第18話 唯音とお出かけ①
本日は唯音とデートに行く日である。
昨日の夜はドキドキしてあまり寝ることができなかった。
普通デートに誘われたら、気があるんじゃないかくらい考えてもいいと思うが唯音に限ってはただ映画を見に行きたい、お買い物したいだけかもしれないので素直に喜んでいいのか迷う。
気もそぞろに朝ごはんを食べ、着ていく服を選ぶ。
(いやーデートじゃなかったとしても唯音と二人っきりでお出かけか…楽しみだなあ。)
一応準備のできた俺は、唯音にメッセージを送る。
すると、その5分後チャイムが鳴った。
ドアを開けると、そこにはこの世の人とは思えないほどきれいな唯音が立っていた。
白を基調としたふんわりとしたワンピースに淡い水色のカーディガン、髪の色と同じ、クリーム色の小さなショルダーバッグを持ち、普段よりも少し濃く化粧をしたらしいその顔はまるで天女のよう(遥眞フィルター)である。
「遥眞~おはよ~!」
「お…おう。おはよう。唯音のその…。」
「ん~?」
「めっちゃ似合ってるよ…その服。」
「ありがとう~。遥眞もかっこいいね~。」
そういう経験のない俺は結構頑張って褒めたのだが、唯音は言われ慣れてるようでさらっと返された。
俺も一応いろいろ整えたつもりなのだが、唯音を前にするとかすんでしまいそうで今日のお出かけが心配である。
「じゃあ遥眞行こう~!」
今日の目的地は以前行った「西寺」にある、映画館とショッピングモールである。
あそこの駅は本当なんでもある。
そして…。
外に出た俺たちはものすごい数の視線にさらされていた。
そりゃそうだ。
隣を楽しそうに歩く唯音、どこからどう見ても女神にしか見えない(遥眞フィルター、だがあながち間違ってない)からだ。
しかし意外にも俺に対する視線に僻み、嫉妬の視線がないことに驚いた。
俺だったらものすごい美人の隣を歩くさえない奴には僻みまくるだろう。
(なんでだろう…?まあいっか!)
「ねえねえ遥眞~。今日のお昼ご飯どうする~?」
「ん?正直なんでもいいけど…。唯音は何か食べたいものがあるのか?」
「実は…ここに行きたくて~。」
そう言って唯音が見せてきたのは「西寺」の近くにあるすごいおしゃれなカフェレストランだった。
「お、いいねそこ!そこにすっか。」
「うん!」
うれしそうにうなずく唯音は可愛すぎであった。
(あれ…?もしかして…俺って…。)
ふと頭に浮かんだのは、恋の一文字。
前から唯音可愛い唯音可愛いとは思ってたが…これは恋なのだろうか…。
(いや…勘違いかも…。)
何か違う気がしてその考えを振り払う。
電車に乗ってからも俺たちに対する視線は尽きない。
「そういえば遥眞~。」
「ん?」
「何か見たい映画ある?」
「そうさなぁ…。なんか最近話題になってるなんだっけ…?恋愛映画…。やべ名前忘れた。それ見てみたいかも…。あっ!『来い、故意の濃い恋』だっ!」
「あ!それ私も見たかったんだ~!そこにしよう~!」
「それにしてもだよ唯音。」
「ん~?」
「唯音さあ本当に服似合いすぎじゃね?」
「ふぇ!?い…いや~そ…そんなに似合ってるかな~?」
俺にはもうこの感想しか思いつかない。
俺のIQが溶けているようだ。
さっきとはうって変わって顔を真っ赤にした唯音。
「さっき余裕で受け流してたのになんで今そんな照れてんの?」
「だ…だって…不意打ちじゃん今の…。心臓に悪いよ…。」
「そ…そっかすまん。もう言わないわ。」
「いや!言って!」
「え…えぇ…。どっちやねん。」
乙女心というのは難しいこって…。
このように傍から見ればバカップル(この時俺らは気づいてなかった)のようなことをしてると、「西寺」についた。
「いやーついた。じゃあまずは映画館だな。」
そういって振り向くとなんかまだもじもじしている唯音が目に映った。
「お…おーい唯音ー?」
「ひゃい!にゃ…なに!?」
「いや…映画館行くぞって。」
「あ…あぁ…。い…行こう~。」
この日本でも有数の大きい映画館『むうびい西寺』。
名前がダサい。
何回聞いてもダサい。
その代わり各種サービスが充実していてそれによって人気がある。
「じゃあ唯音チケットとってくるから待ってて。」
「あっ遥眞…。」
なんと映画『来い、故意の濃い恋』2席だけ席が残っていた。
取れないかも…と思ってたからとてもうれしい。
チケットを取り、戻ると…唯音はナンパされていた。
「ねえ君可愛いね。どう?僕たちと遊ばない?」
「いや…その…。」
完全に唯音を一人置いてきた俺の失態である。
「ごめんなさい、俺の連れに何か用ですか?」
「つ…連れがいたのか…。ごめん、なんでもないよ…。」
ナンパ男たちはどっか行った。
「唯音…その怖い思いさせてごめん…。俺のせいだ…。」
「遥眞…。もう…遥眞が助けてくれたしいいよ…。それよりチケット1個頂戴。」
「あ…ああ。」
「もう!大丈夫だって~。こういうこと慣れてるし。」
「うん。ありがとう。」
唯音は優しい人である。
俺は唯音の隣に立てることをすごく誇りに思いながら途中で買ったペットボトルの緑茶を飲んだ。
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