事件 † 開かれる扉 † 1

 「 こんにちわ。


 あなたは今年で十七歳になるのですね。


 お花見に行ったり、海水浴に行ったり、たこ焼きパーティをやったり好きな男の子と雪だるま作って笑ったり……毎日が、とてもとても楽しい生活だと思います。


 ですが、長くは続きません。


 本当に幸せな人生を歩みたいのであれば、葉月と共に【上天の扉】を開いてください。


 おそらく、あなたは私の事を知らないと思います。私の存在すら、信じてくれるはずはありません。


 私も、そうでした。私も、私から手紙を貰いました。もちろん、信じてはいませんでした。


 嘘のようですが、本当の話です。信じる信じないは、お任せします。


 ですが、このままだと、良くない事が起こる。


 家族で出かけた思い出の桜は枯れ、透き通った海は蒸発し、あれだけ大事にしていたお友達も、好きな男の子も目の前で殺されてしまいます。


 今のあなたには想像が出来ないかもしれません。でも、事実なのです。


 本当は、手紙なんて書くものではないと思っていました。何も知らずに大好きな人と最後の最後まで一緒にいた方が、楽しく生活出来るのではないか、って。


 私は、結果的に私の世界を救いました。次はあなたの番です。


 あなたの悲しむ姿を想像したくありません。なので、葉月にお願いして手紙を届けてもらいました。


 運命を切り開く力が、あなたのその手にあります。


 『私を信じて』とは言いません。自分を信じてください。


 世界を救え、なんて事も言いません。自分の大事にしているものを、ただひたすらに護り抜いてください。


 葉月はとてもいい友人で、背後を任せられる存在です。なので、無理矢理こちらの世界に連れ去る事もないでしょう。


 あなたの幸せを、心より願います。

 


                           桃瀬透花。」



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