日常 27
上空からの爆発音で、周囲が沸く。一発目の花火だ。
縁石に座るが、他の観客にて押されてぴったりと密着する形となってしまった。張り裂けそうな心臓を胡麻化すために、口いっぱいお好み焼きを頬張る。
「透花……って、なにムーミンの彼女みたいな顔してんねん」
「なっ、なによー!」
覆った口からの言葉が、言葉になってない。せめて口の中の物を減らそう。
「せやけどそういう所、俺は好きやで」
そう言われて、透花は耳までリンゴのように赤くなり俯いてしまった。
もぐもぐごっくん。
咀嚼して、飲み込んで、頬張って、咀嚼して飲み込んでを繰り返し、何も会話のないまま完食。その間にどんどん人が流れてきて、ついには目の前に立たれてしまった。
「……見れない」
「せやな。ほな、行くで。試作三号機見せたるわ」
ぽつりと優斗が言葉を発する。
「えっ、何、怖いよ……」
「大丈夫。俺を信じてくれ」
試作三号機とは、一体何なのだろう。そんな事を考えているうちに、手を引かれてお祭りとは逆方向の住宅街へと向かっている。これは……優斗の家へと向かう道だ。至極当然のように握られた手に、狂いそうなほど鼓動が早くなっていく。
鍵のかかった家。手短に開けて手を振られるがままに玄関から入ったところで、丸眼鏡姿の女性が現れた。
「あぁ、おかえり、優斗。……あんた、バイトしてたんやないの? こんな綺麗な子、どこで捕まえてきたん」
「お化け屋敷や」
母親だろうか。どこか優斗の面影がある。マグカップ片手に、くわえ煙草。大阪のオバチャンというよりかは、姉のように若々しい。
「あっ、あの、初めまして。桃瀬透花っていいます」
「あー! キミが例の! いつもウチの息子がお世話になっとるね。優斗もだんだん、隅に置けんようになってきたわ」
「おかん、あれ動かすわ。反重力プログラムはどないや? オートバランサーは?」
「なんの問題もないわ。オートバランサーもええ感じやで」
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