第12話

全裸の女の子…だと。

ん、これはモンスターじゃない…よなぁ。


ふわふわ浮かぶシャボン玉の様な水晶玉を飛ばす赤子、ジョン・B・カーライル。

城塞都市カーライル南西部での大量のゾンビアタックを遂に撃破したジョン。そして12個のレインボーミサイルスフィアを回収しようとしたのだが、7才ぐらいの女の子も一緒に飛んで来た。

しくった。でも、幼いから大丈夫かな。

いや、これは幼女誘拐か…

なんだよ、この女の子は。

くそ。

「あっ、ばぉあ。くー」

俺の声に女の子が青ざめる。

「…たすけて」

ああ…はいはい。わかりました。元気な女の子だね。服ぐらい着せとけよ。それに何か言ってるけどもしかしたらモンスターかも知れないしね。この世界の女の子は7、8才で森に狩りにきますとか、無いから。

「あ、あなた…貴方がわたくしを召喚なさったのよね。供物を…沢山の供物を捧げて私を召喚…」

そう言って左の掌に埋まったスフィアを見せる。

「ばぶばぶ」

それは、見たことがある。俺のだ。そうだな、お前か。

どうやら、俺を噛んだ肝臓みたいなヤツが進化したようだ。ふむ、掌に埋め込んであれば己をそのスフィアに攻撃される事は無いわけだな。だが、他に11個のスフィアがあるんだ。俺を噛んだのは忘れてないぞ、この小汚ないゾンビめ。

「ばぶー」

そして、絶望に女の子の瞳の色が沈む。

「いったいどうしろって言うのよ。なによ、これ。わかんない。ヤダ。たすけて…」

俺の警戒心から11個のスフィアが包囲するように所定の位置へと移動する。

噛みついた報いは受けてもらおう。


「せっかく、甦ったのに…」

女の子はキッと唇を結び、瞳はいっぱいの涙で潤んだ。


甦ったという言葉が俺の耳に残った。

甦ったか…

女の子に泣かれては仕方がない。

俺はまた噛みつかれるのではないかと恐れながらも、この娘に触る。【スキル】パルペイション(触診)。

俺にわかったのはその娘の種族だった。

…わかった、良いだろう。許す。

「あっぶ」

「やめて」

言葉は通じないし何をされるかわからないので、その少女は怯えていたらしい。

俺はこの可愛らしくも美形なぷにぷにのほっぺに、恐れおののくわけがない。そう思っていたのでスフィアを呼び手品師の様に愉しげな表情を作り、11個の玉をくるくると空中で旋回させ愛嬌を振り撒いた。

曲芸師の様にそれらしいポーズで華やかさを演出する。どうだ面白いか、楽しんでくれると思ったんだが…

それを観ると彼女は瞳を怒らせ駻馬の様に声を荒げた。

「ひぃ。こ、この化け物め。なぶるか、わたくしをなぶるのか、殺すなら殺せ」


なにを怒ってるんだ…、物凄く不機嫌そうだ。まぁ、確かに俺は両手を上げてポーズを決めているだけなんだが…

まぁ、そうだな。ちょっと媚びを売ろうとして良いとこ見せようと格好をつけ過ぎたな。

スフィアを赤、青、緑に明滅させもっと華やかにすることもできるが、これは逆効果もありえる。幼い子供相手には適度な距離感ってのは大事だよな。うん。

俺は興味がなくなったよと装って、ふわりと庭に面した椅子に戻る。

まぁ、あの娘が何処か行くなら好きにして良いだろう。好印象を与え気に入って貰おうという俺の下心がいけなかった。

【複合魔法】インビジブルシールドを無詠唱で自分にかける。物理攻撃への備えとしてパラメーターを調整、土属性のソイルまで混ぜると固体化が現れ触ったときにそこに魔法物質を感じてしまうので土魔法は外した難度の高い魔法だ。

これで殴られても切られても触られても大丈夫だ。

かまってちゃんなど相手をしていられるか。俺は知らん、寝る。

将来のすらっとした長身のためにな。寝る子は育つ。








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