第8話 終わりの始まり?始まりの終わり?

 友達と買い物に来て昼ご飯を食べるためにカフェに入ったらなぜか天敵がいた。


 小説でもかけそうなタイトルである。


 現在店に客が俺たちくらいしかいないので、真夏は俺たちとおしゃべりしているがほかに客が来たらこいつは仕事のためにどっか行くだろう。


(早く客来てくれ…!)


 だが無情にも客は来ない。


(普段客多くて結構繁盛してたはずなのになんでこんな時に限っていないんだよ!)


 まだ顔も知らぬ客の皆さんをつい呪ってしまう。


「とりあえず、注文してもいいですか?」


 突然暁人が言い出した。


(そういえばまだ注文してなかった…。)


「あ!そうだねごめんごめん。ご注文はいかがなさいますか?」


 皆口々に注文していく。


「はるくんは?何にするの?」


 皆のことをぼーっと眺めていたら真夏につつかれた。


「あ、じゃあこの冷製パスタで…。」


「はいはーい。少しお待ちください!」


 そういって真夏は颯爽とキッチンの中に入っていく。


「なあなあ遥眞!真夏さんとどんな関係なの?」


 悠真がわくわくした表情で聞いてきた。


「言ったじゃん。幼馴染だって。」


「そこから生まれる恋とかは?」


「無理。」


「即答かよ…。だって真夏さんのあの顔どう見たって…。」


「悠真!それ以上言わないの!そういうのは本人たちが気付いてこそなんだから!」


「わ…わかった。でもよ~。」


「お姉ちゃんも気持ちはわかるけどね。」


 悠真が何か言いかけて千春にたしなめられている。


 が、またぼーっとしていた俺はこいつらが何言ってたのかよく聞こえなかった…。


「はいはーい。ご注文の冷製パスタ3つとハンバーグセット二つ、ピザ一つだよ~。」


 真夏が料理を運んできた。


 配り終えた彼女はそのあとさも当然のように隣に座ってきた。


「あのー真夏さん?あなた今労働時間中ですよね?なんでさらっと座ってるんですか?」


「久しぶりの再会だし~?」


(だめだこいつは…。)


 早々に真夏に見切りをつけた俺は期待を込めてキッチンで働いている店長を見る。


 いかにも面倒見のいい慕われそうな女性の店長、きっと愛の鞭で真夏こいつを叱ってくれるだろうと。


 当の店長こちらを見て白い歯を見せながらぐっと親指を立てている。


(いやなにもOKじゃないぞ!?)


 もうこの店に来たくなくなる俺であった。


 そんな攻防(?)を繰り広げているうちに真夏と悠真たちはなんとSINEを交換していた。


「いやいや、SINE交換って何があった?おい千春お前がいながらなんでこんな事態になっている?」


「えー?むふふ、内緒!」


「おい真夏。お前皆に何をした?」


「べっつにー。何かいるのは、はるくんのほうだしー?」


「おいお前。後で覚えてろよ?」


「はるくんが怖い~。」


(めっちゃイライラする…。)


 と、ここで新しいお客が入ってきた。


「おい真夏仕事行ってこいや。」


 真夏を仕事に行かせようとするもうきうき顔で颯爽と客の前に出て行ったのはキッチンにいたはずの店長であった。


(なんでやねん!)


 店長とお話ししてたお客が一瞬こっちを見たのはきっと気のせいだろう。


 食事の間かまってくる真夏をどうにかあしらいつつ食事を終え、この店を後にする。


「いやーここ楽しかったしおいしかったからもう一度来たいぜ!」


 悠真がそう口にするとみんなが口々に同意をしていた。


(すまん悠真…。その時は俺ついていけない…。)


 オリエンテーション旅行の準備も終わり女性陣が服も見たいというからついていきと、楽しく遊んでいると時間が過ぎるのがとても早く感じてしまう。


「よーし!じゃあ今日はこれで解散するか!じゃーな!」


「お疲れ様ー!」


「おつかれさま。じゃあちぃ帰ろうか。」


「皆さんじゃあねー。」


「今日は楽しかったよ~また明日学校で~。」


「おうバイバイ。」


 一人、二人と去っていきやがて俺と唯音のみ残った。


「じゃあ遥眞かえろ~。」


「お、おう。どうしたそんなにご機嫌で?」


「いや~別に~。」


 そうして俺らは帰途についた。


「遥眞~。」


「ん?なんだ?」


「なんでもない~。」


「なんやねん。」


 バカップルのような受け答えをしながら電車に揺られる。


 道中唯音にしては珍しく無口でいるのでこちらとしてもどう話しかければいいのかわからないまま家についてしまった。


「じゃあ、おやすみ唯音。また明日ね。」


「うん…。遥眞は…。」


「うん?」


「遥眞はいなくならないよね…?」


 その言葉にどれほどの意味が込められていたのだろう。


 少し寂しさのいろを帯びた瞳は上目遣いをしている。


 俺に重くのしかかるその言葉に俺はどう返答すればいいのか。



 もちろん。いなくなるわけないだろ。



 そういえればどれだけ楽だっただろうか。


「いなくなるなんて、そんなこと起こりえないでしょ。」


 その万感の思いが込められた質問に対し、俺は茶化し気味の返答しかできなかった。


「そう…。」


 顔を伏せた唯音の表情は読み取れない。


「じゃあね遥眞。おやすみなさい。」


 そういって唯音は部屋に入ってしまった。


 その儚くて触れれば壊れてしまいそうな後ろ姿に俺は手を伸ばして呟くことしかできなかった。


「唯音……。」

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