日常 12

「どうして分かったんです?」


『昨日言ったでしょ? 私は占いも出来る、って』



 あんな適当な占いで……自分の目の前で目を閉じただけだったのに、どうしてここまで言い当てられる事が出来るのだろうか。透花は、シンプルにそう思う。



『それで? 浴衣だっけ?』


「そ、そうそう。やっぱり、普通の服よりも浴衣の方がいいですよね?」


『まぁ、ね。ちょっとメンドーだろうけど』


「優斗ともっと仲良くなれるなら、メンドーじゃないよ」



 本音だ。とはいえ、お金を借りるのも抵抗がある。だからといって、葉月の浴衣を借りようにも背丈が違うのでサイズも違う事になる。



『持ってるよ。貸そうか?』


「でも、サイズが……」


『大丈夫だってば。ウチに来てよ。百聞は一見に如かず、って言うでしょ。それに、もうおやつの時間だよ。迷ってる時間はないんじゃない?』



 それもそうだ。


 透花は葉月に言われるがまま、住所をスマホのナビに打ち込み、徒歩にて向かうのだった。




「ここ……かな?」



 築何十年か経っているだろう、ワンルームマンション。ところどころにヒビが入っている。ワンルームという事は、一人暮らしなのだろうか。部屋番号を打ち込んで呼び出しボタンを押しても、ウンともスンとも言わない。だけど、住所は間違いない。



「んー?」



 おかしい。いや、おかしくはないが、変だ。ちがう、変という言葉自体が既におかしいのか。ああ、分からなくなってきた。


 電話しようと振り向いた瞬間、透花は一人の女の子とぶつかった。



「あいたっ」


「あっ、ごめんね」



 真っ白なワンピースで、麦わら帽子を被っている。真新しいビニール袋にはペットボトルの飲み物が入っていた。コンビニにお使いでも頼まれた小学生だろう。


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