第20話

城塞都市カーライル下水道爆発事件。都市の下水道網に溜まっていた可燃性のガスに何らかの原因で引火し、大きな爆発に繋がったのだろうとの見解を領主が発表した。尚、今回調査をした結果、おびただしい数の小動物の死骸を発見したことで下水道の衛生管理を強化すると共に、人口増加に伴い下水道の換気が不十分に成りつつあると判断した様で城塞外部からの侵入を警戒しながらも換気口を2、3新しく設け鉄格子嵌める計画を発表した。


城塞都市カーライルの北部、半円型にエデン川が流れている。この川は都市の人々の生活にとって重要であり、飲料水として、また炊事洗濯、し尿の処理を担っている。

カーライルの地下に張り巡らされた下水道設備を通り、糞尿は浄化槽を通り外部の蓋をされた運河へと流され、流れて行くうちにキレイになって行く。もちろん、魔法だ。都市内部の浄化槽だけでなく、川へと続く運河には覆う蓋がしてある。その蓋は微弱だが魔力を帯びた魔道具、浄化の魔方陣が組み込まれ河川の汚染を低く保っている。


「おい、この道の下、川が流れてるぜ」

青い肩に角のついた鎧にミスリルのレガース、黒鋼の大剣を持つ男だ。なんとも珍妙な装束をしている。

この男、足元に所々にある魔方陣らしき模様のある蓋を外し水を掬って飲む。

「かぁー、うめぇな」

「ランドルフ、やめなさい。お腹壊すわよ」

「なんだよ、ミリア。うるせぇな。俺が見つけたんだからな。しっかし、これが、噂に聞く上水道かなぁ。スゲーもんだ」

連れの女性はミリア、服装から上位職の司祭。

「オースティンも言ってあげてよ。絶対違うからね」

物静かな感じの大鎧が口を開く。

「ランドルフお腹コワス。ぜったい」

オースティンと言うのか、遠目にはゴーレムかと思った。コイツの装備はまぁ壁役としてならって…大盾装備してないのか…

「オースティン、お前も飲め飲め」

ランドルフが携帯コップでオースティンに水をかける。

「ランドルフ、やめる」

オースティンが至極冷静な声で警告するが、ランドルフはどこ吹く風。

「わかったよ、うるせーな 。少しは涼しくなっただろ」

「もう、やめてよ。喧嘩しないでよね」

「オレ心外、ランドルフやめる。オレなにもしない」

「あーあ、つまんねーやつら。マジで」


如何にも冒険者風の3人組が賑やかにエデン川からカーライルへと向かって来る。こうも目に止まるのも珍しい。やけに目立つ人達だ。ランドルフ、ミリアとオースティンとにかく実際に見ていないので鑑定が出来ないがスフィア越しに見てもたいしてレベルが高くは無さそうだ。


そうそう、レベルと言えばだけど俺、ジョン・B・カーライルのレベルは現在2だ。知力と素早さを上げてからレベルアップしないと後々余計に実を食べないと能力値が上がらなかったりスキルやアビリティへ割り振れるボーナスポイントの取得に悪影響があるはずだ。とは言ってMMORPGであるトールゲームの育成システムそのままだったとしてだ。この世界で1番の実感はこの世界は世界樹からキャラクターがステータス能力値を授かってるという感じか。朧気ながら身体に力が染みて行く際に何だかしっくりきたと言えばわかるだろうか。経験を積んだからと言ってゲームだろうと何だろうと身体能力が化物の様に上昇するのは必然的に何かが足りない。そう肌で感じる、論理的にも因果的にもただ経験を積めば強くなれるなら俺達は誰もが現実に超人に成れたはずだ。考えるに絶対的必然、それがこの世界の世界樹なのかも知れない。

まぁ、色々と実験しながらミスしないように能力値を上げて行くために、レベルアップ手動に設定してある。能力値が低いままでレベル20、30まで上がったりしたら嫌だしね。


庭のガーデニングには世界樹の実を本当に期待している。早く育って欲しい。








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