日常 22
まだかな、優斗。あとどれくらいで来るんだろう。鼻緒が痛い。
そろそろ日が沈む。もしかしたら、ドタキャンされて来てくれないんじゃないかと弱気にもなる。
……だめだめ。せっかく葉月がくれたチャンスなんだ。だから、弱気になる事はない。花火が始まる頃には、きっと来てくれる。はず。
一人で噴水近くのテーブルにつく。自分の場所を優斗に知らせて、未読のまましばらくスマホとにらめっこ。
今、何してるんだろう。
優斗は、透花の事をどう思っているのだろう。
毎日毎日研究ばかりで、見てくれてない可能性だってある。いつでも優斗の視界に入れてもいいように、ばっちりナチュラルメイクもしている。爪だって毎日綺麗に整えてるし、髪質だって美容室の担当さんから太鼓判を貰ってる。
全部、優斗の好みに合わせてる。合わせてるのに……
「そこまで、研究が好きなの?」
だめだ。鬱陶しい女になってきてる。変な声が出てしまった。
『私と仕事どっちが大事なの』とかいう女にはジャーマンスープレックスが待っている。
だけど、そう言いたくもなる。今日、失敗したらトラウマになりそう。あれだけ仲が良かったのに。
「研究や開発はな、世の中の人の為になるものを考えて作る作業なんやで」
「でも、いっつもガラクタにしかなってないじゃない。私の心もガラクタと同じなの? そうやって優斗は、この先ずっと私よりガラクタを優先するんでしょ。……えっ?」
いつの間にか、優斗が真後ろに立っていた。甚平姿で団扇を持って。
「よ」
「来てくれたの!?」
「そらまぁ、あないな怪文書送られたら普通心配で来るやろ」
怪文書。まぁ、確かに正気ではない文章だった。あんな黒歴史のような文章を見られた恥ずかしさなのか、急に恥ずかしくなってその場で俯いてしまう。
「透花。お前の心はガラクタやあらへんで。ピッカピカの宝物や」
「そ、そんな風に……言われても……」
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