日常 9


「それは今日のうちにやっておこうよ。えーと、そうだね。私が文面考えてあげようか?」


「い、いい、大丈夫。それは、自分でやります」



 強張った顔で、口を一文字に閉じ、神妙な顔つきで文字を打つ透花。



「こ、こんな感じで、どうでしょう……?」


『明日、15時にりんくう公園シーサイド緑地にて待つ。来られたし』


「果たし状じゃないんだから……」



 実際、こんな文章を送ったら逃げられそうだ。



「情報が少ないから、もうちょっと入れていかない? 何のために呼び出すのか、とかさ。これ、怖いよ」



 わいのわいの騒ぎながら、透花たちは他の客の迷惑になるのであった。


 大阪府泉佐野市。そこに透花の実家がある。飛行場の近くに位置しており、その付近に優斗の実家もあった。アウトレットから目と鼻の先で、葉月の家もその近くにある事が判明。つまりご近所さんだったりする。



「早く明日にならないかな?」


「もしかして、私で楽しんでます……? これ、本当に送っちゃったんですか……?」


『明日、19時にりんくうプレミアムアウトレットで待ってまーす(*'▽') 花火大会ですよね! 来なかったら、ぷんぷんっ! 怒っちゃうぞっ☆ 明日、出店とかいっしょに周りましょう! 絶対、ぜーったい、来てくださいね!』



 透花の顔に、『絶対こっちの方が怖いよ』と書いてある。どっちもどっちだ。絶望しているのか、長いまつげに潤いがあるようにも見える。



「実は私、占いもやっててね。占ってあげるよ。うーん、大吉! たぶん成功する!」


「そんな適当な占い、信じられません。どこをどう見たんですか」


「まぁ、統計的にね。ニコニコ笑顔占い!」


「そうですか……」



 もう喋るのも疲れたようだ。なんの統計なのか聞くのも面倒らしい。



「あっ! 真顔になった! マイナス50ポイント! 小吉にランクダウンするよ!」


「う、うん……」



 透花は内心、『早く明日にならないかな』と願うのだった。


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