第11話

問題が発生した。形からしてただの水晶球なので俺はスフィアと呼んでいるのだが、調子に乗って4個作ったのが原因か、あるいは攻撃に神聖魔法を込めるのを忘れたためか。そう、後は素材回収用のポッドは後回しにした、その結果…。ちょっと魔物がいっぱい居たから面白おかしく狩りを楽しんでたんだけど、むっくり起き上がるゾンビみたいのが混じり始めカーライル南西の森林で大量の死霊に呑まれた死鬼だと分類される魔物の大軍勢が現在蠢いているのである。あとは都市カーライルを守るために付け焼き刃の応急措置で、砲台として6つ追加でスフィアを配置して撃退して続け今に至る。俺はさらに2つスフィアを作成しコレには忘れずに神聖魔法1位ホーリーワードも組み込んだ新型のレインボーミサイルの発射が可能になり、10基の堡塁へと砲台として送るため順次換装中。現在も庭に2つのスフィアがあり神聖魔法1位ホーリーワードを攻撃射出式に追加で焼き付ける機会を待っている。

あの凶悪化したゾンビモンスターどもが、城塞都市カーライルまでたどり着いたとして、都市を抜かれるかと言えば抜けないと思われる。いやぁ、大丈夫じゃないかな、うん。(かなり怪しい)

なんか共食いもして、どんどん凶悪化しているんだよね。

とりあえず、堡塁10基の両サイドに神聖魔法を追加したスフィアを配置したので、今日あたりから減少していくだろう。


いやぁ、冗談じゃなく数の暴力だ。襲われたら命の危機だから気をつけないと。

次の日、さらに2つへ神聖魔法の攻撃を追加し合計4つの神聖マジックミサイルスフィアを堡塁へと送り出した。

そして新に2つスフィアを帰投させる。

ん、なんだコレ。なに、ん…

攻撃魔法の射出だけに使っていた時は気づかなかったのだが、玉になにかついてる。1つはすぐに庭へと到着したが、もう1つがヤバい、操縦激ムズ。ひぃひぃ言いながら精神を削られる不安定な飛行で、それは視界に入るまで飛んできたが、操作ムズすぎて上空100メートルほどを航行させ今しがた庭に墜ちて来たんだが…ピクピク動く肝臓にしか見えない。

スキャンする。あ…ここね。128面積層魔法陣の最も外側の姿勢制御の触覚を司る部分が浸食されてる。しかし、キモっ。赤黒い血管のような模様が内臓の様な肉々しいピンクを這う。何これ、うっわ。

◇ウイルス感染を確認しました。

「うあ、ぁだ。あっば、どっだ」

手…手を出したのが間違いだった。俺は噛まれた。うん、失敗した。こいつに関わるのはやめだ。

神聖魔法2位ピュリフィケーション(浄化)と光魔法1位ヒール(回復)を念のためかけておく。

このスフィア、レインボーミサイルの射出式も飛翔、姿勢制御も回復したのでそのグロい見た目以外は完璧、ともう1つも修正したので堡塁へ送り返し計6つの神聖レインボーミサイルスフィアが10基の堡塁の砲台として集中砲火(クロスファイア)に加わることになる。魔方陣スフィアと奇妙な肉片と俺の血が変な突然変異を起こすのだがそれはまた別の話として、この死鬼の肉片に触ったことで1つわかった事がある。

【スキル】アナリシス(解析)の取得のための前提条件である【スキル】パルペイション(触診)が発動。知らなくても良いことまでわかると評判のクズスキルでゲームでは取得してもオフにしておくのがセオリーだ。完全に切り忘れてた。

ただ、さっきの肉片はゾンビの一部だ。そして、ゾンビとは何なのかが脳に流れ込んできて俺は理解した。

要はウイルスだ、宿主が本来死んでしまうほどの損傷を受けても、その代替え品を用意する。脳や心臓を失ってもウイルスがキノコの様な粘菌でそれを補うという補完だ。もちろん、生存に必要な部位を交換された生物はもう生きているとは言えない存在に成り果てているのだが、そのウイルスの目的はさらに宿主を増やすこと。ちょうど体温と同じぐらいの苗床にし易い温かい血液を探している。パルペイション(触診)でわかったのはこのゾンビが安息の地を求め彷徨っていること。暗く湿り気があって静かで温かい、ビジョンとして浮かぶのは洞窟かな。温かいのには該当しないと思うが…

恐ろしい事にこの世界の土壌や空気の中にこのゾンビ菌が含まれている、それを理解した。




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