日常 4
「優斗! またそんな恰好で……」
「なんや、別にええやろ。自宅なんやから」
地黒な肌が、ボーダーパジャマの半袖から見えている。とても筋肉質とはいえない腕で、んんと伸びをしてストンと肩を下した。何に使うのかも分からない片手大の物を眺めつつ、舌打ちと共に首をかしげている。
「はぁ。それで? 今日はどこが痛かったの?」
「ん? 腹」
と言いつつ彼は頭を押さえている。
「えっ、この人が、あの青木さん!?」
真夏に降る雪のような肌を持つ葉月が、自分が女の子だということも忘れた様子で愕然としている。開いた口が塞がっていない。
「……優斗と、知り合いなんですか……?」
完全に他人ならば、ここまで驚かないはず。何かある。絶対に。
「い、いや。別に。透花ちゃんくらい綺麗な人だったら、もっと、こう……」
さりげなく失礼な奴だ。
「おい、透花。誰や、この失礼な姉ちゃん」
「こら、優斗! そういう失礼な事言っちゃダメでしょ!」
「どっちが失礼やと思っとるん。初対面やぞ」
見た目で判断すんなや、と言わんばかりに殺気立って歩み寄っている。男だったら、まず胸倉を掴んでいるのだろう。
「この子は、転校してきたの!」
「テンコぉ? こんな時期にか?」
優斗は、再び葉月を見下ろした。特に長身というわけではないのだが、頭2つ分ほど小さい彼女にとっては十分威圧を感じるだろう。
「そう、転校! 私も何年か前に転校してきたでしょ? 余所者じゃないの。これからは、仲間。分かった? そう睨まないで」
「チンパン扱いすんなや。分かっとる。けどな、初対面でいきなりゴミ扱いされるんは腹立つわ」
「ご、ごめんなさい。私の思っていた青木さんとは、随分違ってたので……」
「はーん。まぁええ。透花、プリントありがとうな。気ィつけて帰るんやで。転校生、お前は原チャに跳ねられておもっくそ苦しみながら帰れ」
プリントを受け取りつつ、少年はキッと目を眇めた。今にも泣きだしそうな葉月を尻目に、手に持っていた新たなガラクタをポイと投げて積み重ねる。彼が去った後は、ただただセミが鳴いていた。
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