日常 5


「ほんと、どうしちゃったんだろう、優斗」



 夕暮れが近付いた頃、透花と葉月は某ハンバーガーショップにてビルの隙間から夕陽を見ていた。



「昨日までは違ったの?」



 ついポロッと出てしまった透花の発言に、葉月は疑問符を付けて小首を傾げている。



「あっ、いや。まぁ、元々血の気が多い方ではあるんですけど……他人に対してここまで怒るのはすごく珍しくて……」


「ふぅん」


「だいたい、優斗はもうちょっと他人に対して優しく接するべきなのよ。いっつもいっつも、ゴミの発明ばっかりで……」


「透花ちゃん、ほんとに青木さんの事、大好きなんだね」


「……えっ」



 その発言に、固まった顔が突然赤くなっていく。



「ここに来た時からずっと、青木さんの話ばっかりしてるよ」


「あっ、えと……」


「べつに、隠さなくていいと思うよ。ただ、知りたいなぁ。なんでそんなに青木さんの事が好きになったの?」



 確かに不思議だ。イケメンでもなければ、スポーツ万能というわけでもなさそうなのに。



「そう……ですね。まぁ、いいかな、葉月ちゃんになら。……昔、助けてもらったことがあるんです。優斗は覚えてるかどうか分からないけど」


「ふんふん」



 葉月はモデルのような艶やかな口を開き、前歯でポテトをサクサクと噛みながら透花の話に聞き入っている。



「小学生の修学旅行の時期、大阪から観光に来た人たちがいたんです。当時、私は男子からものすごくいじめられていました。理由は、よく分かりません」


「可愛い子ほど、いじめたくなるっていう心理現象かな?」


「どうなんでしょう。それは分かりません」


「まぁ、とにかくいじめらていたわけね。それで?」


「それで、その日もいつも通りいじめられていたわけなんです──」




『ひどい! どうしてこういう事するの!?』

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