第34話 いやそうはならんだろ!

「ふんふんふ~ん。」


 隣を見ると、とてもご機嫌で鼻歌を歌っている唯音。


 普通に歌がうまい。


「唯音ご機嫌だな…。」


 対して俺は緊張からか若干不機嫌に見えなくもない。


「だって~遥眞がうちに来るんだもん~。」


 そう。


 そうなのだ。


 なんか唯音のお母さんに招待されたのだ。


 いや本当になんでこんなことになったのかはわからないが、唯音のお母さんが唯音と同じくらいぽわぽわしてるとすると何の不思議もない。


 なんか結構遠いらしく2時間くらいかかるらしい。


「それにしても唯音今日の服も似合ってるね。」


「ありがと!遥眞も似合ってるね~!」


 なんだか唯音は本当に謎だ。


 服褒めても余裕のある時とすごい照れてる時がある。


 その差がわからん。


 電車に揺られること、およそ1時間半。


 降りてから、風情のある田んぼの中を突っ切ること30分。


「ここだよ~。」


 まだ新築だとわかる綺麗な一軒家があった。


「ただいま~。」


「お邪魔します。」


「唯音と遥眞君。おかえり、そしていらっしゃい。」


 唯華さんが出迎えてくれた。


「これつまらないものですが…。」


 お土産を渡していると奥からすごい美人さんが…。


「はじめまして~。唯音と唯華がお世話になってます。母親の千香です。」


「あっ。初めまして…。唯音と親しくさせてもらってる?西彦寺遥眞と申します。」


 これでいいのかわからないが、すごい緊張してあまりものを考えられない。


「ささどうぞ遥眞君。」


 千香さんにうながされて中に入る。


 奥からはご飯のいい匂いが…。


「本日はお招きいただきありがとうございます。」


「いえいえ。こちらこそお呼び立てしてごめんなさいね。唯華と唯音がなついてる遥眞君がどのような子か見てみたかったので…。」


「あ…あはは…。」


 なついてるって…。


 しかも唯華さんなんて2日しか会ったことないのに…。


「さあ!お昼ご飯にしましょう!遥眞君の分も作ったのよ!」


「そんな…わざわざありがとうございます…。」


「いつか家族になるかもしれないんだからこのくらいは当然よ!」


「あ…あはは…。」


 どうやらお母さんも……おもしろい人のようだ。


 でも千香さんが作ってくれたご飯はどれもおふくろの味って感じでしみるようにおいしかった。



 …。


 ……。


 なんだこの状況は…。


 ご飯を食べ終わったはいいが、なぜか千香さんに閉じ込められた。


 唯音と唯華さんと一緒に。


 なんでやねん。


「ね…ねえ遥眞…。」


「ん?」


「お母さんがこれをちゃんと使って来るまで出てくるなって…。」


 そう言って唯音が見せてきたものは…あろうことか…。


 なんて桃色の展開ではなく、今巷で大人気のゲームだった。


「ならやるか…。」


 このゲームは大体3人で組んで銃とか使いながら生き残る、FPSのあれだ。


「とりあえずチャンピオンになるまでやってこいってさ…。」


「いや…無理だろ…。俺こういうやつ苦手なんだけど…。」


 結論、夜までかかった。


 すでにあたりは暗くなっていた。


「はあじゃあ帰ります…。めんど…。」


「そんな遥眞君のために用意しました!」


「ん?」


 帰ろうとしたところで唯華さんと千香さんに捕まった。


「遥眞君用のお泊りセット!」


「いやだからなんで!?」


「明日日曜で学校無いでしょ?暗くなって危ないし泊っていきなよ~。」


「そうそうそっちのほうが唯音も喜ぶし!」


「いや…あのさすがにそこまでは…。」


「いいからいいから。将来の予行演習ってことで!ね!」


 30分に及ぶ押し問答の末なんか押し切られてしまった。


「いや、何でこうなった…。」


 泊りまではまだ良しとしよう。


 なんで唯音と唯華さんと同じ部屋なんだよ…。


 せめてさあ、こうさぁ、分けたりとかしないの?


 しかも唯華さんと千香さんは無類のゲーム好きらしく、千香さんが3人の部屋の押し入ってきてみんなで夜通しゲームをした。


 すごい気も体も目も疲れた。


 まぁ次の日も休みだったからよかったけど…。


 昨日を一言でまとめたらこうだ。


「いやそうはならんだろ!」

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