第19話 唯音とお出かけ②

 今見てきた映画『来い、故意の濃い恋』はタイトルにもある通りとても濃い内容だった。


 ただ、現実にはこんなドラマチックな恋愛そうそうない。


 まあだからこそ映画や漫画は人気が出るんだが…。


 俺は残りのポップコーンを食べながらそう考えていた。


(それにしても醤油バター味のポップコーンおいしいなあ。)


「ねえねえ遥眞~。映画どうだった~?」


「ん?やっぱり主人公のやつ一途ですげえなあと思った。」


「実はね…。」


 何かを言いかけた唯音であったが、とある台風の襲来によりかき消された。


「お兄ちゃああああん!なんでここにいるの!?」


 そう、亜美である。


「えーとなんでここにいるんだ?」


「今日友達と映画見に来てて!そだ!ねえねえ涼ちゃん!夕日ちゃん!この人がわたしのお兄ちゃんの西彦寺遥眞っていうんだー!」


「そうなのですか…。初めまして。亜美と友達の敷島涼と申します。今後ともよろしくお願いします。」


「高橋夕日です!初めまして。」


「どうも。西彦寺遥眞です。妹がお世話になっております。」


「何その敬語ー。まったくお兄ちゃんは…そういえば今日何でここにいるの?」


「え?唯音とお出かけしてるからほら。」


「どうも~。亜美ちゃん久しぶりだね~。涼ちゃんも夕日ちゃんもよろしくね~。機織唯音っていうんだ~。」


「唯音先輩だあ!お久しぶりです!やっぱりいつみても唯音先輩可愛い!ん?お兄ちゃんと唯音先輩二人だけ?」


「そうだぞ。」


「え!?デート!?お兄ちゃんって唯音先輩と付きあ…。」


「…ってないぞ。」


「あ、そうなの?まあデートの邪魔しちゃ悪いしそろそろ行くね!楽しんでねー!」


 亜美がお辞儀する涼と夕日を引き連れて消えていく。


「いやぁこんなとこで会うとは思わなかった。それで、唯音さっき何言おうとしてたんだ?」


「じ…実はこの映画私の小説が映画化したもので…。」


「あ!そうなん!?すごい!おめでとう!」


「えへへ…ありがと~。じゃあ時間もいい感じだしお昼ご飯食べに行こう~!」


 今日は朝から唯音の機嫌がいいようで何よりである。


 お昼ご飯に選んだカフェレストランは内装がすごい凝っててとてもおしゃれであった。


 俺はキッシュプレート、唯音はサンドイッチセットを頼んだ。


 お互い一口だけ交換したが、どっちもおいしい料理であった。


 しかも盛り付けがめっちゃおしゃれですごい。


 お昼ご飯ここに来れて本当に良かったと思う。


 ご飯を食べた後は唯音のお買い物、主に洋服、に付き合いつつ俺もちょこちょこ気に入ったやつがあれば買うという計画になった。


 ちょうど夏物の服が欲しかったし、いいタイミングなので買ってしまおう。


 例のショッピングモールに到着、中に入るとまだ春だというのに暑い外とは違いクーラーが効いていてとても涼しい。


「ねえねえ遥眞~こっちとこっちどっちがいいかな~?」


 唯音が早速とばかりに入った服屋さんで白いブラウスと淡いピンクのブラウスを両手にとり聞いてきた。


「ん?どっちも似合うと思うけど…しいて言うなら俺は白のほうが好きかな?」


「わかった~。」


 流石は大人気小説家、値段を一切気にせずレジに直行。


 少し唯音の今後が心配になってきた。


「よーし次行こう~!」


 唯音についていくと…そこは女性の下着屋だった…。


 やっぱり見慣れてるといっても下着を売ってるところに入り込むのはさすがに気まずいので店先で待つことにした。


 周りを見渡してると…なんと40mほど前方に暁人と千春がいた。


 幸い(?)気づかれなかったのでやり過ごすが、何とも言えない思いが…。


(あいつら部活どうしたんだよ。最近外に出てき過ぎじゃね?まあいいけど…。)


「お待たせ~。どうしたの?」


「いや…千春と暁人がいたってだけ。」


「あ、そうなの~?あえるかな~?」


 途中男物の服屋に行かせてもらったりしつつ唯音の爆買いとまではいかぬとも大量買いに付き合ったり荷物持ちしたりしているうちに時は過ぎていく。


「唯音今日の夜飯作ろうか…?」

 

 一応聞いてみる。


 答えはわかりきってるが…。


「え?作ってくれるの~?ならお願いしたい~!」


 やはり唯音は可愛い。


「何か食べたいものある?今ならまだスーパーに行けるからなんでも行けるよ。」


「えーとね…生姜焼き食べたい~!」


「おーけー。じゃあスーパーに寄ってくぞ。」


「はーい!」


 今にも飛んで行っちゃいそうなほどご機嫌な唯音を連れてスーパーに行く。


 朝からずっと視線を感じていたが、今ではもう気にならない。  


 それほどまでに唯音とのお出かけは楽しかった。


 だが、天災は忘れたころにやってくるのだ。


 機嫌よく唯音の家のドアを開ける俺。


 目に映ったのは…うずたかく積まれる物の山だ。


「う…うわぁぁぁ…。またかよ…。こないだ掃除したばっかじゃん(n回目)…。」


「え…えへ…。」


「こんなに物であふれかえってるのにまた新しい洋服買ったのかよ…。」


 人は必ずどこかで平等になるように作られてるんだなと、改めて思った。

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