第21話 父親とは…?
テストが終わった瞬間というのは、そう、魔王を倒す勇者のように世界に希望を与えるといっても過言ではない。
「よっしゃー!テスト終わったぜー!なあなあ遥眞ゲームしない?」
「しない。」
ここにも希望に満ち溢れたやつがまた一人。
「テスト終わったからって元気だな…。よかったのか?」
「おうよ!いつもよりなんかいい感じだった!」
「さいですか…。」
元気なのはいいことだ。
「俺はこれから予定あるからゲームできない。」
「マジかー。まっしょうがないな。じゃまた今度やろうぜ!」
本当は予定なんて唯音の部屋の掃除ぐらいしかなかったがちょっとあの部屋を相手にした後にゲームできるかって言われると自信がない。
重い足を引きずり、魔王(ゴミの山)が住んでる決戦の地(唯音の部屋)へと進む。
「唯音~!掃除するぞ~。」
「よろしく~。」
おそらく奥の唯一綺麗な部屋で小説を書いてるだろう唯音の声が聞こえた。
今日も又長い戦いになりそうだ…。
とりあえず床に落ちてるものを種類別に分けて、服とかは全部かごに、紙類はまとめて、小物はとりあえず机の上に置く。
その後掃除機をかけつつ洗濯を回すのだが…。
やはり何回見てもちょっと下着が目に毒だ。
本当血もつながってない赤の他人に下着見られてもいいのだろうか。
強くそう思うが当の唯音は何も気にならないらしい。
何とか掃除洗濯をやっつけ、机の上に放置していた小物を片付け…時計を見ると夜の8時だった。
「終わったから帰るぞー!」
「うん~。ありがとう~。」
生存確認も過ぎ俺の部屋へと戻る。
だが…。
(あれ?鍵が開いてる…?亜美が来たのか…?いやなんか違う気がする。なんかすごい嫌な予感が…。)
いつも鍵を閉めていくので、閉め忘れってことはないと思うが…。
ドアを細ーく開けて中をうかがうと…スーツを着た見覚えのある女性が玄関で三つ指をついていた。
「
この人は曳地真央さん。
父親の秘書ですごく有能なのだが…父親に影響されたのかすごく冷徹でもある人だ。
「遥眞様。お邪魔しています。義則様がお呼びです。至急本邸のほうにお越しください。車は下に用意してあります。」
「は?やだよ。学生の間はこちらに干渉しないって約束だろう?」
「義則様の指令は何をしてもです。穏便に来ていただけなければ手荒なことをしてでも連れて行かせていただきます。」
こういう時本当に手荒に連れてかれるので…仕方なく荷物を置いた俺は曳地さんにこういった。
「じゃあ十分待って。待たないならこっちも何をしてでも本邸に行かないよ。」
「かしこまりました。十分だけお待ちしています。一応言っておきますが…逃げたりなどは努々お考え無きように。」
本当に嫌な予感しかしないので…とある準備をする。
今後こういうことがあるだろうなって準備しておいたものが今夜役に立ちそうだ。
本当に仕方なくエレベーターに乗り一階を目指す。
エレベーターが閉まる間際…走馬灯のように唯音の顔が頭をよぎった…。
黒塗りの高級車に揺られること早20分、俺は暁人の家が目じゃないほど大きい敷地を持つ、西彦寺本邸についた。
だが、暁人の家が持つなんというか人情?のような温かさは一切なく、ただ見栄を張るためだけに造られたような無機質さだけが感じられる。
俺はこの心を持つ人が作ったとは思えない魔境が本当に嫌いだ。
本邸の中で曳地さんについていく俺はそう思った。
「義則様、遥眞様を連れてまいりました。」
ただひたすら歩いていると心のこもってないことがよくわかる豪奢なだけの部屋に行きついた。
「入れ。」
中から感情を感じさせない声が響く。
「では、遥眞様どうぞ。後でお茶をお持ちします。」
曳地さんに促されるままこの部屋の中に入る。
「遥眞。よく来た。そこに座れ。」
まったくよく来たなんて思ってなさそうな声が響く。
(この人…わが父ながら本当に人なのか…?)
「お父様何の用でしょうか?」
「うむ。遥眞に結婚相手を見繕ったゆえに。この人と結婚しろ。」
そう言ってお父様は写真を見せてきた。
だが…本当にあり得ないことに結婚しろと命令してきた。
「なんで俺がお父様の指示に従って結婚しなきゃいけないんですか?」
「我が家のためだ。」
「我が家のため?はんっ。どうせ自分のためでしょう。自分の栄華のためなら息子を息子とも思わない。そういうことでしょう。」
「……もう一度言う。結婚しろ。」
「断ったら?」
「どうなるかわからないほど愚かじゃないだろう。」
人のことを物としてみているこの目に本当に虫唾が走る。
「ちなみに理由は何ですか?」
「言う必要性を感じない。」
「そうですか。なら断りまーす。じゃさよならー。」
「曳地こいつを拘束しろ。」
無理やり帰ろうとしたが…いつの間にかこの部屋にいた曳地さんに押さえつけられてしまった。
「申し訳ございません遥眞様義則様のご命令故。」
「申し訳ございませんと思うなら離せよ。引き返すのも今のうちだぞ。」
だが曳地さんは答えなかった。
「よくわかってないようだな遥眞。なぜ私が決めたことにお前の意志が介入できると思ってるんだ?」
「お言葉ですが、なぜただの父親ごときが人の結婚相手勝手に決められると思ってるんですか?」
「それはお前がわたしの息子だからだろう。」
この人は強がりでもなんでもなく本当にそう思っている。
この突然に勃発した夜の戦いはまだ続きそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます