第26話 つかの間の平和

 朝の気配がする。


 全身に活力を与えるように朝の少しだけ冷えた空気を吸ってから目を開ける。


 そこは見慣れた我が家のリビングであった。


(ああ…。悠真の配信見ながら寝ちゃったのか…。)


 本日も無慈悲に学校が存在するので、に鞭打って起きようとするが…。


(ん?本当に体が動かないくらい重い…。風邪ひいたか?)


 重いうえに何かのぬくもりが伝わってくる…。


(はっ!まさか!)


 そう思ってギュルンと左を向くと…俺に抱き着いて眠っている唯音の姿が…。


 すごい幸せそうなんだけど…学校だし恥ずかしいので起こす。


「おーい唯音ー!起きろー!朝だぞー!」


「ん~?あさ~?ふわぁぁぁぁぁ。ん?えっ?遥眞?あれ?ここ遥眞んち?え?なんで?」


 予想通り、唯音はめちゃ動揺していた。


「昨日泊ってったじゃん。朝ごはん準備してやるから支度してな。」


「う…うん。」


 よほど恥ずかしかったのか、唯音は顔を真っ赤にしてうつむいてる。


 まあそんな唯音も可愛かったのだが…。


 目玉焼きと食パンとスープの簡単な朝食を作り食べる。


「ね…ねえ遥眞…。」


「ん?」


「その…見た?」


「何を?」


「見てないならいいけど…。」


「なんやねん。」


 唯音がよくわからないことを言っている。


 とりあえず学校の準備をするために唯音はいったん部屋に戻った。


(はあ…。何とか終わったぞ…。まだ朝だってのになんか疲れたなあ…。)


 ぴんぽーん!


(亜美が来たな…。)


「はーい。亜美だろ。ちょっと待ってろー。」


 自分の中の考えにけりをつけたくて、新しい空気を吸うためにドアを開ける。


 ドアを開けるとそこには亜美…ではなく唯音がいた。


「あれ?唯音だったか。どうした?」


「そ…その遥眞…。一緒に学校行こ…?」


 上目遣いで聞いてくる。


「あ…あー。学校行ってる行ってるからな…。」


「亜美ちゃんにはもう了解もらったよ…。」


「え?まじ?あー…じゃあ一緒に行こう。」


 ここでこの答え以外をしたらなんか後でひどい目にあいそうだ。


 時間になった俺は唯音と連れ立って歩き出す。


 本日は本当に亜美が来なかった。


 隣を見るとすごい機嫌のよさそうな唯音。


 なんだか世界線が変わってしまったみたいだ。


「そういえば最近小説どうだ調子は?」


「ん~。なんか今ネットに乗せてる小説が書籍化しそう~。」


「へ~すごいな。」


「あ、そういえば吉田さんが遥眞に会いたいって~。」


「吉田さんが?」


 吉田さんというのは唯音の担当編集さんである。


「なんかあるのかな…?」


「わからない~。」


 まあそりゃそうである。


「あ、そういえば唯音来週全国模試だけど勉強してる?目をそらさない!」


「べ…勉強は…たぶん何とかなる…よ?」


「本当かよ…。…俺のノート見る?」


「見たい!見せて~。」


「はいはい。」


 そうこうしているうちに学校についた。


 唯音はこの学校の中では相当に有名なので、男子と二人で仲良く登校っていうのがみんなの興味を引くみたいだ。


「みんなに見られてんな…。唯音大丈夫?」


「遥眞こそ大丈夫…?その…僻みとか多そうだけど…。」


「それは自分可愛いって自覚してるってことか?」


「人並み以上には容姿に気を使ってるつもりです。」


 俺の煽りをサラッと受け流す唯音。


「俺は全然大丈夫。」


 教室に入るとすでにイチャイチャしている暁人と千春、一人寂しそうに似ている悠真がいた。


「悠真何してんの?」


「だって…みんな俺をおいて付き合い始めるじゃん…。」


「俺と唯音別に付き合ってないぞ?」


「え?そうなの…?」


「うん。」


「なんだーよかった!俺だけ独り身になったものだと…。」


「うんうんよかったね。ところで悠真来週模試だけど勉…おい逃げるな!」


 また戻ってきた平和な日常を噛みしめるように悠真を追いかける。


「おーら席つけー。お!西彦寺今日は来たのか。」


「はいきました。」


 鳥原先生の悪い口調もなんだか懐かしいようで一日しか休んでいないのにすごい休んでしまったみたいな罪悪感が湧いてきた。


「おーし。来週に全国模試があってだなーこれがまた結構大事なんだわ。だから本気で臨むように!わかったか天川と野坂!」


「いやーもちろんですよ。この野坂に任せておいてください!」


「私も勉強してるので大丈夫です!だと思います…。」


「本当か…?心配になるな…。まあということで、模試ちゃんとやれよー。以上。」



「ってことでだな…。遥眞勉強教えて!」


「お姉ちゃんにもお願い!」


 やはりというかあれだけ大見得切ってたのに勉強してないようだ。


「まあいいけども…。」


「いやー遥眞神だぜ!」


「本当にそうだね!お姉ちゃんも激しく同意!」


「おだてても何も出ないぞ…。」


 調子のいい奴らである。


 だけど、来るべきあいつとの戦いに備えて…今を楽しみたいな…。


「今日の放課後教えてやるよ。」


「やりい!」


「ありがと遥眞ー!」




______________________________________


筆者から  


昨日はいろいろ忙しくて更新できませんでした…ごめんなさい。


P.S 明日も忙しくて更新出来なさそうですので明後日に更新します!

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