに相手は答えずただ俺をじっと見るばかり。


(な…なんだ?)


「ふ~ん。ま、合格ね。」


「え…えっと?」


 だんだんわかってきた。


 たぶんこの人唯音の姉妹だ。


「あのーどちら様で?」


「ああ。ごめんごめん。初めまして遥眞君。唯音の姉の唯華です。」


「は…はあ。初めまして…。」


「最近さ~めっちゃ唯音が話してくる遥眞君って君だよね。」


「た…たぶん。」


「君のおかげだよ…。ありがとう…。」


「え?ど…どういたしまして?」


 なんか涙を流しながら抱き着いてきた。


「俺なんかしましたっけ?」


「もち!あなたは我らが機織家の救世主といっても過言ではないわ!」


「へ…へえ……。」


 なんか全く身に覚えがなくもしかして別の遥眞じゃって言おうとしたとき…。


「あっ!お姉ちゃん!姿が見えないと思ったら!遥眞に何してるの!」


 本物の唯音が来た。


「だって~家族になるか…もごもご。」


 何かを唯華さんが言おうとしてたが唯音がすごい勢いで口をふさいでいた。


「遥眞~。この人は気にしなくていいからね~。」


「お…おう……。」


 唯音に捕まって部屋に戻される唯華さん。


 すごい台風のような人だった。


「よし!じゃあ遥眞、学校行こ?」


「そうだな。唯音ってさ唯華さんと仲いいんだな。」


「ふふふ。うん~。私が苦しかった時ずっと支えてくれたから、お姉ちゃんのこと大好き。」


「それはいいことだ。」


 ファンキーな人だが、唯音にここまで言わせるとは相当に人格者なのかもしれない。


「しかも唯音と唯華さんって似てるね。」


「それよく言われる~。」


 それから俺は学校につくまで唯音と家族の話(父親抜き)で盛り上がった。


 やがて、放課後。


 一人寂しく家に帰ってくると…俺の部屋の前に仁王立ちした唯華さんの姿が…。


「あ…あの?」


「やあ。おかえりなさい遥眞君。」


「は…はあ。ただいまです。」


「実はちょっと遥眞君と話したいことがあってだね。」


「なんすか…?」


「ここじゃなんだから遥眞君の家入れてくれない?」


「まあいいですけど。」


 普通朝あったばかりの人を家にあげることなどそうそうないと思うが、なんか唯華さんに関しては大丈夫だろうという根拠のない考えが頭に浮かびあげてしまった。


「それで何の話ですか?」


「まずは…朝も言った通り機織家のものとして謝意を述べに来たの。あなたのおかげで唯音と機織家が救われた。ありがとう。」


「そんな大したことしてないですよ。」


「ついては、私か唯音のどちらかを遥眞君のお婿に出すこと。」


「は?」


「私たちは自分が言うのもなんだけど相当に可愛いと思うの。」


「あ、あの?」


「飽きたらポイしていいから、私たちのどちらかと結婚してください!」


「えっと?」


 まっっっっっったく話が見えない。


「なんなら私と唯音を二人同時に侍らせてもいいから。」


「何そのやばそうな単語の羅列。」


 冗談かと思ったがどうやら本気のようだ。


「幸い、あなたはかっこいいし、家事もできるし、優秀だしと非の打ち所がないから、うちのお母さんも乗り気でね。」


 機織家の人たちは頭のねじがぶっ飛んでるっぽい。


「あのですね…まず、そんなお婿に出すとか本人の意思確認してくださいよ!」


 まずそこだろう。


「私は全然いいし、唯音も遥眞君のこと好きだから何の問題もないよ。」


 あれ?なんか今強烈なパワーワードが聞こえた気が…。


「仮に結婚するとしてもポイとかしませんよ。」


「なら安心だね。」


「二人同時にはさすがに…。魅力的じゃないとは言いませんが。」


「別に私たちは気にしないけどね?」


 あれ?俺がおかしい?


 よくわからなくなってしまったが、この話し合いはまだ続きそうだ。

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