日常 10
翌日。透花は自室で目が覚めた。激動の一日が終わって、気が付けば見知った天井を見上げている。
嫌な予感しかしない。
あれよあれよと乗せられて、気が付けば破滅の足音が聞こえている。
今まで、関係が壊れないようにと必死で抑えてきた。抑えてきたのに、突然転校生がやってきて、いきなり『告れ』と言われたり。
「なんだか、とんでもない人と知り合っちゃったな……」
ぽつりと本音が零れ落ちた。
土曜日の早朝。彼女の心とは裏腹に、雲ひとつない青空が広がっている。
エアコンと扇風機を消して、ゆっくりと体を起こし、スマホの画面を見つめた。返信は、まだない。既読ですらない。
『ぷんぷんっ! 怒っちゃうぞ☆』
「ああああぁぁ」
変な文章が目に飛び込んできた。
違う、自分の言葉じゃない。
枕に顔をうずめて足をバタつかせても、時間やメッセージが戻ってくるわけがないのは分かっている。しかし、そうしなければこの変な気持ちは収まらない。
「ああぁー!」
『るっせーぞ、透花!』
「ひぃっ! ごめん、龍兄」
龍兄こと龍也は、透花の兄だったりする。そんな兄に壁ドンを貰って、小さな涙を散らして彼女はしょんぼりしていた。
朝は兄の大事な睡眠時間だ。学校にもロクに行かず、単車をイジっては仲間と共に夜の街で爆音を轟かせている。彼女は、そんな兄を反面教師にしているのだろうか。
兄の事は好きではないが、そんな兄はなぜか優斗と仲がいい。なぜ馬が合うのか分からないが。
年上の龍也が殴り合って一方的に負けてきたのだというのだから驚きだ。ガタイのいい龍也も東京の方では地味に名前が知れていたというのに。
そう、龍也は俗に言うヤンキーだったりする。透花の言葉を借りると『ヤンキーさん』になる。兄が怖いため、彼女の中では『ヤンキー = 怖い』という発想になっているのだろう。
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