第21話 乙女たちの饗宴(狂宴)【百合花視点シナリオ】


 ん……あたたかい……

 唇に触れる柔らかな感触とアタシの身体を包み込むウォーターベッド並のホールド。そうか、ここは天国か。アタシ、地獄かと思っていたけど、何とか天国に召されたようだな。


 あぁ、一度でいいから環の唇に触れたかった。こうやって、舌を伸ばして……小さな舌をアタシの舌で舐め上げて、そう、まさにこんな感じ。

 卑猥な音と漏れる吐息……それがアタシの耳をくすぐり去っていく。身体が疼く。


 もっとしたい。可愛い胸も触りたい。手を伸ばしてみると、暗闇でも確かに、それがおっ○いだとわかる感触が手のひらに広がって……

 しかし、環のおっ○いはこんなに大きくなかったよな。いや、この際なんでもいい。揉みしだいてやる。うわぁ、やっわらけ〜!


「んっ……はぅっ」


 感じているのか環? アタシで感じているんだな!

 よし、もっと揉んでやる。田中では味わえない快楽のその先へアタシが連れてイッてやるからな。

 豊かに実った果実の先に、これ見よがしに聳え立つポッチリを優しく摘み指で転がしてみると、アタシを包み込むウォーターベッドがピクンと跳ねる錯覚をおぼえる。心地よい波のように、しかし不定期に跳ねる海で果実を貪るように揉みしだきながら、果実から滴る甘く酸っぱい果汁のような環の唾液に舌鼓をうち、——


「あれ?」


 視界がクリアになる。夢から覚めてしまった。

 アタシの視界には裸でベッドに仰向けで倒れ息を荒げる茶子ちゃんと、顔を真っ赤にしながら瞳を丸くした環の姿が映る。

 やべぇ、アタシ、ヤッてしまったのか?

 内心穏やかではないアタシの動転する思考は、甲高い声で現実に引き戻されわけで。


「何してんのよ……アンタたち。百合花も回復したなら状況を話しなさいよね?」


 心寝未来か。なんだコイツ、内股で頬なんか真っ赤に染め上げて、どうかしたのか?


「……心寝も参加する?」

「なっ……す、するわけないでしょ!? 馬鹿なこと言ってないで二人を解放してあげてよね?」


 目の前で女の子座りしていた環が、フラっと倒れ込んではアタシの胸に顔を埋ずめる。その際、ラズの短い悲鳴が聞こえたような気もしたが、敢えて放置し、環をそのままベッドに寝かせた。

 隣でイキ果てたご様子の茶子ちゃんも疲れて寝てしまったようだ。

 巨乳妹キャラと不思議ミニっ子キャラが同じベッドで迎え合わせで眠る姿を脳内フォルダに保存。


 茶子ちゃんに至っては、私汚されちゃったよ〜、なんて寝言まで。あまりにも気持ちよくて、つい揉みまくってしまった。後で謝るか。

 やはり女はいいな。

 抱くなら女、抱かれるなら……


「ん?」


 ふとアタシの足首や腕に巻かれた包帯と絆創膏に気付く。そっか、心寝がしてくれたんだな。巻き方は緩々だし、絆創膏の位置もちょっとアレだが、皆んな、ありがとうな。


「心寝、ありがと」

「はっ、べ、別に変な意味はないんだからね? 勘違いしないで、ミライははやくバーベキューがしたいだけなんだから……」


 心寝……アタシ……


「すっげぇこわかった……」


 駄目だ、涙が勝手に。アタシ、こわかったんだ。死んでもいいと思ってたのに、こんなに身体が震えるくらいに……こわかった……

 まだ、生きてたいと思ってしまった。


「アンタの泣き顔、超超超〜ブサイクだから、ミライに見せないでくれる?」


 そんなこと言って、アタシを優しく抱いてくれる。心寝の心臓の音が聞こえる。

 とても、とてもはやい鼓動が。アタシの鼓動と重なる。少しだけ、甘えてもいいかな。



「……田中くん、出かけちゃったのかな」



 ……心寝? 





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る