日常 7
「て、手伝う? 何をです?」
「好きなんでしょ? 青木さんの事! 告っちゃおうよ!」
猫のように丸い目が、爛爛と輝いて近付いてきた。
「え、えぇ!? で、でも……心の準備とか、全然出来てないし……」
「そんな事言ってたら、ずっとこのままだよ! もしかしたら誰かが青木さんを取っちゃうかも。嫌じゃない? そんなの」
「……嫌です」
「でしょ? 今日が一番若い日なんだから、今行かなきゃ!」
ふふん、と腕組みしてのドヤ顔。閉じた瞳が、なぜか高飛車を連想させる。もちろん高飛車な性格ではない事は会話から分かる。性格も申し分ないし、彼女自身相当モテるのだろう。自信に満ち溢れている。
「い、今ですか? さすがに、ちょっと……。少なくとも明日にしません?」
「『明日やろうは馬鹿野郎』って言葉知らないの? 明日は何が起こるか、誰も分からない。今やらなきゃ!」
「うん。でも、汗でベタベタしてるからお風呂にも入りたいし、メイクとかし直したいし、明日花火大会だから、明日の方が都合よかったりしますし……」
「だーめ! って言いたいけど……明日やろうか」
透花の言葉に納得したのか、勢いづいていた葉月が突然しおらしくカウンターに再び座る。
「葉月ちゃんも、だいぶ馬鹿野郎ですね」
二人してクスクスと笑う。葉月は『だいぶ馬鹿野郎』の称号を得た。
「でも、葉月ちゃん」
「んん?」
「怖くないんですか? 優斗の事。さっきあんなに言われたのに」
両手でちゅうちゅうとシェイクを飲んでる葉月の小さな口が離れていく。
「べつに? 怖い人には慣れてるし、青木さんよりも怖い人たちなんて、もっといっぱいいるから」
その言葉にびくっと透花は肩を震わせた。
「えっ、ヤンキーさんとか、ヤクザ屋さんとか……ですか?」
再びちゅうちゅう吸ってる口が、ぶぼっと爆発。
「あっはっはっは! 違うよ! 違う! えーと、ほら……うん、学校の先生とか、かな、うん。ごめん、紙ナプキン取って」
なぜか目を逸らされた。透花にて渡された紙ナプキンで口を拭きつつ、丁寧に席に座りなおしている。落ちかけの夕日に幼さの残る顔を向けて。
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