第3話

「はい、はーい。」

視界に意味不明な格好をした人物が入る。

「待ちますよ~、なんですか~」

ん~、可愛ロリか…

服装はピンクに純白のフリル。ジャンプスカートのなかにはボリュームのあるパレオ。


「あの~、待ってるんですよ~。無視するのはバツです」


ロリータ…ちょっとそりゃないかなぁ、異世界転移の時はこうあそこがボンとなっててキュッとね。それに女神が出てこないとさ。

俺は意を決して声をかける。

「あ…、チェンジでお願いします」


「ちょっと、待ってって言うから私待ったのに、チェンジってどう言うことなの意味わかんない。ぷんぷん」


うっわ、しくった。こいつヤベェ匂いがプンプンする。


「いやっ、実はですね。可愛いお姉さんだとドキドキしちゃうから代えてもらいたいなぁ、なんて…」


青筋と般若の面に歪みそうになった笑顔が怖い。

「もぅ、いやぁ~ね~。お世辞がお上手なんだからぁ。よろしくってよ」


自分の顎に指先を触れてポージングしている。噂でしか聞いたことないがオタサーの姫か、それに類いするものかも知らん。

よろしくってよと言われても何が良いのだかサッパリわからん。機嫌が良くなったらしい事だけほんのりとわかった。

「あの…俺は癌で死ぬんですか」


「そう…みたいね。うん、そうだと思う」


あれ、会話成立してますかね。整理して考えよう。キャラメイクして異世界に送り込むのは良いよ。行った先でキャラクターが死んだら意味ないですよね。コイツは天然なのかバカなのか…

「それで…癌ですぐ死ぬキャラのプレイヤーって必要あるんですか」


「あっ、それは無いですね。はい」

おめめぱっちりで断言する可愛ロリ。


「じゃ、あのキャラメイクし直すとかできますか」

俺は意を決して、質問した。だって恐いんだよ何考えてるかわからないし、底が見えてこねぇんだ。普通じゃ無いんだよ。


「ん~、死んじゃわなきゃ良いんだったら…あ、でも脳を掻き回したらアレがコウなっちゃうからダメですよね~。あっ、浸潤する新生物を母体にして心臓にエターナルハートを移植とか、いやこれもダメかなぁ」


独り言についていけない。危険な香りのするワードが聴こえる。


「あの…異世界転生ものって言うのも面白いっちゃ面白いんですけど、トールの俺のキャラはバグっちゃってスキル無いし無理にデータ引き継ぎしなくても良いんじゃないですかね…」


「う~ん。実はね、あなた自身がアビリティに無限増殖っていうのを所持してて、コレを持ってるとそのうち新生物が身体の中からゾクゾクと沸きだして死に至るのよね」


「俺もう止めます。そんな気持ち悪いのは嫌です」


クソ、ゲームでもなんでも臨死体験などしてたまるか。俺は安全マージンをめいっぱいとってリスキーな状況に自分の身を置かないと決めてるんだ。

アメリカインディアンだって白人にライフルで撃ち抜かれなくたって、その大きな発射音が鳴り響いた事で、落雷が自分に当たり死んだと思い込んだ時点で心臓が止まっちまったと聞く。てことはだ、人は死んだと思ったときに死ぬという哲学的な答えが導きだされるんだよ。


「あ、そうだ。アビリティを削除してボーナスポイントに変換しましょう。そうすると異世界転移の成功確率が100%から20%に低下しますが死ぬよりましですよね。うん、それが良いんじゃないかなぁ」


そのうち死ぬを、今すぐ死ぬ80%に変更だと。

「ちょっと良いですか、ボーナスポイントってなんですか」


「あれあれ~、知らなかったの。あなたはステータスに割り振られてないボーナスポイントが余ってる状態なの、向こうに着くまでに割り振ってね。到着時に割り振って無かったらボーナスポイントは消滅するのよ」

可愛ロリはそういうとマネキンのように姿勢を変えた。


俺は気づいた。コイツと話してても埒が明かない。ボーナスポイント消滅だと。

あれだ、ステータスウインドウ。あたまの片隅に水晶のような煌めきが回っている。

VRMMORPGだろうという予想の元に舐めていたが、現実の可能性が1%でもあるのなら全力で俺のキャラ作成スキルをみせてやる。


俺は叫んだ。

「ステータスウインドウ、オープン」



















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