第14話 転校(休養)魔法少女ミライ
僕は今、妹の茶子に、激睨まれている。
僕の隣には一晩お泊まりした素敵狛さんの姿。素敵狛さんの制服は、僕が夜中に取りに行った。あれだけの身体のダメージがまるで無かったかのように快適で、茶子の回復魔法というものの凄さを身をもって感じているのは確かなのだが、
「お兄ちゃんめが、す、素敵狛せ、先輩に変なことしたら駄目なんだからね!? ただ一緒に学校に行くだけなんだから、へ、へ、変な勘違いしたら素敵狛先輩が困るんだから! わかってるの?」
中学校は反対側だろうが妹よ。そう、胸をバンバン揺らしてくれるな、セーラー服が悲鳴を上げておるぞ。あぁ、あのセーラー服になりたい。
「大丈夫ですよ、茶子ちゃん。タマキと田中くんは魔法少女とデバイスという関係以上のことは万が一にもあり得ませんので」
「ちゃ、茶子ちゃん!? へ、変な呼び方しないで……泥棒猫はどっちよ、ふん……」
「今、何か?」
「ななな、何でもないもん! お、お兄ちゃんの交友関係に口を出すつもりはないけれど、でも、私は素敵狛先輩のこと、あまり好きじゃないから。じゃ、私こっちだから」
振り返りざまにもお決まりのマシュマロウェーブがスローで再生される茶子だが、とうとう僕たちの前から姿を消してしまった。全く、お兄ちゃんが好きなのにも程があるぜ、可愛いやつよ。
◆◆◆
朝のホームルームの時間、僕は廊下側の後ろの席から窓際の素敵狛さんを盗み見ていた。横顔も最高に可愛い。短めの髪が初夏の風に靡く。
さておき、かなり笑える事実をここで告白せねばならないのだが、僕の一つ後ろの席、廊下側の一番後ろの席に座って、僕と同じく素敵狛さんを目で犯す変態(見た目はショートカットの綺麗系)の存在に気付いてしまったのである。
「おいデバイス田中、アタシの環を目で犯すな」
「お前……百合花……同じクラスだったのかよ。それに僕はお前と違って目で犯しているのではなく、愛で犯しているのだ。一緒にするんじゃぁない」
「…………いや一緒だろ」
目で犯していたことは認めたみたいだ。まさか百合花、素敵狛さんのことを狙っているのか?
名前通りの性格じゃないか。いや確かに百合は神聖だ。ましてや百合花のような美形と素敵狛さんのような不思議系猫ちゃんの百合構図なんてものは世界を滅ぼしかねない。見たいが、いやしかし、僕の素敵狛さんを奪われるわけにはいかん! だがしかし! ぐはっ……僕はっ……僕は……
「百合の世界では、僕は不純物だというのか……」
「デバイス田中〜、わかってんじゃねーか!」
そう言って僕の頭をバシバシとリズミカルに叩く百合花。笑顔になると大人びた表情が途端に崩れて子供みたいな表情になる。それに変態でも女子、やはり良い香りがする。
結局コイツも、女なんだよなぁ。
と、戯れ合う僕と百合花に一瞬視線を寄せた素敵狛さんだったが、すぐに目の下をひくつかせては窓の外へ視線をやる。照れているんだな、きっと。
「アタシと目が合って頬を赤らめる環、やべーよ、あの頬にキスしてぇ……」
「いや今のは僕を見たんだよ。というか百合花、お前普通にやべーなぁ。しかし、あの桜色の頬っぺが可愛いのは認める」
「デバイス田中の認証なんてなくても、環は世界が認めてるんだよ。くっそぉ……いれてぇなぁ……」
いや何を?
と、ツッコミを入れようとしたその時、教壇でボソボソと何か言っていた担任、
「はい、今日はあと一つ。転校生を紹介する。夏休み前の中途半端な時期ではあるけれど、色々事情があるみたいだから詮索はしないこと。じゃぁ、
「はーい」
騒つく教室、所謂世界のモブの集まりである僕たちの教室には不釣り合いなキャラが元気に教室へ入ってきたのだが、いや待てよ、それはないぞ。
「心寝未来ですっ! 芸能界、超超超〜っ、疲れたから〜、普通の学生したいなーって思って転校してきたよ! ミライ、あまり世間知らないから、皆んな教えてくれると嬉しいな〜!」
そうか、これがまた学校で、ということか。
しかし何故、人気絶頂期のスーパーアイドルがこんな田舎町の高校なんかに。やはり魔法少女と関係があるのだろうか。というか、同い年だったのか。それにしてはもう少し若くも見えるな。茶子の方が大人に見えるくらいだ。特におっ○いとか。
「心寝さん、君の席は素敵狛さんの後ろの席だよ。わからないことがあったら、周りの人に聞いてくださいね」
「はーい、モブせんせっ!」
カタカタ表記はやめーーい!!
何か作為的なものを感じる。魔法少女をこの町に集める意味も気になる。急な転校も妖精たちの何らかの力が関与しているかも知れないな。
小ぶりな胸を張って素敵狛さんの席まで歩く心寝に男子は勿論、女子も興味津々である。僕の後ろの百合花以外と付け加えておくが。
高校生活一年目、少し騒がしくなりそうな予感だ。
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