第40話
チリンチリン。
両開きの扉に取り付けられた小さな鐘型のドアベルが鳴る。
三つの受付と棚で区切られた空間。肌で感じたのは初めてだが役所の雰囲気がある。
表の雑踏から扉一枚隔てただけだが、そこには静けさと規律があった。
時間的なものもあるのだろう。以前、スフィアで覗いた時はもう少し騒がしい空間だったと記憶している。
ミーティスに手を引かれ入ったのは、冒険者ギルドだ。
三階建てで他の建物と比べ高いので都市でも目立つ建物だ。
実際、今日ここに来る気は全く無かった。
受付には紫の髪をした冷たい瞳の女性職員が座っている。
見覚えはあるので、やぁ、と気軽に挨拶したくなるが実際は初対面だ。
ミーティスがこちらを見て微笑み、受付嬢に話しかける。
「こんにちは、受付のお姉さん」
「ミーティスさん、いらっしゃい」
「今日は冒険者の登録をしに来たわ。よろしく」
「八才では身元保証人の承諾が必要だと言ったはずですが…」
「もちろん。私の身元保証人のジョンくんよ」
堂々と言いきるミーティス。
そして、後ろに見え隠れする俺。
受付嬢は何を言われたのか理解出来なかった様だ。
俺はとりあえず、浮遊状態から重力制御下にもどり、受付嬢に話しかけようと前に出た。
一歩前に出たその瞬間。あれ、俺が仕切るべき場面だろうかと疑問が沸いたがもう遅い。
「こんにちは、ジョンです」
きちんとご挨拶できた子供相手に前屈みになる受付のお姉さん。素晴らしい胸の膨らみがチラリと見えている。
「こんにちは、私はオリビアよ」
こうして実際に見てみると、やっぱり美人だ。そんな事を考えている俺。
「ジョン・カーライルさんがミーティスさんの身元を保証するという事なら、こちらとしては受理するしかありませんが、そう言う事で宜しいですか」
まぁ、良いんじゃないかなと、あまり良く考えずに頷いてしまった。
いや、そんな事よりも本当に俺で良いのかって事だよ。
「わかりました。それでは書類を作成いたします」
オリビアさんがくるりと振り向き、そこに置いてある血圧測定器の様な見た目の機械を取り出す。
「ミーティスさんの冒険者ギルド登録を承諾する条件として、ジョンさんにも冒険者ギルドに登録していただきます。ジョンさんの身元保証は今回の様な場合、自動的にお母さまのマリアさんです。マリア・カーライルさんはカーライル家に臨時の冒険者ギルド出張所がある関係上、ギルド職員に準じた立場にありカーライル冒険者ギルドがその身元を保証しております」
俺はこの年だし、八才未満は身元保証人になれるのかと思っていたんだけど、大丈夫みたいだ。
説明をしながら用意された機械。
「ミーティスさん、ここに手を入れてもらえますか」
今までは受付カウンター上でしか使った事しかなかったのだろう。それをオリビアさんがミーティスの身長に合わせる為に手に持ってくれている。
装置はミーティスが手を入れると電子音を発してしばらくの間唸っていたが、壊れているわけではない様だ。それはオリビアさんが落ち着いて見守っているのでわかる。俺はもっとスムーズなものだと思っていたから、ちょっぴりドキっとしている。よく考えたらミーティスって突然現れたわけで、どこの誰かも不明。【スキル】触診では神族判定される不思議ちゃん。
「ジョンさん、あなたもここに手を入れてください」
装置がミーティスの結果を出すのを待っていた俺に受付嬢のオリビアさんが声をかける。
「はい。わかりました」
俺の言葉はまだ、ハッキリと発音出来ていないし、呂律も怪しいがそれなりに返事が出来ている。
ただ、俺の場合は勝手が違った様だ。装置の筒状になった部分に左腕を入れると黒いカードが装置の上部から中空に現れた。
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