第44話 囚われの姫(真夏side)
はるくんは帰っていっちゃった。
少し寂しそうな顔しちゃったからか首をかしげながら帰っていった。
私ははるくんのことが大好きだし、なんなら結婚まで…とか考えちゃったりするけど…。
でも、はるくんの周りにはすごい綺麗な子がいっぱいいて、私なんかに勝ち目がないような気もする。
そのうえ、かまって欲しかっただけなんだけど、昔色々イタズラしちゃったから余程無理だなぁ。
でも、諦めない。
諦めたくない。
仕方ないでしょ?初恋(今も続いてる)だったんだから。
はるくんのことを忘れようと別の人と付き合ったりしてみたけどその人は結構やばい人だったから即別れた。
ぴんぽーん。
らしくもなく感傷に浸ってしまった。
突如鳴ったインターホン。
「はーい。」
ろくにインターホンを確認せずがちゃりとドアを開けたのだが、それが悪夢の始まりだった。
「真夏…。お前もしかしてあいつとデキてたから俺と別れたのか…。」
元カレがいた。
目は血走り、息切れしていて不気味だ。
「和人…。」
「答えろ!お前あいつと付き合ってたから俺を振ったんだな!?」
「違うよ!私、あの子と別に付き合ってたりしてないんだけど…。あの子は…。」
「嘘をつくな嘘をつくな嘘をつくな」
猟奇的な言葉の響き。
恐怖を感じてドアを閉めようとするのだが、それよりも前にドンと体を衝撃が襲い、意識が暗転した。
目が覚めてみるとそこは付き合ってた時に数回来た和人の部屋だった。
両手両足は縛られ、猿轡をかまされていた。
(何が起きたの…?)
「うひひひひ…。これであのガキを潰せる…。」
「ひっ…。」
「起きたか?大丈夫?真夏には怖いことしないから。全てあのガキのせいなんだから。」
壊れたようにはるくんを貶めることしか考えない。
それが今の和人に対する認識だ。
「大丈夫。あんなクソガキより、一生大切にしてあげるから。」
言ってることが既に支離滅裂でしっちゃかめっちゃかだ。
「ん〜ん〜。」
「あぁそうだった。喋れないんだね真夏は。」
そう言うも猿轡は外してくれなかった。
それから何日かかけて状況を知った。
和人は全ての罪をはるくんに着せようと色々と工作してるらしい。
和人が流してたテレビでも、はるくんが怪しいみたいなことをやってた。
そんなことないって声高に叫びたい。
けど無力なわたしには何も出来ない。
初めての感覚だった。
比較的顔も広く色んな才能にも恵まれた私に出来ないことはなかった。
だからこそ、この何も出来ない状況はほぼ初めて出し、何をしたらいいのかよく分からない。
(はるくん、助けて…。)
私の最愛の人の名前を心の中で叫ぶと幾分か心が安らいだ。
しかし、待てど暮らせど助けは来ない。
どうやら本格的にはるくんに絞って捜査してるらしい。
あのはるくんなら多分打てる手は打って何とか凌いでるかもしれないけど…。
日に日に和人の猟奇的行動は悲惨さを増し、ついに自分で自分を傷つけてその血を私にこすりつけるとか言う気持ち悪い、ワケわからない行動にまででた。
私も何だか一生助け出されなかったらどうしようとか、ネガティブなことばかり浮かんでくるようになった。
しかし!
光は差した。
はるくんが弁護士とか雇って色々してくれたらしい。
警察が来て和人は逮捕された。
はるくんが助けてくれたという事実に私の心は浮き足立ち、何だかほわほわしてきたけど…。
私を助けてくれたはるくんに私は何を返せるのだろう?
私がはるくんにあげれるものは何もない。
はるくんの一番の幸せはきっと、唯音ちゃんの隣にいる事だから。
だから、私はこの気持ちに蓋をしよう。
そう、決意してたのに。
はるくんが様子を見に来てくれた時には、寂しさと恋心その他もろもろの感情がごちゃ混ぜになって涙が溢れてきて、思わずはるくんにすがりついて泣いてしまった。
ヨシヨシと背中を撫でてくれたはるくんの手は暖かった。
ねぇ、はるくん?
私ははるくんのことが大好きなんだよ?
この気持ちいつか隠さなくてもよくなって欲しい。
そう、願った。
織姫様と彦星様のディスティニー~お隣さんのクラスメイトは……生活力皆無…?~〈1000pv大感謝!〉 ゆっちぃ @yvtti
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