第40話 体育祭③(唯音side)
待ちに待ったお昼ご飯の時間だ。
今日のお弁当はは遥眞が作ってきてくれたおっきい重箱。
ふたを開けてみると色鮮やかでとてもおいしそうだった。
「ほら唯音箸。」
「ありがとう~。」
やっぱり遥眞は何でもできるしかっこいいな~。
でも…。
私は相当アピってるはずなのにあんまり遥眞の心が動く様子がない。
照れたりはしてるけど…。
それは男子としては普通のことなのでアピれてる根拠にはならない。
だんだんと、異性として意識されてないんじゃ?なんて心配になってきた。
さっきだって与野さんと二人でいたし……。
だから、踏み込んでもいいのかわからなくて怖くてただ無為に時を過ごしている。
でも、それだけでは何も得られない。
わかってる。
すごいよくわかってるけど…。
でも、関係が壊れたらなんて頭の片隅に浮かんで結局何もできない。
その繰り返し。
みんな、どうやって告白する勇気を得るんだろう?
もし私がもう少し家事ができて、もう少し自分に自信が持てたら今は変わっていたのだろうか?
そんなこと誰もわからない。
やっぱり遥眞を諦めることはできない。
何も変わらない今を変えるためにもう少し、あと少しだけ進もう。
「ねぇ遥眞。夏休みに花火大会あるから一緒に行かない〜?」
なるべく重く思われないようにでも、本気だと解釈できる余地を残すぐらいの軽さで提案する。
「おう。いいぞ。」
やっぱり、脈アリって思ってもいいよね?
即答してくれた嬉しさに遥眞のお弁当の味がわからなくなりながらも頷いた。
もったいない…。
午後のラスト、代表者リレーで遥眞はアンカーを走る。
ぜひともカメラに収めなきゃ!
遥眞のことを考えると他のことが考えられなくなり、何してたかも思い出せずに代表者リレーの時間がやってきた。
遥眞はアンカーなのでまだでてこない。
けど、1番よく見える場所をとった。
やっぱり代表者が出てくるだけあってみんなはやい。
私たちの組、青組は四つの組の中でも最下位だ。
遥眞は…あ、いた!退屈そうに悠真と話していた。
やっと遥眞達アンカーの番になった。
悠真とか暁人が頑張ってくれたおかげで現在の順位は3位。
とても接戦だ。
コースに遥眞が出てきた。
カメラを構えた私は遥眞にロックオンする。
遥眞は昔から何でもできてしまう人だった。
勉強、運動、家事その他もろもろ……。
殊、運動に関しては天賦の才としか思えないほどの才能とそれにかまけないものすごい量の努力で有名になったくらいだ。
なぜ、高校でやめてしまったのかは怖くて聞けなかったけど…。
突然黄色い声援やブーイングが飛ぶ。
何事かとグラウンドを見てみると…遥眞が1位に躍り出たところだった。
はっ、私としたことが…。
遥眞のかっこいい瞬間を見逃すなんて…。
結局遥眞は1位でゴールした。
やっぱり遥眞はかっこいい。
でも、遥眞が輝けば輝くほど…なにも為せないなにも踏み出せない私は自分で自分が嫌になる。
いつから私はこんなにも小心者になったのだろう。
今のこの幸せで心地よい環境が壊れたらと思うと…その未来が私の心に縛りついて動けない。
「ただいまー。唯音見てた?俺と暁人と遥眞のおかげっしょ!」
いつも元気な悠真が帰ってきた。
聞くところによると悠真は亜美ちゃんと付き合い始めたらしい。
「ねえ悠真。」
「ん?どした?」
「どうやって告白したの?亜美ちゃんに。」
「えぇ。突然だな…。普通に好きです付き合ってくださいって。」
「その…怖くなかったの?」
「ん?怖かったけど…でもなんかできちゃった。なんでそんなこと聞くの?あ!もしかして!」
「も…もしかして?」
「遥眞に告るのか!?」
「ふぇ?な…何で知ってるの…?」
「え?そりゃバレバレだったから…。まさか気づかれてないとでも思ってた?」
「そ…そんなに!?恥ずかしい…。」
そんなにバレバレだったなんて…。
恥ずかしすぎて穴がなくても掘って入りたい…。
「まぁ遥眞も唯音のこと憎からず思っているっぽいから…普通に好きって言えば多分付き合えるぞ?」
「そうなの!?」
遥眞が憎からず思ってくれているってところでもう世界の全てが薔薇色に見えてきた。
なんて、なんて素敵な日なんだろう。
よく見たら太陽が祝福してくれてる様に見えてきた。
「あっ!遥眞来たぜ!デートにでも誘ってそこで告ればいいんだ!」
「もう誘ったよデート!」
「あっそうなん?ならそこで告るんだ!十中八九成功する。」
「わかった!ありがとう!」
「ん?二人してなんの話ししてるの?」
「ふふ〜ん秘密〜!」
悠真、本当にありがとう!
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