第19話
俺のゴーレムであるスフィアが飛翔して聞き耳を立てている。
隣家のラムズフィールドさん宅を偵察するスフィアを通してマイアさんが息子、その嫁と挨拶し、近況を話しあっているのがスフィアから送られる映像として視界の角にウインドウが映し出され音声も聴こえる。マイアさんが何をしているか、何を職業としているかという情報はまだない。
マイアさんは代々毛織物を家業としているラムズフィールド家へ嫁ぎ、息子テッドさんが後継ぎとして働いている。しかし、夫と息子の親子の仲は上手くいっていないようだ。店舗と工場、倉庫があり、マイアさんの旦那さんであるロルフさんは息子テッドと同居する気だったのに、息子は嫁アリアさんとしばらく前に俺の家の隣に引っ越しをしてしまった。そのために親父さんは激怒、親子の仲は更に関係が悪化していると…。
やれやれ、情報収集をしているとどうしてもこう言った目的外の情報が蓄積されていく。
しばらく、情報収集をしているとマイアさんの事も次第にわかってきた。マイアさんは兵士でも冒険者でもなく、城塞都市カーライルから出た事もほとんどない。マイアさんのお父さんは靴屋で、マイアさん自身は結婚しラムズフィールド家に嫁いでから主に倉庫の管理と手が空けば店頭に顔を出し、家業を手伝いながら掃除洗濯に食事の仕度までこなすと…特におかしくないよな。
いや、これだけ出来ることが既に並みの人物ではないのか。
どこかにレベルアップに繋がった要因があるはずだ。
おっと…
「お義母さん、倉庫に出るあの大鼠、何とかならないかしら」
「任せておきなさい、また私が手伝ってあげるわ」
ふむ、倉庫に大鼠。案外その辺りがレベルアップの秘密か。ラムズフィールド家では長男の嫁が倉庫の管理を引き継いでいくのが習わしの様だ。
さて、大鼠が出るというので早速、12個のスフィアを用いて捜索だ。
気付いたと思うが12個だ。隊長として左手にスフィアを埋め込んだミーティスにも参加してもらう。そして11個のゴーレムのスフィアがフォーメーションを組む。
なんか、お人形遊びをしている様な違和感はあるが、経験値取得自体は有益なので良いだろう。何時ものように念のため【複合魔法】インビジブルアーマーをミーティスにはかけてあるし、風魔法2位フライで他のスフィアと同じ様に飛翔させてる。
俺はお目付け役のミーティスを引き連れて、隠蔽と隠匿、静穏、不可視、物理防御の効果をもつ【複合魔法】インビジブルアーマーを己れに再度かけ、ラムズフィールド家の倉庫へと向かった。
"ミーティス。ラムズフィールド家倉庫はあれか"
「はい、青い屋根の方です」
四方八方へとスフィアを飛ばし、大鼠とやらが出没する理由を探す。
"ミーティス、見えるか。北西の角に穴がある"
「城塞都市の下水道の入り口ですね」
そういうことか…
下水道に大鼠の巣があるのだろう。倉庫に毛織物が置いてあるとしたら格好の餌だ。俺は11個のスフィアを下水道へと突入させる。入り口にはミーティスを配置だ。下水まみれにはなって欲しくないからな。そして、ミーティスは下水道入り口へ左手を前に出して立っている。
魔法によって下水道を精査する。
問題なし。
"レインボーミサイル発射"と俺が意識すると都市全体が一瞬震えた。
"ミーティス、帰るぞ"
「はい」
俺は何故か帰りはミーティスに抱かれていた。
…その日、城塞都市カーライル下水道で大鼠を含む害獣とモンスターが死滅した。
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