第25話 蛭&蛙 出没注意
エメラルドタブレットを今一度ブルーフレイムで炙る。俺は書かれている内容には幾つか心当たりがあった。
まず、ここに書かれていることは真実だと始まるが、目につくのは2つ。
エリクサー
賢者の石
他のは錬金術ではなく科学か、電池や
ハッキリとは言えないが他の科学知識らしきものもアナグラムであったり暗号かもと疑ってしまう。魔神語で書かれた原典ならば、そんな事もないか。
錬金術の奥義であるエリクサーや賢者の石を
素材が集まったら作成してみるのも面白い。
薄曇りで今日も雨が降って来そうだ。俺は庭に面する軒先でひじ掛け椅子に座っており、時折母さまかミーティスが家事を行いながら視線を向ける。
さて、例の冒険者3人組の監視で宿屋に忍ばせておいたスフィアが動いた。
騒々しく冒険者を演じてるというのがしっくりくるランドルフ、ミリア、オースティンの三人。冒険者ギルドで討伐依頼を受けたランドルフ達は南下し舗装道路にしか見えない下水道の上をエデン川へ歩き、そこから彼らが南へ向かうと景色は平原から湿地へと移り変わって行く。
ミリアが革のブーツの中に
かけ声と共にランドルフが大剣を袈裟懸けに振りきり、見上げるほど大きな赤黒い
足元が
同じ場所に立って居ると、自分の重さで沈んで行く。
神官であるミリアが魔法を唱え、風の刃で蛭がズタズタに切り刻まれた。
返り血の赤紫色の染みが広がって行く。
三人とも既に呼吸が荒い。さきほどから全て奇襲を受けてからのカウンターだ。疲労の蓄積は相当なものだろう。
腕ほどのサイズの小さな蛭がオースティンへ三匹飛びついたが、二匹はオースティンが槍で切り裂き、一匹は空中でランドルフの大剣によって叩き潰された。確かにこの3人、腕だけなら現在カーライルで1番の冒険者だろう。
だが、朝の風が北風から南風に変わると雨が降り始め、
「いよっしゃー、こいやー」
ランドルフが声を張り上げ、そのブモー、ブモーと唸り声が聞こえる方へと突進する。オースティンが後衛のミリアと慌ててランドルフを追う。
枯れ葉色をしたぬめる皮膚をした巨大な牛蛙が現れランドルフに体当たりをかました。
ランドルフは衝撃で一時動きを止め、よろめく。しかし、オースティンとミリアが追いつく前に、さらに一段加速すると速度を上げて大剣を頭上に振り上げ身体ごと牛蛙に叩きつけた。
オースティンはランドルフが牛蛙を仕留めたのを確認すると周囲を警戒する。
「オースティンお願い。ランドルフ、討伐証明部位を切り取るわよ」
「待て、ブルフロッグは単体で行動しない」
「わかったわ」
ミリアが答えるのと同時に、オースティンが飛びかかって来た牛蛙の舌を槍で串刺しにした。ミリアの風魔法による追撃が入り、蛙の目が濁る。
オースティンがだらんと弛緩した蛙の舌を踏みつけ槍を引き抜いた。
牛蛙が大きく跳ね、隙ありとばかりに両手を上げ飛びかかる。
詠唱を終え発動する寸前だったミリアの風魔法が牛蛙の体を切り裂き。ランドルフの横一閃が牛蛙を上下に分かつ。どちらか片方だけでも倒せただろうが、こう言うところで迷っていたら危険なのだ。
牛蛙の襲撃が終わると素材を解体するためオースティンがナイフを入れ、ランドルフが良い笑顔でブルフロッグの両足を付け根から切り取る。
カットの位置や角度はオースティンが決めている。
ミリアが諦めの表情を浮かべ、ランドルフを睨みつける。
「ランドルフさん。魔石と証明部位が先です」
「うるせーな、わかったよ」
「ランドルフ良くない、ダメ」
「オースティン、お前な。そりゃねーよ。お前が切ったんじゃねーか」
ミリアが割って入る。
「わかった。わかったから、喧嘩しないの」
「ちっ、仕方ねーな」
ミリア、オースティンとランドルフは魔石を抉り出し、討伐証明部位である牛蛙の舌先を切り取った。
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