第27話

「助かったぜー。マジ、死ぬかと思った」

ランドルフが輝く笑顔をミーティスに向けるが疲労を隠しきれてはいない。


「ありがとう」

オースティンは素直な言葉。


「助けていただいてありがとうございました」

ミリアが信仰に近い熱い視線を送る。


「私はミーティス、主人の言葉に従い馳せ参じたまでです」

見渡す限りの湿地を舐めた熱光線は瞬時にその場を納め。その姿勢のまま、空中でクルリと姿勢を彼らへ向ける。

ミーティスは何事もなかった様な静けさを取り戻した湿地を背景に艶然えんぜんと微笑んだ。


「こちらに来てこうべれなさい」

わざわざ助けてから殺すことは無いだろうとミリア、オースティン、ランドルフが近づくとミーティスが掌を下にする。

空気が舞い上がり、熱、浄化、癒しの魔法が駆け抜けた。


今回は三人を追って来たモンスターだけなのでミーティスが討伐したのは数百と言ったところか、多くて千いったかなぁ。


"ん、ミーティス。別れて帰って来て良いんだよ"

何やってんの面倒臭い、え。

最後まで面倒みないとカーライルに帰れずに死にますよって…


何かこう助けてあげたいなぁとは思ったんだけど、会いたいとか話したいなんて思ってもいなかったんだよね。



◇◇◇◇◇


ランドルフ

26才

LV16

聖騎士


ミリア

23才

LV14

司祭


オースティン

25才

LV15

重騎士


ただ、今ミーティスが三人を目に入るところに連れて来たことで、はっきりわかった事がある。こいつら本職の冒険者じゃないな。


「お義母さま帰りました」

ミリアが元気に義母に声をかける。

「おかえりなさい。そちらの方達は…」

「主人がお招きになった人々です」


玄関まで来ちゃったよ面倒臭い。

もう、勝手に家に上がらないでよ。


ランドルフが精も根も尽きたと言わんばかりによろけ庭に倒れ込む。


うお、そこぬかるんでて汚いよ。

騎士の魂である大剣に泥はつかない。

ランドルフのそれ以外の装備はまたまた泥だらけだ。


「神よ、我に使者を遣わしこの命永らえさせていただき誠にありがとうございます」


何だお前は、俺の家庭菜園に何かいるのか。

ランドルフが庭でお祈りをしている。


ふと、思い浮かぶランドルフのギルドの受付令嬢に対するいやらしいスケベな顔。うん、死んでも良かったかも。


「ランドルフさんと仰いましたか。主人が女人に対して優しく接する様にとの事です」

合点がいったという一人納得した顔でランドルフが頷く。


「私には、私にはなにかお言葉を仰っていますか」とミリアかミーティスに聞く。

ミーティスの顔が俺を向く。


え、ちょっと。何、なんなの押しかけてきて。ん、特に話すことはないぞ。


ミーティスが首を横に振る。

ミリアはガックリと項垂れたが、気を取り直すとミリアも庭の世界樹に向かってお祈りをする。


オースティンは一歩遅れてやって来たが、その間もじっと俺を見ていた。


「オースティンさん。思ったことを軽はずみに口にしてはいけません」

ミーティスがオースティンに対して口止めする。


このウドの大木の様な男に思考するという大層な事が出来るとは俺は思っていないのだが、ミーティスに釘をさされるほどの切れ者なのか。


「お飲み物をどうぞ~」

母さまが我が家定番のミックスジュース、鑑定の吹き出しはネクタールLV1を客に出す。

もったいない、正直そう思ってしまった。いやいや、そんな事だから世界樹の実が普及していないのだ。先ずは俺が率先して振る舞ってやろう。


どうぞ召し上がれ……

俺が口にすれば全てのステータスがプラス1される能力値アップのドリンクだ。


「こりゃ、いけるな。寝かしたらもっと良いんじゃないか」

ランドルフの目がキラキラしている。


「あぅ、喉に絡んで飲みづらい」

ミリアさんには、ちょっと濃かったかな。


オースティンが目をまんまるにしてゴクゴク飲み。

不味まずい、もう一杯」


ふざけてるの、不味いなら飲むなよ。もう。


























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