第2話ぽわぽわ姫との運命の始まり
唯音がクラスに入ってきた。
唯音と初めて同じクラスになった人はさぞ驚くだろう。
唯音のぽわぽわさに…。
「おぉ!唯音!おはよう!今日は遅刻しなかったな!」
俺らの元気印悠真が最初に声をかける。
「うん…。やっぱりおふとんって気持ちいいなぁ。もっと寝てたかったなぁ〜。あ、千春に暁人に遥眞もおはよ〜。」
「唯音…、本当に大丈夫?起きてる?お姉ちゃん心配なんだけど…。」
俺らの姉御千春が心配する。
「唯音ちゃんと授業起きてなきゃダメだよ?やっぱり授業は大切だからさ。」
俺らの爽やか王子暁人が忠告する。
「うん〜。授業起きてられる様にがんばる〜。それで、私の席ってどこ〜?」
「席は俺の隣のここだぞ。偶然だね。」
俺も唯音に声をかける。
「遥眞の隣の席だぁ〜。運命みたいだね〜。嬉しいなぁ〜。」
唯音のこの返しはあたかもその様な意味に聞こえなくもないが、実は他意は一切なく、単に授業寝ちゃっても教えてもらえるからという意味である。
最初にこんな感じの事を聞いた時にはそれはもうドキドキしたが今では慣れっこである。
すると、突然ガラガラと乱暴に扉が開けられヤンキーみたいな雰囲気を纏っている女性が入ってきた。
「おらー早く席につけー。出席とるぞー。よし、1番天川千春………。」
少しガラの悪いこの女性は鳥原美雨。
去年も俺らの担任を務めてくれた方だ。
なんでも元ヤンらしく色々厳しかったり怖かったりするがメリハリを大事にする先生で生徒には人気がある。
なんて事を考えながらぼけーってしてると突然声をかけられる。
「おい、西彦寺!何こっち見てぼけーってしてるんだ?出席お前の番だぞ?」
どうやら出席いつの間にかここまできていたらしい。
「すみません。」
「まぁいいが、気をつけろってほどのことじゃないが気をつけろよ?」
「遥眞〜?お前もしかして…鳥原せんせーに見惚れてたんじゃないの〜?」
悠真がここぞとばかりに茶化してくるが、こいつの対処法はただ一つ。
「悠真?黙れ。黙らないなら勉強2度と教えんぞ?」
「すんませんしたー!冗談でした!」
秒で土下座してきた。
こいつの声はやたらと響くので当然クラス中に聞こえる。
「なんだー?西彦寺お前私に見惚れてたのかー?」
先生も便乗してニヤニヤしてくる。
「はぁ先生からかわないでください。」
「なんだ面白みのない奴め。もうちょっとこうアワアワしろよ。」
「面白みなくてすんませんね。」
こうしてこのいたたまれない空気をやり過ごしたりして時は過ぎていく。
ホームールームが終わり、皆が近くにやってくる。
「遥眞ってさ〜鳥原せんせーのこと好きなの??」
一個思った。
(千春の顔がうぜぇ。めっちゃにやにやしとるやん。)
「千春…おまえ…クラスにバラすぞ?みんな聞いてくれ!実は千春は寝る時に…。」
「わぁぁぁぁぁ、わぁぁぁぁぁ、やめてよ!なんで知ってるのっ?」
「え?多分俺らにはバレバレだぞ?だってこの前山登った時とかさ丸聞こえだったし…。なぁ悠真、暁人。」
「あはは…まぁ結構聞こえてたかな?とても恥ずかしかったよ…。」
「ん〜?そんなこともあった様な…それよりも宿題見せてよ!」
その千春事件の被害者暁人は苦笑い、悠真は相変わらず単純であった。
「遥眞ぁ〜私にも宿題見せて〜。昨日ちょっと忙しくて出来なかったの〜。見せてくれないと遥眞の恥ずかしい秘密暴露するよ〜?」
俺の左隣に思わぬ伏兵がいた。
「まぁ、唯音ならいいけど…。」
「ちょっと待った!なんで俺の時と扱いがそんなに変わるの!?」
「だってお前男じゃん。それに唯音はやっぱりあれがきついから…。」
実は唯音は有名な高校生小説家だったりする。
普段のぽわぽわした態度からは信じられないくらい緻密で伝わりやすい描写をするのでとても人気がある。
「遥眞〜。ありがとう〜。本当に遥眞は神様みたいな人だね!」
「くぅ〜。俺の扱いがなんかみんな雑なんだよなぁ〜。」
「そんなことないよ、ほら宿題!」
「おーありがとう遥眞!」
やはり、悠真は単純である。
「ねえねえ今日の放課後さ久しぶりにみんなで遊びに行かない?実は今日お姉ちゃん部活ないんだー。」
突然そんなことを言い出す千春。
「いいな!暁人と遥眞と唯音は来れる?」
すぐに乗っかる悠真。
「今日はなんと俺も部活ないからいいよ。」
なんとあの部活バカである暁人まで同意した。
「私も〜今日書く分は終わってるから行く〜。遥眞は〜?」
なんとなんと唯音も来るらしい。
珍しいこともあるものだ。
「じゃあ行こうかな久しぶりに。あ、でももしかしたら俺の妹も来るかも知れない…。」
俺がそう言うと、
「え?遥眞の妹?見たい見たい会いたい!」
「遥眞の妹か…。会ってみたいかも。」
「遥眞の妹ちゃん〜。会いたいなぁ〜。」
と3者同様の反応が返ってきた。
もう既に亜美と会ったことのある悠真というと…。
「へっへーん。俺もう亜美ちゃんと会ったことあるし〜。」
と謎のマウントを取り始めるもスルーされて項垂れていた。
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