第13話 顔(カオス)合わせ
……ここは、何処だ?
『なのよ!』『なのじゃ!』『ですわ〜!』
なんだ、騒がしいな。って、妖精? なんか一匹知らないやつもいるぞ。しかも妖精のくせにめちゃくちゃ巨乳だ。この辺りのチェックは意識が朦朧としていようが安定して行える。
それがこの僕、田中である。
それはさておき、どうやらここは僕の部屋だ。つまりは僕と妹、茶子の住む小屋なのだが、ここに妖精が勢揃いしているのは何かの間違いでは?
「ん、お兄ちゃん?」
「茶子……!?」
よく見ると僕の身体に項垂れるようにマシュマロを押しつけた茶子がいる。そう、茶子。
「あ、いやこれは違うんだ! まずは説明をき——」
「お、お、落ち着いてよ、このお兄ちゃんめ!」
表情こそムスッとしているが、この顔は本気で怒っている時のそれではないな。それよりも、
「お、おう……いやしかし、この状況、茶子のおっ○いの感触が男の本能を駆り立てるというか、お、落ち着けないのだが?」
「ちょ、お、おお、お兄ちゃんのばかぁっ! これは違うの! 回復したならはなれてよ、このエロお兄ちゃんめが! この! この!」
痛い痛い!? 痛いが、しかしこの構図も悪くない。痛い! い、いたっ、いいねぇ、真下から眺める妹のアングル。マシュマロの破壊力が凄いことになっておるぞ妹よ! 蹴るたびに跳ねるように激しく揺れるマシュマロの間から、時折覗く恥じらいと何ちゃらが入り混じったご尊顔、あぁ、僕は今、世界一幸せな男だ。
『やれやれ、仲のいいことなのじゃ。お前たち、兄妹でちちくりあうのはそろそろやめて状況の整理をするのじゃ。見ておれんのじゃ』
ストロベリーか。安定ののじゃ口調だな。紫ツインテールをピョコンと揺らす仕草が中々に愛いではないか。苦しゅうない、近うよれ。
おっと、すまない取り乱した。
確かにストロベリーの言うとおりだ。このカオスな状況、——僕の部屋に魔法少女全員と妖精、つまりはデバイスが勢揃いしているカオスな状況を整理しないと。
その説明は僕の知らない妖精、クランベリーがしてくれた。超巨乳な金髪ショート妖精は無駄にテンションの高い、ですわ口調で語ってくれた。
まず一つ、クランベリーは茶子のデバイスだ。
……え?
「ちょ、ちょーっと待ったぁぁーー!」
『何ですの〜、このお兄ちゃんめが、ですの』
このやろ、口調がカオスだぞ!?
それはさておき、さておきだ! この巨乳妖精、今、何と言った? 茶子が魔法少女、だと?
僕が驚くのも無理はないと、茶子から事の経緯をかい摘んで聞いた。どうやら茶子のやつ、僕の様子がおかしいと懸念していたようで、案の定、夜中に外出した僕をつけていたらしい。
「そしたらお兄ちゃん、待ち合わせしてて、デレデレしちゃってさ」
「え、そんなことは……あるかも知れないが……」
「はっ! べ、別にお兄ちゃんが誰と付き合おうと、わ、私にはカンケーない話なんだけどね!」
膨れて横を向いた茶子の胸が意味不明なくらいに跳ね動いたのはこの際置いておくとして、——いや実を言うと
『もう、いいの? ですわ』
白い目で見られるとはこのことか。三種のチーズ、ではなく妖精たちとその後ろで同じく白い目をする長身のショートカット女子と現役アイドル。
『そこでクランが登場したのですわ! 叶わぬ恋に胸打ちひしがれる彼女に契約を持ち込んだのですわ〜』
「ちょっ、そ、そんなんじゃないんだから! お、お兄ちゃん如き、その辺に転がっている石ころ並みに代わりがいるんだからね!? か、かかか、勘違いしないでよね!?」
『ツンデレというのも中々大変な性格ですわ。自分の気持ちと反対のことを言ってしまうんですもの、ですわ』
僕は何も聞いていない。
僕は何も聞いていない。よし。
『なのよ! でもクラン、それにしては来るのが遅かったのよ?』と、ラズベリーが割り込む。
『ですわ〜! 変身して衣装の調整をしていたのですけれど、なかなかお胸のサイズが合わなくて〜、ちょっと苦戦していたのですわ〜!』
『それはラズに対しての嫌味か、なのよ……』
あぁ、ラズベリーって、それこそ正しくペッタンコ、否、ペッタン子だもんね。
と、馬鹿な会話の後ろで、啜るような声が。
「……お、お兄ちゃんが最近おかしいからっ……変態だから心配……して……し、心配に決まってるじゃない! だって、私にはお兄ちゃんしかいないんだからっ! たった一人の、家族だもん……」
家族か。そうだ、僕は茶子のためなら死ねる。嘘じゃぁない。そんな茶子に心配させちまったみたいだ。ほんと、いつまで経っても変わらないな。
茶子は僕の大切な、————妹、だ。
「ごめん茶子。隠し事してしまってさ。どう説明すればいいのかわからなくて。どうやら僕は、そこに飛んでる妖精たちと同じデバイスの位置付けみたいでさ、素敵狛さんの手助けをしていたんだ」
そう、素敵狛さん。素敵狛さん?
「そ、それより素敵狛さんはっ!? 無事なのか!?」
「む……このお兄ちゃんめが落ち着いて! 素敵狛……さん、なら私の布団で寝ているから……ふんだ」
「そ、そっか。良かったぁ……」
僕が安堵していると、後ろで聞いていた二人が口を開いた。
「ミライ、そろそろ帰るよ。あまり遅くなると色々面倒だし。デバイス田中くん、君さ、人の心配より自分の心配したほうがいいと思うよ?」
「だな。お前、環の体内の猛毒を全部自分に取り込んでたんだぜ? 妹ちゃんの愛の回復魔法がないと、死んでたぞ?」
僕は二人と連絡先を交換し、また学校で、と見送る。その姿を見ている茶子の視線が痛い。ん? 学校で? 学校で、だとぉ!?
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