第22話 夏休み強化(ハーレム)合宿?


 というわけで、夏休みはここで過ごします。と、声高らかに宣言したのは、病的なまでに白い肌の幼女を、まるでぬいぐるみを抱くようにホールドした人気アイドル、心寝未来なわけだが。


「ちょっと待ってくださいっ……ここって、タマキの家なんですけど……」


 ですよね。その反応は至極普通であり。


「いい皆んな? チュクヨミちゃんが田中くんのおかげでミライたちのマスコットになってくれたからいいものの、恐らく現時点で最強の魔法少女である百合花を倒しちゃうレベルの敵がこれから、いーっぱい出てくるかも知れないでしょ? つまりミライたちは今のままじゃ駄目なの」


 チュクヨミが苦しそうに抜け出そうと試みる。

 先に言っておくと、僕がチュクヨミのことを説明すると案外簡単に受け入れられ今に至る。

 デバイス妖精たちからはブーイングの嵐だったが、一度衝撃波でコテンパンにのされてからは渋々同行を認めた様子だ。

 百合花は最初は一歩引いていたが、膝に座らせろと言われ座らせた時点で悩殺されていた。百合花は結局、愛でられるものすべてを愛でたいだけみたい。


 さておき、心寝の言わんことはわからないでもないが、それと同居生活に何の関係が? それにアイドルである心寝はそんな普通に生活していていいのだろうか。僕がそのあたりを問いつめると、


「今はアイドル活動自粛期間なの。この前担当にも話つけてきたし、当面は復帰しないよ。ミライだって普通に高校生したいんだもん。というわけで、超超超〜楽しそうなスケジュール立ててみたから見て見て!」


 夏休み強化合宿スケジュール?

 皆んなで夏祭り(勿論女子は浴衣)、皆んなで海(ミライの別荘)、そこで肝試し、スイカ割り、残った日はゲームセンターへ入り浸る、カラオケに行く、ボーリング、更には女子会……


「待て待て、これ、普通に遊ぶスケジュールだろ」

「ち、違うわよ? 皆んなの絆を深めるための特訓なの。夏祭りではそれぞれが田中くんと浴衣デートで勝負して、勝った人は田中くんと二人っきりで花火を見る。どう、面白そうでしょ」


 意味不明だ。何故僕が全員と浴衣デートを。僕は素敵狛さんと二人がいいぞ。すると大人しく聞いていた百合花が立ち上がり鼻の穴を全開に。

 何だよ、もう。


「へぇ、面白そうだな〜。よし乗った! アタシが勝ったらデバイス田中はいただくぜ? それが嫌なら、環も頑張れよな〜、にしし」

「タマキは別に……き、気にしません。中田くんが百合花さんにどうされようと、し、知ったことではないので」


 田中だ! あからさまに動転してるよね。

 つまりあれか。素敵狛さんは百合花に嫉妬しているんだな。馬鹿だなぁ、百合花が僕にそんな気をおこすわけもないのに、まこと、愛いやつよの。


「ふっ、僕の心を鷲掴みに出来るのは、ただ一人だけさ」


 そう言った僕の前には素敵狛さんをはじめとする美少女たちがズラリと。あれあれ、豪華過ぎない?

 アイドル、意中の人、スタイル抜群変態、全員捨てがたいというか最強クラスに可愛いぞ。こんな子たちと浴衣デート……だとぉっ!?

 僕にそんな大役がつとまるのか?

 僕は素敵狛さん一択、僕は素敵狛さん一択!




「……ま、負けないんだから……」



 ……へ?

 背後から絞り出すような声。そうだ、魔法少女は四人いたのだった。妹、茶子も含め。

 しかし僕としてはその辺りは論外であり、


「お兄ちゃんは……私のお兄ちゃんなんだからね!」


 今季最高の乳揺れを記録せんばかりに勢いよく立ち上がった茶子に全員の視線が移る。視線は数秒間上下し、やがて落ち着く。


『禁断の恋ですわ〜』

「ちょ、クランベリー!? そ、そんなんじゃないんだから! ただ、お兄ちゃんは永遠に童貞じゃないといけないだけなんだからね! わ、私は一旦帰って荷物整理してくるんだから! み、みんなお兄ちゃんに変なことしちゃいけないんだからね!?」


 いやこの企画に乗る気満々だね茶子。

 さっきからずっと素敵狛さんがプルプルしているのが気になるが、まぁ、そりゃそうだよな。



 こうして、僕と魔法少女たちとの夏休み強化合宿がスタートするのであった。

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