第22話 どんでん返しってこのこと?
人の心を感じさせない機械的な部屋部屋の中には現在俺、曳地さん、お父様、この3人しかいない。
逃げようにも今、曳地さんに拘束されてるので逃げることがかなわない。
「自分の息子だからってお父様の思い通りに行くとは限りませんよ。」
「あくまで断るというのならばこちらとしてはどんな手段も辞さないが、このことを一晩よく考えるんだな。曳地、そいつを地下室に入れておけ。」
「かしこまりました。」
「そんな犯罪まがいのこと……っていうか完全に犯罪じゃねーか!犯罪をして許されるとでも思ってるんですか?」
しかしお父様は何も言うことなく後ろを向いて黙り込んでしまった。
「遥眞様お立ちください。」
「いやだから、曳地さんもいいのか?これ完全に犯罪だし、曳地さんも捕まるよ?」
「遥眞様お立ちください。立たないなら力づくで連れていきます。」
「はあ。わかったよ。」
曳地さんに引っ立てられる中、他人事のように、これ逮捕・監禁罪だな、なんて考えていた。
やがて一応生活できる家具はそろっているものの窓がなく灰色のコンクリの壁しか目に入らない、心理的に圧迫されそうな部屋に押し込まれた。
「では、遥眞様。努々逃げようなどとは思わないことです。」
「曳地さん…本当にいいんだね?」
「…何がですか?」
俺はわずかな可能性に賭けて曳地さんに話しかけた。
「いやだから犯罪に加担したってことでいいんだね?今ならまだ間に合うよ?」
「なぜそのようなことを聞くのですか?私は…。」
「だって曳地さん…気づいてないの?そんなに辛そうな、助けてほしそうな眼をしておいて。」
「あなたに何がわかるんですか!その口を閉じてください!」
曳地さんが突然キレた。
これはおそらく、結構長い間…もう便宜上お父様とは呼ばずあいつと呼ぶが…あいつのいいなりになってるのだろう。
それがたまりにたまって…ここで爆発したのだろう。
そうなるとその原因はおそらく…。
「曳地さん家族か近しい人が人質に取られてるでしょ。」
「な…なんでそれを…。」
言った後にしまったと思ったのか慌てて口を閉じる曳地さん。
「まあそれくらいわかるわな。ここからは勘だけど、聞いてね。妹かな?年下の子が手術をするために金が必要だが、出せなくてうちにお世話になってるみたいな感じ?」
「…………。」
「図星かな?ならさ、曳地さん俺を助けてよ。」
「は?」
「は?って…。俺、今決めたんだ。あの人ですらないあいつを追い落として俺が当主にになろうかなって。父親としての責務を一切してもらった記憶はないし、俺にとってあいつは家族でもなんでもないからな。まあこんなに犯罪を犯してるからどのみち待ってるのは破滅だけだけど…。」
「しかし…。」
「少しでも手伝ってくれるなら俺が全額負担するよ。だって…曳地さん口では力づくとか言いながらいっつもあいつに気付かれないように気を使ってくれてたでしょ?」
「な…なぜそれを…。」
「それくらいわかるよ。さっきだって関節極められてたわりに痛くなかったし。」
「でも…。」
「だからばれないように俺を手伝ってもらって、俺が失敗したら今まで通りあいつの秘書やって金もらえばいいじゃん。妹のためだしなりふり構ってられないのは仕方ないことだよね。」
「その…それは私には得しかないのですが…いいんですか…?」
「得とか損じゃないよ。優しくしてもらったから優しく仕返す。そこに何か理由が必要なのか?」
今にも泣きだしそうな曳地さん。
まあそりゃそうだよな。
今まで縛られて縛られてここまで来てしまったけど、成功するかはわからないが新しい、何よりもう罪を犯さなくてもいい安心感が与えられたのだから。
「遥眞様……私を…助けてください……。」
「うん。曳地さんと妹さんのためにも全力であいつを追い落とすよ。あ、でもお母さんに聞いてからだけど…。まあお母さんも政略結婚みたいのでこの家来たらしいし何とかなりそうだけど。」
「遥眞様…。その…妹じゃありません。」
シリアスな雰囲気が一気にぶっ壊れた。
「え…?えっ?訂正しなかったからてっきり妹だと…。」
「その遥眞様があまりにも饒舌だったため、その訂正する時を逃してしまったというか…。」
改めて面と向かって言われると気恥ずかしさが出てくる。
「へ…へー。じ…じゃあ誰なの?」
「娘です。」
本日のいやな思い出がすべて吹き飛びそうなほどの爆弾が投げ込まれた。
「えっ?曳地さん結婚してたの…?曳地さん…まだ20だよね???」
「結婚はしておりません。」
「はああああ?えっどういうこと?あっまさか…あいつにされた…感じ?」
「………。」
「え?まじ?あっ…えっとそのごめん…。」
まあ確かに曳地さんめっちゃ美人だからな…。
「え?じゃあまさかその子、俺の異母妹?」
「そうなりますね。」
「じゃあなおさら助けなきゃじゃん!今すぐカチコミに行くか!あいつのところに…。」
「それは無理だと思われます。」
「なんで?」
「義則様は…ボディーガードを複数名雇っておりまして…。」
「まじか…。どんな感じのひと?」
「なにも…日本最大級のやくざから…雇ったらしく…確か『天堂組』といいましたか…そこから雇ったらしいです。」
衝撃の真実だ。
これは光明が見えてきたぞ…。
脳内でこれからの作戦をまとめた俺は曳地さんにそれを伝えるのであった。
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筆者から
唯音達の登場はちょこっとだけ待ってください<m(__)m>
あと、来週ワクチンの2回目を打ちます。結構副反応強く出てしまうっぽくて1週間くらい執筆できないかも…?
なるべく早く復帰できるように頑張ります。
ワクチン…怖いよ…(;´Д`)
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