日常 24
「まァねー」
そして、例の泥よけマットに足を踏み入れた優斗が、上から落ちてきた首吊り人形に大慌てしている様子を指をさして爆笑。いたずらっ子気質らしい。
青白い腕の伸びてくるスイッチに対しても、大袈裟なくらい驚いている優斗に笑いをこらえきれずお腹を押さえ涙目状態。
「なんやイラッとするなぁ……」
「ご、ごめんごめん。あまりにもいい声出すからさ」
生首だらけの部屋の生首を優斗に渡して半狂乱させたり、最初には無かった市松人形の首が取れるアクシデントに、お互い少しびっくりして透花がつい手を握ってしまった。
「あっ、ごめんね」
そして恥ずかしくなり即座に離してしまった。
「ええよ。ほら」
優斗は手を振りほどく様子はない。むしろ離してしまった手を逆に差し出してきてくれている。
「う、うん……」
お化け屋敷だというのに、別の感情が沸いてきている。
大きくて優しい手。
別の意味で心臓が大きく揺れる。心地いい動き。
出口に差し掛かり、お好み焼きのいい匂いが漂ってくる。そうだ、ここだ。ここでゾンビが出てきたんだ。終わりたくない。このままずっと手を繋いでいたい。そんな気持ちとは裏腹に、優斗はどんどん先に行ってしまう。
ゾンビか。今度は驚きはしない。だって二回目だし。
「ぅ……うぅ……」
優斗が変な声を出し始めた。くぐもった声になっている。
「優斗? 大丈夫? 具合悪いの?」
薄暗い通路の中、突然優斗の顔が透花の肩にのしかかってきた。
顔面傷だらけで、ものすごい力で引っ張られる。
ゾンビだ。優斗が、さっきのゾンビになっていた。
あまりにも意味が分からず、透花の絶叫がお化け屋敷に響き渡る。
「まぁぁぁてぇぇぇ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
シャカシャカ歩くゾンビ優斗から、カラコロカラコロと下駄を鳴らして涙を散らし必死に逃げる透花。
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