第17話

翌日、目が覚めた俺は世界が違って見えた。正に視界を閉ざしていた霧を一迅の風が吹き払った様な爽快感。如何に自分の認識が霞んでいたのかを理解した。これが知力1と2の違いか。視界に入るもの、手で触れるもの全てに何かしらの法則性が隠されていると朧気に感じる。

そして俺の身体を這うトカゲ。

うぉっとなんだコレは…おいおい、やめてくれよ気色悪い。鑑定がされトカゲに吹き出しカーソルが付いていてドラゴンと書かれている。

これがドラゴン…小さいんだな。

庭にもっと居る気配はあるが、危険性はないのかこのトカゲ…いや、ドラゴンは。

こいつはもしや鉢植えでは現れない害獣もどきのニズヘグかな。確か世界樹の根をずっと齧ってるけど無害とされる。トールのゲームの中では鉢植えで世界樹を育てるが、フレーバーテキストでは根にドラゴン、天辺に鷹、幹に栗鼠が住み着きドラゴンと鷹がケンカしてて栗鼠がそのケンカを煽りまくりなんだとか。

まぁ、家の庭の世界樹は全てが苗木や新芽だ、ドラゴンも可愛らしいもんだぜ。

俺は手を伸ばしてドラゴンの頭を触ろうとした。

さっと素早い動きでトカゲが振り向くと、大口を開けギザギザの鋭い牙が食いつこうとする。おおっと危ない。血が出ちゃうところだったよビビった。でも、インビジブルアーマーかけっぱなしなので、たぶん噛まれても大丈夫だ。

そんなこんなをしてるうちに、ニズヘグは腹の上から移動して外に出ていった。のっそり動くように見えて、結構速いのな。

俺は、はいはいして庭に出てみる。潰れた花壇と倒れたのを立て直した楡の木、真ん中に作った世界樹の家庭菜園…だったはずだ。

それが、庭はところどころ小さな水溜まりになって蛇がうねっている。ニズヘグも複数体が多数の蛇と水溜まりで絡まっている。新芽だった世界樹は膝丈、苗木だった世界樹は腰辺りまで成長していた。成長速度が尋常じゃない。

しかし、こりゃなんだ。蛇とか蜥蜴みたいなのが庭にいると思うと身震いがした。

その庭の惨状を見て、やっぱり鉢植えで育てれば良かったと思ったのだった。


俺は遂に【スキル】鑑定を覚えた。いつもの庭に出たはずだが、目に入るもの全てに吹き出しカーソルを出せて現れた名前やレベルとフレーバーテキストを読むことが出来た。人物もそうだ。ミーティスや母さまの吹き出しカーソルも見える。ステータスを見るにはこの鑑定のレベルを上げれば良いのだろう。母さまや、ミーティスは遠目に見て鑑定が出来る。また、街行く人を見れば吹き出しカーソルが出ている。ただ、ゴーレムの水晶球スフィアを通した視界には鑑定結果が反映されていない。うーん、要改良だな。


母さま

マリア・S・カーライル(旧姓エメラルド)

25才。レベル8。

平凡な容姿だが皆に愛される性格。若い頃から運動が得意。名門エメラルド家の継承スキルであるエメラルドの石板を所持。ジョン・B・カーライルの妻となった。


ミーティス

ミーティス

8才。レベル10。

キュートな女の子で金髪碧眼に透ける様な美しい青白い肌。世界一の美少女なんだからね。(所々手書き)


トカゲ

ドラゴン

0才。レベル1。

世界樹の根を齧る、ただのドラゴンのようだ。


ドラゴン

0才。レベル1。

世界樹の根を齧るドラゴンの番。


世界樹

生命の木

輪廻転生を象徴する落葉高木。

その実は〈黄金の林檎〉と呼ばれる。


うん、ミーティスの鑑定結果にはビックリした。ツンデレ…めんどくさいな。


その気持ちが表情に出てしまったのだろうか。

「みたわね」

ゾっとする底冷えする声。

目にも止まらぬ動きで、俺の肩に手を置き背後から影を引くように現れるミーティス。

こわっ、マジで怖い。


「鑑定の取得。おめでたく存じます」

そう言ったミーティスの唇が薄く笑みを作った。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る