†開かれる扉† 3
「おやすみ、葉月。また明日ね」
葉月の隣で、ゆっくりと瞳を閉じた。私の手に包まれている、透明度の高い肌で小さな手。
明日になれば、彼女は行ってしまう。それまで、一秒でも長く一緒にいたかった。
「ねぇ、とーか! 朝だよ! 起きて!」
元気な声が耳元で炸裂し、大げさなくらいに叫んでしまった。
「もぉ、せっかくの日曜日なんだから、もう少し休ませてよ〜」
「きゃはは! 『きゃー』だって! かーわいー」
葉月の小さな手が、透花のマシュマロのようなほっぺたを小さく軽く引っ張っている。
「なによー。馬鹿にしてるの?」
「違う違う、こっちでもとーかは、やっぱりとーかなんだね」
「私は私なの。他の誰でもないと思うよ」
軽く涙目で透花は返事をする。なんだか、目の前の少女は日に日に生意気になってくる。
「て思うじゃん?」
「え? 違うの?」
「いや、まぁそうなんだけどね」
「……何なのよ」
スマホを持ち上げ、誰かから連絡が来ていないか確認する。本当にごく稀にだが、優斗から連絡が入ってきたたりする。そして、その日もそうだった。
「なに? 王子様から、お誘いのメッセージ?」
「うん。今日、アウトレットモールに一緒に出かけたいんだって」
「へぇー。よかったじゃん。行っておいでよ」
「何言ってるの? 葉月も一緒においでよ」
最終日にウィンドーショッピングとは、なんとも味気がない。だけど、この場所にはそれしか楽しめる場所は無い。正確に言えば、学生さんは金がないんだ。
「まぁ、しょうがないなぁ。帰るまでの間だったら付き合ってあげてもいいよ」
なんて言ってはいるものの、目が爛々と輝いている。どうせこの子は、行きたがっていたに違いない。
いつものように、髪を整え私服に着替える。今日は少し大人めな格好をしていこう。本当は葉月と2人で過ごしたい気分だったのだが、昨日約束していたので仕方がない。
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